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裁きの炎  作者: 山川海のすけ
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優等生

最近、事件が起きていた。

今日も休校になっていないことに疑問を持ちつつ、俺は登校した。


今、この人口5万人程度の田舎町で、事件が起きている。

連続殺人事件だ。


すでに、被害者は5人。

噂では、まだ警察は犯人の目星すらつけていないとか。


だから、学校では「登下校は注意するように」というお達しが出ているが、だったらそもそも休校にしろよと言ってる奴が結構居る。

俺も内心そう思っている。


別に学校が嫌だからじゃない。


姉さんが心配だからだ。


この事件、最初の被害者の大林杏子という少女は、姉さんの一番の友達だった。


遺体発見の詳しい情報は報道されていないが、噂によると


白昼堂々の公園の真ん中で、公園で遊んでいた幼児が余所見した隙に、いつの間にか遺体が放置されていたらしい。

遺体の状態は半裸で、損傷が激しく、上半身と下半身が切り離されていたとか。

第一発見者は、公園で遊んでいた幼児たち。

大人を呼んできて、大騒ぎになった。


そういう話だ。


多分、本当だろう。

大林さんの告別式には俺も出たが、棺の中は見せてもらえなかった。


見せられる状態じゃ無かったんだろう。

そんなことがあったせいで、姉さんは今、不安定な状態だ。

ついていてあげたい。


それだけじゃなく、大林さんを殺した犯人が、次は姉さんを襲うかもしれない。

それが一番心配だったから。

姉さんは俺の最後の家族だ。

そんなの、耐えられない。


自分の席に着き、俺はそんなことを考えていた。


学校に着いて、ここにやってくるまでに俺に話しかけてくる奴は誰も居なかった。

皆、俺を腫れもののように扱っている。


理由は単純。


北條雄二は扱いを間違うと危険。

そういう風に思われているからだ。


そうなった理由。

俺は一回同年代の少年相手に暴行事件を起こしている。

無論、ただの暴行では無く、俺にも立派な理由がある、そう言える事件だ。


あんな事件があって、俺たち家族の精神が不安定だったときに、よりにもよってそのことを弄って来た馬鹿が居たのだ。

俺は耐えられず、怒りのあまりそいつをかなり手酷くボコボコにした。歯を何本か折ったかもしれない。


理由が理由だったので、俺の情状酌量が認められたのか、大きな問題にはならなかったが、しかしそのせいで、北條雄二はキレると何をしでかすか分からない危ない奴というレッテルを貼られた。

おかげさんで、友人は一人も居なくなった。

話しかけてくる奴もいない。


「北條君。おはよ」


こいつを除いて。


俺の席の前に、眼鏡に三つ編みという、典型的優等生の風貌の女子生徒が居る。

名前は水無月優子。クラスでの役回りはクラス委員長。

ハマリ役すぎて笑えて来るってものだ。


まぁ、俺はあの日から、笑ったことは無いのだけど。


こいつは1年ほど前に転校生でこの学校にやってきて、そのせいで俺の悪評を良く知らないのか、こいつだけは話しかけてくる。

俺を怖がってる様子は微塵も無い。微笑んで毎朝俺に挨拶をしてくるのだ。

別にありがたいとも思っちゃいないが。

ニコニコしている奴を見ると、イライラするからな。


「おはよう」


とはいえ、挨拶している相手に挨拶しないのは俺も気分が悪い。

挨拶だけは返す。そういう関係だった。


当然だが、別に一緒に遊んだり、会話したりなんてことは無い。

したいとも思わないし、多分これからも、ずっと無いだろう。


俺は壊れているから。


俺と挨拶を交わした後、水無月は自分の席に戻って行った。

何が楽しくて俺に毎朝挨拶に来るのか。

理解できなかった。


そうこうしていると、チャイムが鳴った。

朝のホームルームの時間だ。


担任の頭が禿げてきている、ジャージ姿の中年男性教師が教室に入ってきて、言った。


「今から緊急集会がある。皆、体育館に移動するように」


いよいよ休校措置か?

クラスの連中は色めき立った。

主人公、嫌われなければ良いのですが。

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