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調査隊

20XX年

オーストラリア大陸の地下にて発掘調査が行われていた。

その場所は原住民によって聖地として崇められており、近年まで碌な調査がされなかった事もあり調査隊の表情は希望に満ちていた。

「おい、これって壁画か?」

「ああそうだ。古代のアボリジニーの壁画だな・・・」

「こっちにもあるぞ!」

壁一面に壁画が描かれていた。おそらく数万年前と思われるが恐ろしいほど綺麗に残っている。

「どうやら歴史みたいだな」

調査に参加していた学者の一人が呟いた事にみんなが反応する。

「通説ではアジアから渡ってきたと言われているが、新しい発見があるのか?」

その学者はしばらく無言になり絵をなぞりながら奥へと進んでいく。

「どうやら何かから逃げてきたらしい」

皆が学者の言葉に集中している。

「ここを見てみろ。大きい人が小さい人を追いかけている様子がある。ここには洞窟に逃げて隠れている様子だな」

俺たちは学者が指差した壁画を見てみるが大きい人と小さい人は分かるが、逃げている所はわからなかった。


そんな様子が何度か繰り返した後、ようやくこの地下洞窟の終わりが見えてきた。

「ここで終わりか・・・未調査の聖地だから何か新しい発見があるかもと思ったが残念だったな。」

「とりあえず、キャンプに戻るか?」

「そうだな、撮影した内容を調べたりしたいし、一旦戻るか。」


皆がこれで終わりという雰囲気を出しているが学者は違った。

「絵が途中で途切れているのが気になります。」

目がランランと輝き鼻息が荒い・・・

「1時間、ここで休憩を取ったら戻るぞ。」

そう号令を出し各自荷物を下ろしその場で座り休息を取る。学者だけが壁を見て回っている。


そろそろ1時間になろうかという時に、ガタッと大きい音が聞こえた。周囲を見回すと学者が壁に手をついて固まっている。

突如、地響きが鳴り響く

何か言いようのない不安がこみ上げてくる。

「逃げろ!崩れるぞ!」

誰かが叫ぶ声が聞こえる。

そうだな・・・ここは逃げよう

「全員!退避ーーーー!」

俺の声に皆が荷物を持たず入ってきた入り口へ走り出す。後ろから砂煙が巻き起こり、視界がなくなっていく。俺は皆が着いてきていることを信じて走っていく。

次第に外の明かりが見え、段々と大きくなっていく。

外に出た俺は肩で息をしながら周囲を見回した。

現地スタッフが心配そうにこちらを見ている。

人数を確認していく・・・

何度数えても1人足りない・・・

誰がいない?

「あの学者さんがいないぞ!」

逃げ遅れたのか?


キャンプにたどり着き、俺達は休息を取ることになった。できれば学者を探しに行きたかったが、皆に止められてしまった。仕方がなく洞窟入り口に数人見張りを置き、一晩休息を取った。


次の日

救助隊を組織し、再び洞窟に入った。視界は戻っており、昨日入っていった時と変わらない様子だ。

奥へ進んでいくと、昨日最後に来た最奥の場所まで来た。

しかし、ここは昨日とは違い、さらに奥への道が空いていた。

まだ奥があったのか?

学者は奥に行ったのか?

疑問が浮かんでくる。

俺たちは、学者の名前を叫びながらさらに奥へと進んでいく。

ちなみに学者の名前はフィリップだ。

「何だこれは?金属?」

1人が壁を触りながらそんな事を呟いた。

そんな訳がないだろう・・・と思いながら、彼が触っていた壁を触れてみる。

ひんやりしている。洞窟の感触とは異質な感じが・・・

俺はその場で持っていたスコップで壁を崩し始める。俺の奇行に人が集まってきた。

しばらく壁を崩していくと、はじめは喋っていた皆が無言で壁を見つめている。

それはそうだろうこれは金属でできた壁だ。こんな所にあっていいはずがない・・・金属の壁。周囲の土の壁との違いが際立ってくる。

時を止めたかのように黙り込む人々。

俺はさらに奥へと目を向ける・・・

金属の壁が続いていたとしたら、この先には何が・・・


誰もが無言になりながら更にその先へ進んでいく。

階段が見えた。

階段をそのまま降りようとしたら、1人が慌てて止めてきた。

「まって、地下に行くなら空気のチェックをしないと」

そうだった。基本的なことまで忘れていた俺は、慌てて送風機を用意させる。



ブロォォォォ


大きい音を立てながら階段の奥に空気を送っていく送風機を眺めながら俺は、この先をどうするか悩んでいた。元々は救助隊の為、碌な装備はキャンプに置いてきている。これ以上奥に進むなら装備を整えないと厳しいだろう。

「よし、この階段前を臨時のキャンプに設定する。各自準備を頼む!」

俺の指示で皆が慌ただしく動き出す。

「パパ!」

送風機の操作をしていると背後から愛らしい声が聞こえてきた。

娘のシェリーだ。

愛すべき娘を抱きかかえて歩いていく。周囲の人達はそんな俺達に微笑ましい笑顔を向けてくる。

「パパ!これはどこに行くの?」

娘が階段の奥を指差し聞いてくる。

「それを調べるのがパパの仕事なんだよ。」


娘を1人で洞窟から出すわけにはいかず、何も触らない事を約束させて階段を降りていく。娘は「探検!探検!」と嬉しそうに俺の直ぐ後ろを着いてくる。


先に火を灯したろうそくを持った人が先行しているため、先が少し明るく見える。そのため、初めて踏み入る場所なのに気持ち的には楽だ。

何もない暗い中を進むのは意外と消耗するのだ。


長い階段が続く・・・娘は大丈夫かと振り返ると満面の笑みが見える。あぁ、癒やされる。


階段が終わり、目の前を金属の壁が塞いでいる。そこで、行方がわからなかった学者が見つかった。

「おい、こんな所で何をしている?探していたんだぞ!」

声を掛けると、興奮したように喋り始めた。

「これは世紀の発見です。簡易の年代測定でも1万年を超えるのに金属を使った壁面。しかも朽ちた様子も見られない。これは素晴らしい!興奮せずにはいられない。見てくださいこの扉!1ミリも隙間がなく壁と見違うほどだ!」

なんかすごく興奮している人物がいると冷静になってくるな・・・

それにしても扉か?そこには壁しか見えないが・・・

「見ていてください!ここに手をかざすと・・・」


ウィィィィン


目の前の壁と思っていた所が開いていく。

後ろから愛らしい声で歓声があがった。

「この先には何があるのか・・・」

「自分が覗いた限りではライトが届かないほど大きな空間があるようでした。」

確かにライトをかざしても何も見えない。

「とりあえず、戻るぞ!大型のライトを持ってこなければどうしようも出来ない。」

振り返り階段を登ろうとすると愛すべき娘の姿が見えない。

俺は慌てて周囲を見回す・・・いない

「シェリー!どこだ!シェリー!!」

娘の名前を叫びながら探していると、扉の奥から声が聞こえた。

「パパ!ここ凄いよ!」


俺は娘を見つけるため扉の奥に入る。ライトが届かない。無機質な地面だけが照らされている。

「シェリー!どこだ!?」

「パパここーーーー」

地面を照らしながら声が聞こえてきた方向へ慎重に進んでいく。

また階段があった。階段を慎重に降りていくと先程より広い場所に出た。

「シェリー!どこだ!」

ライトを照らしながら周囲を探すと探していた娘を発見した。

「だめじゃないか!勝手に行動しちゃ・・・」

「・・・」

娘は反応せず、ただ宙を見て指を指していた。

俺はその指先をたどりその先を見ると、娘と同じように固まった。



その後、一週間はとても忙しかった。

奥で発見された遺跡は今までの考古学を全否定するものだった。捏造だと言ってくる人達も現物を見た途端黙るしかなかった。

軍隊が入ってくる様になると、俺達民間の人間は遺跡へ近づくことが出来なくなってきた。まぁ、仕方がない後は俺達の仕事じゃないしな・・・

キャンプを引き上げ始めると、軍から調査隊全員が集められる事になった。

調査隊には入ってない娘を置いて軍のキャンプに入る。

「これで全員揃ったか?」

将軍と思われる人物が聞いてきたので調査隊はこれで全員揃っているので揃っていますと俺が皆を代表して答えた。

すると周囲にいた兵士達が一斉に銃を構えた。

「えっ・・・・」


目の前の映像がスローに見える。

先月、結婚した友人が・・・

酒を一緒に何度も朝まで飲んだ男が・・・

大食いで全米1位を取ったことが自慢の男が・・・

一度行方不明になった学者が・・・

皆、血を噴き出し倒れていく・・・

シェリー・・・

娘の名前が出てくると、娘の思い出が次々と出てくる・・・あぁ、これが走馬灯か・・・



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