もし異世界のお土産を異世界の人(王様)がもらったら
今日のラクトア様とルーフェス
旅行の二日目。観光地で写真を撮りまくる。近くにいた外国人にカメラを渡しツーショットを撮ってもらう。
#今日の二人はなにしてる #shindanmaker
https://t.co/cpDavSTdw9
王様にどんなお土産買って帰る?(* ̄∇ ̄)ノ
という診断メーカーでのお題で「秘密箱と黒たまご」というリプをもらったので書いてみました。
「ああっー! サイッコー!」
「ラクトア様、おやじくさ…いえ、もうそのくらいにしておいたらどうですか? そもそも入浴中の飲酒は身体によくない…って言おうとしましたけど、まあ普通の人間とは理の違う次元に生きておいでですからね、それくらいでどうこうなるとは考えにくいんですけども、そこ、源泉ですからね。百度とは言いませんけど、温泉たまごができるくらいですから70度前後はあるはずなんですよ。観衆の方々も黒たまご販売者の紳士も引いてらっしゃいますよ」
「スマホのカメラを向けられているのは、むしろルーじゃないかねぇ。今ごろTwitterやInstagramのタイムラインには『ペンギンが温泉入ってるwww』と話題になってるんじゃないかい?」
「僕はペンギンじゃありません! 誇り高き魔従にして魔獣。ルーフェスですよ! ラクトア様こそ『美女が黒たまご用の温泉に入ってる』って今ごろSNSに上げられちゃってますよ! ほらほら! その豊満かつ形のよいセクシーなお胸を隠してください!! あわわっラクトア様いきなり立ち上がらないでください、色々丸見え~!! そこの人ぉ、ちょっとぉ~写真撮らないでくださーい! 事務所を通して!!」
「あーあー、どいつもこいつもうるさいねぇ。リサとケヴィンと王への土産も買ったことだし、そろそろ帰るかねぇ」
「そうですね。『ルーチャンネル』の素材も撮りましたし。さて、旅館でまだ惰眠を…あわわっ。眠り姫のように安らかにお休みになっているお姉さまたちにも声をかけなくちゃ」
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「陛下っ! 大変です!」
「どうしたっ! 敵襲か!」
「いいえ、違います」
「ではなんじゃ。魔物が群れをなしてやって来たか」
「そうであればなんと恐ろしい。しかし、そうではありません。むしろもっと恐ろしいラクトアから陛下にと貢ぎものが届いたのですが……」
「なに? そなた、まだそんなことを言っておるのか。ラクトアは時おりこうやって珍しいものを送って寄越すが、これまで一度とて余を害そうとしてきたことなどなかったではないか」
「ええ、そうですね。陛下が入浴剤を飲もうとなさった時も、ラクトアはあえて使用方法を伝えて来なかっただけで、食べ物であるともないとも伝えておりませんでしたからね。それに冷して食べるものも、あえて熱してはいけないとも伝えていなかっただけです。たとえ、誤解しそうな順番で送ってきたのも、たまたまであろうと思われます。全く、異国、いや、異世界の品物を送るならば、開け方や食べ方など知らせれば良いものを、こちらが大騒ぎしているのを高みの見物しているに違いないと穿ってしまうのはひとえに私が矮小な人間ゆえ。やはりお人柄ができている偉大な我らが陛下は懐も大きく立派であらせられる」
「……そなた、どこかの従者と似てきたの。まあよいわ。で、今回は何を送ってきたんじゃ」
「は、こちらの箱でございます」
「ふむ、中でごとごといっておる。何か入っておるな。それにしても見事な箱よ」
「ええ、そうですね。これまでの植物の繊維を加工した『だんぼーる』とやらの箱とは違い、固くつるつると手触りよく、様々な樹木の色と木目、それらを組み合わせて複雑な模様を表現しています。我が国の宝物庫にある宝石をあしらった金属の箱と比べますといささか地味ではありますが、職人の技が光る逸品という点ではまさに国宝級の箱でありましょう」
「うむ、ではこの箱を傷付けることなく中の物を取り出してみよ。……ん? どうした、顔色が良くないようだが」
「それが……陛下の御前にお出しする前に中を改めようと致しましたが、この箱には蓋もなければ底もないのです」
「……なんと言ったか。もう一度申してみよ」
「ですから、どこが蓋やら、どこが底やらわからないのです。鍵もなく、この箱にどうやって物を入れたのか、どうやってこの箱を組み立てたのかさえ分からないのです」
「そんなもの、いつものように王立魔法科学研究所の者にちゃちゃちゃーと調べさせればよかろう」
「かしこまりました」
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「陛下! 陛下! 分かりました!」
「おお、分かったか!!」
「はい! 魔法では開けられないということが分かりました」
「そうか。しかし、がっくりじゃの」
「しかし、この箱に魔法がかけられていることも判りました」
「ほう、して、どんな魔法がかけられておったのじゃ。それを解呪しても開けられないのか」
「まことにもって残念ですが。かけられていた魔法はひとつ。内側に時間魔法です」
「時間魔法それだけか……つまり、中の物を腐らせないように時間を止めてあるということか」
「そうだと思います」
「では、中は食べ物が入っているということじゃな」
「いえ、まだそうと決まったわけではございません。透視の術を使った職員の報告によりますと、中には黒っぽい卵のようなものが入っているとのことです」
「なに!? 黒いたまごじゃと?」
「はい。最近入りました将来有望な魔力の高い魔法使いが透視を行いましたので、それは確かだそうです。しかし、我が国……いや、この世界で食べてもよいとされている生き物のうち卵生の動物、もしくは鳥類、魚類に黒い卵を生むものはおりません」
「するとどういうわけじゃ」
「異世界には黒い卵を生む生き物がいるのかも知れませんが、食べ物であると判じるのはいささか性急かと。開けたとたん、未知なる生物が時の魔法の制約から解き放たれ襲ってくるという危険性もなきにしもあらずかと」
「ふむ」
「そこで考えました案は、この木製の箱ごと斧で二つに割る。魔法使いに箱ごと凍らせてから斧で二つに割る、です」
「それではこの芸術的な箱に傷が付いてしまうではないか」
「安全に中の物を確認するには致し方ないかと」
「ええい、却下じゃ。そなたらにできぬと言うなら、余がやってみせるわ」
「ああっ! 陛下、お戯れを」
「ええい、離せ。ん? 何やら僅かに切れ目が。んんん?」
「おお! 板が少しだけ動く箇所があるようですね。これは! これは開封の糸口になるかもしれません。さすがは我が陛下!」
「もっと褒め称えてよいぞ」
「では、我が国が誇るスペシャリストを集めましてこの箱の開封方法を調べさせて参ります!」
「うむ、任せた。なるべく早くな」
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「陛下! お待たせいたしました」
「待ちくたびれたわ。あれから1ヶ月じゃぞ。時間魔法がかかっていなければ、中の卵も腐っておるわ」
「この箱、480の手順を経て開けるようになっておりました。これ、このように。少しずつ板をずらし」
「ちょっと貸してみよ。余もやってみたい」
「あっ、そこじゃありません。正しい手順を経なければ開けられないのでございます」
「むむ。これっぽっちしか動かんのか、ふむ、むむ……」
(二時間経過)
「よし、次で479手目じゃな」
「そ~っとですよ。一手前にはこちらにお貸しくださいませ。厳重な結界を施し…って、ああっ!」
「……なんじゃ、この黒い卵は……しかもひとつか……」
「ちょっ……陛下! いけません! 味見もさせず、ああっそんなに乱暴に剥いては! あわわっ召し上がってはいけません~~」
「中は存外、白いのか……どれ……うっ!!」
「ど、毒? ほら、いわんこっちゃない!! 大変だ! 侍医を呼べ! 魔術師もだーー!!」
「うまい!! ぐっ……み、みず……」
「蚯蚓!?」
「ミミズではないわ! 水をくれ、水を」
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「王様、寄せ木細工の秘密箱も黒たまごも喜んでくれたみたいですね。って、ラクトア様、なにをご覧になっているんですか? ああ、これ2日めの京都で撮りまくったツーショット写真ですね。喋ってる言葉がニッポンジンぽくない人たちでしたけど、異世界人の顔の区別って案外付かないものですね。トヨバシカメラで買った異世界式カメラでお願いしたら写真もたくさん撮ってくださって、異世界人はみなさん気さくでしたね~。山も魔獣はいないし、猪とか鹿とか熊とか食材の宝庫でしたし。騎士みたいな剣振り回してるヤバい人もいませんしね~。空間魔法で持って帰ってきた食材、あとで捌いておかなきゃ。あ、あそこ良かったな。三食昼寝付きで、いつでも泳げて、お散歩するだけで可愛い女の子にキャーキャー言われて、お付きの人間が衣食住のお世話をしてくれるところ。スイゾクカンっていうんでしたっけ。次も泊まりたいなぁ。そういえば他のお姉さま方は無事にお帰りになりましたかね。あ、このパンツ手洗いしなくっちゃ」
「ルー」
「はいはい、何でしょうか~」
「あたしゃちょっとリサのところに土産を持って行ってくるから片付けよろしく」
「あっ……もう行っちゃった。いまのうちに向こうで買ってきたアイス食べちゃお~っと」