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12:ヒブリドの大規模開発計画

 最近は部族単位での移民・亡命者がちょいちょい来るようになった

ヒブリドに、また新たに大人数の移民者がやってくる。


 モグラ人間…というには少々語弊があるのだが、何だかんだで

地下に穴を掘って暮らすのが当たり前らしいプレリド族と大陸西方の覇者

グランリュヌ月光帝国とも因縁が深い大陸南部の大国…

ヒタイタスマン三日月大王国から異教徒ないし異物として迫害され、

悩みに悩んだ末に音に聞くヒブリドへ流れてきた虫系亜人の

フラウアント族(蟻系の亜人種でツチグモ氏族と似た社会体制)が

新住人に加わる事が決まり、それから一か月と経たないうちに

ヒブリドの文明度が少し上がる事となった。


 先に述べたようにプレリド族はソウタ程じゃないがヒブリドの

魔力硬土層も掘り進められるスキルを持っており、生来の職能である

地下居住区造りに長け、そこにドワーフ以上に優れた

地下資源探知能力を持つというフラウアント族が加わることで、

アムカイアド地獄山脈に一々ソウタが先導して鉱脈を探さずに済むという

劇的な改善策によって一気に必要物資の収集が楽になり、

それによって生活用品等の開発が一層進んだのである。


「………」

「やはり、これはどうしても認めて頂けないのかのう…?」

「コレ真面目に許可してもらえないとあーしらは結構やべーですし?

あーしらはツチグモ族と違って女しか生まれないんでかなり切実だし!」


 しかし順風満帆に行かないのが人生なのか、ソウタは以前に

ヒブリド入りが決まったアラクネ族のツチグモ、アトラナーカ氏族の

其々の代表であるシゥラリアドネとジュディーカが泣きそうな顔で

ある一件を嘆願されて困っていた。


「ボス! これは人助けだと思ってやらなきゃダメっすよ!!」

「俺もそう思うゴブ!! コレはヒブリドだからこそ必要ゴブ!!」

「お前らは喉元過ぎれば熱さを忘れるタイプか…」


 ソウタが困っている案件は、いわゆる娼館の件である。

シゥラリアドネやジュディーカが泣きそうな顔をしているのも

彼女らの生来の種族特性ゆえに仕方ないことなのだ。

というのもアラクネ族は基本的に女しか生まれない種族で、

シゥラリアドネのツチグモ氏族は男も多少は生まれる稀有な氏族だが、

ツチグモ族の男は色々と弱いうえに出産能力がある女性はごく一部…

という始末である。そういうわけなのでどうせならヒブリドに

尽くすという誠意も兼ねて娼館の運営を打診してきたわけである。

しかしそれはそれで中年童貞なソウタは困っていた。

とはいえこれを下手に断れば…「やはりシカリ様の子種を…」

「私たちにお情けを下さい…」となってネネ暴走・ナージャぷっつん祭り

と言った血なまぐさいイベントホイホイとなるのだ。


「ボスは分かってないね!? あの時はボスが全部引き受ける的な

クソハーレム構想になったのが悪いんだよ?! 愛は平等ダルォ?!」

「それな!? ボスにはナージャちゃんやネネさんがいるゴブ!

要は本妻と正妻を差し置くような真似をするのがダメなんダルォ?!」

「活き活きし過ぎだお前ら…俺が困ってるのは教育上の問題なんだよ…」


 最初は難民キャンプみたいな始まりだっただけに、ヒブリドでは

仲間同士の距離が結構近い。なので大人と子供の垣根も低いのだ。

そんな中で画一化された情操教育現場さえままならない中で

地球じゃ18禁な娼館運営をホイホイ認可したら性風俗の乱れで

ウクライナとかでも未だに社会問題になってる未成年妊婦とか

挙げただけで気が滅入る社会問題が目白押しになりかねないのだ。

ただでさえイオヤム樹海のど真ん中で、ソウタと一部を除けば

ヒブリドの周辺に当たり前のように危険が漂うせいで野郎も女郎も

生存本能からやむを得ない故の発情しがちなのに…と思っては…

いや、でもそういうのを発散させるためにもやっぱおkした方が…

と、兎も角ヒブリド統治者とはいえ自分の一存+ガチ生本番ありと聞いて

隠す気ゼロの欲望全開となったモーガン&エルヒスの推しまくりでは

とてもじゃないが決められないので、それ故に泣きそうな顔の

ジュディーカやシゥラリアドネが本当に泣きそうになってきていて

ソウタは久しぶりに参っていた。


「暇だからお邪魔しに来たんにゃー」

「ミオン…言うに事欠いて暇はあんまりですわん!!」


 そんな時にミオンとクーファが来てくれたら…すわ天の助けかと

ソウタが思ってしまうのも無理はない。


「良い所に来てくれた! こういうのは女性の意見が必要だ!」


「みゃ?」「わぅ?」


 真剣に困るソウタの顔は割と見慣れているほうではあったので

ミオンもクーファも軽い気持ちで彼らの話に加わる事になる。


>>>


 とりあえず娼館の件についてはミオンの「合理と道理を考えて

男娼もアリならば段階的にやっても良いと思うにゃ」で一区切りついた。

これに喜んだのはハーフ豚鬼&小鬼コンビなのは言うまでもない。


 ここでヒブリドの進展も一段落かと思っていた矢先の事である。

折角だから以前のドルク夫婦の結婚式のような祭りを定期でやれたら

良いよなーという意見から「還元祭ダンクフェスト」の企画をしてみた最中に

ユガがぽつりと「ヒブリドも大分発展してきたから、そろそろ

周辺国のスパイが入ってきても不思議じゃないかも」という呟きに

元・日本人であるが故に失念していたソウタは「しまった!!」と

その場にいた企画参加者全員が概ねビビるくらいに大声で叫ぶ。


「ちょっと…いきなり叫ばないでちょうだい…!」

「うぉー…すっげぇ背筋が凍りつきそうだったんだけど…?!」

「ビックリした…もう、兄様…ゾクッとしちゃったよ…?」

「はぁはぁ……ソウタの叫び……はぁはぁ……」

「兄者の叫びを聞いて尚そんな調子なネネちーこそヒブリド最狂だぬ」

「すげーなヴァイス…発音は褒めてるのに蔑みしか感じないぜ…」

「あ、倉庫番さんが気絶してますね…」

「エルヒスの兄ぃも泡吹いてるな…やっぱオレらが異常な方なのかも」

「う、ん…エーリンに、は…胎、教としても聞かせられな、い…ぞ」


 耳の調子を確かめたり回復魔法してみたりと驚いた割には対応も随分と

テキパキしているのは流石ヒブリド幹部と化した者達である。


「しかし困ったな…正直疑いだしたらキリの無い者達が多すぎる…」

「その辺りは言いだしっぺの私が色々と手を打ってあげるから…

とりあえずヒブリドの単純な防衛力強化からやっていくべきでしょうね」

「………都度都度お前の意見を参考にすると思うが大丈夫か?」

「上位とはいえ金Ⅱ級程度の私に頼るってどうなのかしら…?」

「この中では外の事を一番知ってるし"出来る女"と見込んでいるんだ。

負担は相当だろうが、その分色々と俺なりに誠意を見せるから…」

「ふぅん……?」

「……」

「……」


 満更でもなさそうなユガにネネとナージャの視線が刺さるが、

その辺りは経験豊富なユガなので意にかえす事は無かった。


「となれば…まぁ…そうね…資金面から見ても手っ取り早いのはやっぱり

"ダンジョン攻略"だけど…一日かそこらで出来るものじゃないのよね」

「ダンジョンか…やはり実在するんだな」

「樹海産の魔物素材は優秀だけど…どうしたって私らのパーティで

捌こうとするとどうしても闇ルートの邪悪利が差し引かれちゃうから…」

「だったらよぉ? アタシらもそこそこ腕上がってるしいっそ

この面々でダンジョン攻略のためのクランとか作れねえの?」

「やってやれない事は無いでしょうけど…」

「多少目立つのは仕方ない。どの道スパイが入り込んでいるとなれば

このままノンビリしてもいられん…折角イオヤム樹海という

俺と極一部以外には天然の要塞らしい立地条件があるのだ…

それが上手い事味方しているといえば味方しているうちに

ヒブリド内の防衛力を上げられるだけ上げるのしか無いだろう」

「とりあえずクラン結成の申請は俺ら迎撃猟兵チームが

上手い事進めるから、大将は大将でメンバーを厳選してくれよ。

まぁ…そうなると大将、ネネちゃん、ナージャは固定なんだろうがよ」


 リヒャルトが言った時には既にソウタの両脇にネネとナージャが

ビッタリとくっついていたので苦笑せざるを得ない。


「とりあえずは…銀級のダンジョンが近場にあるなら試したいな」


 そういうわけで東国連合の何処かにあるだろう手近な銀級ダンジョンを

その為だけに結成することになるクランで挑むことに決まった。


12:ヒブリドの大規模開発計画(終)

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