10:ヒブリドには託児所が無い
アムカイアド地獄山脈。イオヤム樹海の北部に接する大雪山である。
最初の頃は兎も角、樹海中央のヒブリドで暮らす人々にとっては今はもう
「天然の冷凍庫」扱いされている場所である。無論そこに皮肉はある。
麓は流石に四季の影響を受けるが、中腹以上からは万年冬季であり
春の時期は定期レベルで雪崩が起こる超弩級危険地帯であり、
それ以外の季節は未だ生態系の全容が解明されていない寒冷地特化の
平均がオリハルコン級の危険度の魔物が跋扈する場所でもある。
そんな所でソウタは山肌の雪を掘ったり握り固め…傍から見たら
雪遊びをしているような行動である。
「…せめて追い風なら良いんだがな」
今現在でさえも常人には不安に駆られるレベルの吹雪が吹きすさぶ中で
肌の感じは寒さも感じ無さそうとはいえ案の定腰巻一枚なソウタが
時々目に入る雪にしかめっ面をしつつも山肌にドッカリと積もっている
万年雪を固めに固めて良い感じのブロックに成形していた。
意図はヒブリドにある氷室用の保冷剤確保の為の行動である。
アムカイアド地獄山脈から持ってきた雪はイオヤム樹海の土同様に
魔力感知に理解の深い者達曰く「普通のものとは比べ物にならないくらい
溶けにくく冷たさも維持し続ける」コスパ最高な天然保冷剤になるのだ。
もちろんコスパ最高というのはソウタ含めた極々一部の列強の話であり、
それ以外の者にとっては「ほぼ100%死ぬ環境」なので
どう見てもコスパ最悪なのだが。
「………ん?」
掘りすぎて普通に雪の洞窟になっていた場所で、今日までに
アムカイアド地獄山脈で感じた魔物とは明らかに違う魔力波長を
剥き出しになっていた地面の向こうから感じたソウタ。
「…万年冬眠中ないしモグラみたいな魔物でも潜んでいるのか?」
まだヒブリドから離れて一日も経ってないし折角なので…と、
大分人間の感覚がマヒしているソウタは今更だが素手でボコボコと
感知した魔力を頼りに地面を掘り進んでいく。
>>>
安穏たる平和。竜種に生まれた者の幸福。しかし同時に
竜種として生まれた悲しみも感じていたのは、人々にアイスドラゴンと
呼ばれて恐れられている青みがかった白い鱗肌のドラゴンの女性である。
「……………もう少しで孵るのに…」
彼女は長い時を生きた。他の竜種に比べ穏やかに生きた自負もある。
しかし彼女とて定命(※寿命のある)存在…自覚できる程に
彼女は死期を悟っていた…悲しいかそれは胸の内に抱いている
最初で最後の卵が孵るか否かと言う時期であった。
竜種は基本的に単純な愛での安易な婚姻を結ばない。何故なら竜種は
人間等と違って産生が色々と特殊であり、下手な相手との婚姻は
生まれてくる子竜の運命に直結しかねないのだ。
「あぁ………」
だからこそ仲間内でも慎重に慎重を重ねていたが…まさかここで、
このような形で我が子に苦難を残したまま死なねばならないのかと思うと
胸が張り裂けそうで仕方が無かった。彼女の胸に抱かれた卵は
それを感じたのかは定かではないがピクリと脈動する。
「もう少しだけ…自分の気持ちに素直になれば良かったのかしらね…」
ありし日を思い返そうとしたところで空しいだけだ。さりとて
他に出来そうなことなど無い…悩めば悩むほど死ぬまでの時間が
浪費されていくだけだが…他にどうすることも出来なかった。
「…………………………ッ!?」
せめて温もりだけでも残そうと卵を全身で囲い、長い首を
我が子が宿る卵に寄せて最期を迎えようとしたドラゴンだったが、
ここにきて天井近くの土壁から不穏な気配を感じ取ってしまう。
「…これが神の采配であるなら…死骸狂竜と化してでも…!」
青白い鱗のドラゴンは、胸に卵を抱きつつも全身に魔力を漲らせ
母と子の最後の時を邪魔しようとする無精者と相対すべく
眼を血走らせて瞳を怒りの炎で染めて待ち構える。
「ん…ッ? これは……?」
「………………ガハゥ…!」
天井近くの土壁を掘り砕いて現れた無精者はソウタだった。
「ワイバーン…いや、あんな食肉とは比べ物にならぬ…ドラゴン…!?」
ドラゴン初遭遇なので流石のソウタも愛用の骨棍棒を構える。
「…ぐすっ……うっ…うううっ……酷いわ…あんまりだわ…!」
「え」
会話が出来るのもさることながら目の前の白いドラゴンが
涙を一滴こぼしてへたり込んだかと思ったら泣き言を言いだしたのだ。
これにはソウタも思わず棍棒を構えるのをやめてしまう。
「静かに生きてきたのにっ…! それなりに真面目に生きてきたのに…!
私だけなら兎も角…生まれたばかりのこの子も巻き込むなんて…!
神と言う外道めっ…! これが貴様のやり方なのかっ…!!」
「あの、ちょっといいk」
「殺せばいい! どうせ私達母娘の血肉が目当てなんでしょう?!
どう足掻いても死ぬのよ…! 貴方に理解があるのなら!
せめて…せめて………………………ハッ?!?!」
突っ込む暇も与えさせてくれないまま、半ば狂乱している母竜。
今度は何か閃いたのか先程の悲観は何処へ行ったのかと思うレベルで
違う意味で血走った目をソウタに向ける。
「………血肉が欲しいなら私を喰らうと良い。でも、約束してくれる?
その代わりに私の子…この卵から生まれてくる子は食べないで…!!
この子が卵から孵れば、そんな事をしなくても良いくらいに
この子は貴方に尽くすから…そうなるように育ててくれていいから…!
お願い…! 私の事は好きにしていいから!! どうか!!!
どうかこの子の命だけは奪わないで!!!」
微妙に何処かで見たことある展開にソウタは固まっていた。
「いや、あのn」
「いずれにしても私の命も後僅か…であればこの覚悟をわが命で!!!」
「いやだからちょっt」
「ぐぶっ! がはぁぁっ!?」
全く突っ込む間も与えずに母竜は頭上に魔方陣を浮かべたかと思えば
いきなり激しく吐血してそのまま息を引き取ってしまう。
「えぇぇぇえー………?!」
イマイチ訳が分からないまま取り残されたソウタ。
「………じゃあ…魔石だけ貰っていくとして…卵は…
ああ、うん…袖すり合うのも何とやらで預かってやるしかない、か…」
一応母竜が本当に死んでいるかどうかを確認し、多分今日までで
一番丁寧に魔石を取り出し、火を吹く魔物の魔石を食っているうちに
出来るようになっていた火炎ブレスで丁重に母竜の遺体を火葬し、
ほとんど一方通行な物言いだったが、彼女の遺言通りに
彼女の子供が入っているらしい卵を持って帰る事にしたソウタ。
何気に人間の子供サイズの大きさだった卵には少し驚かされた。
>>>
例によって時々増える住民を「拾った」時のノリでソウタは
ドラゴンの卵を持って帰ってきたことを話し、あの母竜の遺言通りに
卵を孵化させて育ててみることにした。場所は最近完成した
ヒブリドにおける公民館のような建物内である。
ちなみに卵は母竜がそうしていたように、一応ソウタが慎重に
抱きしめて温める真似事をしていた。
「ソウタ兄ちゃん…どんなドラゴンが出てくるんだろうなー?」
「母親が白いドラゴンだったので、普通ならば同じドラゴンなんだが…」
「ぬー…タマゴのクセに既にレベルがあたいより上とか…
ふざけてるんだぬ…さすがは"ちーと"モンスター筆頭なんだぬ…!!」
「……………ソウタの言う事を聞かなそうなときは…」
無言でネネの脳天にチョップするソウタ。ごめんなさいを連呼しつつも
ソウタの腕に全身を絡み付かせてくるネネも相変わらずである。
これで指を舐めようとかしてきたら鼻の穴にぶち込んで豚顔にして
公衆の面前で大恥を掻かせるのも辞さないのがソウタの
ネネに対する教育的モットーである。
「でも…一応相手はドラゴンなんだし…兄様…?」
「まぁ、その時はその時で考えればいい」
「ナー子の言いてーコトもわかるけどな? こういう時でもやっぱ
アタシらが第一に兄鬼を信用するべきだと思わねーか?」
後味は悪いだろうが、襲い掛かられては反撃せざるを得ないのは
ソウタの良くも悪くも条件反射である。
「ぶひぃ…こういう時にボスの役に立てない事が良いのか悪いのか…」
「お前この間"腕力が全てじゃない"って言ったばっかゴブよ」
「お、おでは…つ、妻と子の為にも…ま、まだ…死、ねない…から」
「「爆発しろデキ婚が」」
「う、を…!?」
遠巻きから戦力外だと自覚しているモーガンやエルヒスは
新婚なドルクに嫌味を飛ばしながら様子を見ている。
「あは、そういえば私こういう場面って初めてかも?」
「いやそれって結構普通じゃないかなカーヤ…?」
「ミハルが概ね正しい」
「お、おいアイネ…な、何でおお前までオオオレの後ろなんだよッ?!」
「………雷使いのエルフだから?」
「ひひ、ドラゴンって結構雷属性に弱いの割といるじゃん?」
「その辺はよくわからないけど…まぁヨハンくんだし?」
「なんでこんな女しか周りにいねぇんだよチキショオぉ!!」
モーガンたちよりは近い所で女性が苦手だがマッスル美男子な
ハーフエルフのヨハンがミハル達に盾代わりにされている。
「ったく…あのエルフの兄ちゃんは賑やかそうだねえ…?」
「でもヨハンさんが雷属性の使い手だってことは事実なので…
割と理に適ってますよ? アイネさんなんてそれこそリヒャルトさんと
同じタンカー役を務められるみたいですし?」
「彼女って結構珍しいハーフサイクロプスなのよね…徒手空拳だけだと
普通にソウタ相手にも善戦するわ…まぁ試合は滅多に見れないけど」
「「へぇ…」」
ドラゴンの卵を温めるソウタから少しだけ離れて雑談しつつも
油断はしていないのが現役冒険者パーティでもあるユガ達。
「おっ、兄ちゃん! 卵が動いたぞ?!」
「感覚が短くなってきてるんだぬ」
「………うまれるのかな」
「スーリャ…?」
「産湯であれば何時でもご用意できます」
うろ覚え知識…それもニワトリの孵化なのでかなり怖いが…
とにかく温かさを維持できる環境が大事だろうということで
手の空いている住民かつ勇気がある連中に人間式ではあるが
産後の手順をいつでもこなせるよう準備はしていた。
―ビキッ、ピキピキッ
「ンっ?! 兄ちゃん!! 卵にヒビが入ったぜ!!」
「なにがでるかな…なにがでるかな…(棒読み)」
「ネネちーいくらなんでもそれは舐めプ過ぎだぬ」
何だかんだでワクワクしているヒブリドチルドレン三羽カラス。
「スーリャ…一応ユガ達の所まで離れておけ」
「畏まりました」
最初の頃なので結構忘れられているかもしれないが、スーリャは
白金級以上の相手でなければかなり戦えるエルフ氏族の生まれだ。
まぁそんな出自があったからこそヒブリドでのサプライズ現象に
いち早く慣れたのも彼女なのだが。
―バキッ!
「「「!!」」」
卵の天辺らしき場所が大きな音と共に割れて殻が欠ける。身構えるのは
距離を置いているユガ達が主で、ソウタと三羽カラスは
割れた部分を注目する。
「……出てこないんだぬ」
「…力尽きた? じゃあこのままドラゴン版の雛鳥スープに…」
「ネネ、お前ホント容赦が無いよな」
―ボクおいしくないよっ!
「ぶどぅは?!」(注:ネネ)
「ぶぐぬぇッ?!」(注:ヴァイス)
「うわ?!」
声と共に卵の横を突き破って出てきた小さくも立派な白っぽい
ドラゴンハンドが丁度脇から覗き込んでたネネのミゾオチ、
ヴァイスの頬を直撃する。吐きそうになるが如何にか耐えようとするも
やはりいくら魔水晶人とはいえミゾオチへの一撃はキツいようで、
プルプル震えながらその場にうずくまってしまうネネ。
ヴァイスは普通に顔面パンチだし三羽カラスで一番体力も低いので
結構な距離を吹っ飛ばされて倒れてピクピクしてしまうのも無理はない。
驚いたルヴァルは思わず飛び退くも特に別状はない。ちなみにソウタは
またも想像の斜め上な展開にちょっとフリーズしている。
スーリャはスーリャでまずヴァイスから介抱しに行くところは流石だ。
「んしょっ!」
続いて卵の殻を突き破って出てきたのは、やはり小さくも立派な
ドラゴンの足。色合いは腕同様に白と言うよりは青っぽい。
足が出てもまだ顔が出ていないのでタマゴモンスターなそれは
自分がソウタに抱えられているのを手足で確認する。
「ちょっと離れていーい?」
「……………ああ」
もうなるようになれと思っているソウタの投げやりな応答に
タマゴモンスターはハキハキした声で「うんっ!」と答えて
少しだけソウタから離れ、孵化の続きを始める。
「……うぐぐ…おのれ…」
「ネネ、逆恨みにも程があると思うぜ」
どうにかミゾオチ…所謂腹パンの一種から立ち直ったネネ。その顔は
間違いなく中身が大人の転生者だと分かりそうな形相で
眼光も文字通りっていうか本当にギラギラ光らせて魔眼の力を
未だタマゴモンスターなアイスドラゴンベビーに向けようとする。
「ネネ…大人げない真似はするな」
「う……くぅ…!!」
ソウタの一声ではネネも引き下がらざるを得ないようで、しかしながら
腹パンを喰らわせてきたアイスドラゴンベビーに向ける形相は
相変わらずホラー映画さながらの様相である。
「ちゃいっ!!」
真ん中から破るよう卵の殻を完全に脱ぎ去ったアイスドラゴンベビー…
なのだが、その見た目が…どう見ても…
「ぶほっ!? す、スーリャっ!?」
「お任せください」
手足とか翼とか尻尾とか角は確かにドラゴンなのだが…
それ以外の姿がどう見ても全裸の幼女であった。
ソウタは素早く叫んで「見ざる」状態に移行すれば、スーリャが
"おくるみ"として用意していた柔らかい布をアイスドラゴン幼女に
素早く巻きつけて色々と事案になりそうな場面を防止した。
「ほぇ…?」
「危なかった…すまん、スーリャ…手間を掛けさせる」
「あの頃に比べれば…これくらい如何と言う事は…」
遠くでモーガンが「うおぉおおおチクショオおおおお」とか言って
何か悔しそうに地団駄踏んでたり、近くの女子に目つぶしされたらしい
ヨハンが「ぐがあああああ目がっ! 目があああああ!?」と叫んで
その場をのた打ち回ってたり、ユガはお馴染みの「また、頭痛が…」と
頭を押さえたりするのが見えるが、それは置いておくことにしたソウタ。
「えーっとぉ…? ボクのパーパはやっぱり貴方でいいのかな?」
「え」
スーリャにローブっぽく巻きつけて貰った布地がずり落ちるのも
お構いなしという感じでアイスドラゴン幼女はソウタに
太陽のようなニコニコ顔で朗らかに話しかけてきた。
「いや…俺は…」
「ボクのことを最後に温めてくれた人が男ならその人がパーパって
マーマがずっと言ってたの。だから貴方がボクのパーパでしょ?」
「む……? うーん…?」
事実と言えば事実を言ってきたアイスドラゴン幼女に対して
若干釈然としないものはあるがYesと答えるしかないソウタ。
「ん! じゃあやっぱりパーパだね! パーパ! パーパ!
ボクのパーパ!! はじめましてっ!!」
「お、おう…?」
まるで邪気のない見た感じの年齢相応な言動には、今迄が今迄なので
微妙に歯切れの悪い返事しか返せないソウタ。邪気なしで
抱き着かれるのもヴァイス以外でも初めてだったので
ついついアイスドラゴン幼女にされるがままになる。
「ソウタ! その子はダメ! その子はイケナイ!!」
例によってネネが比喩的な意味で噛みついてくる。
「んふー…これがパーパの匂いかぁ…」
「ぐぐぐ…ホラ! もう既に…! このままにはしておkうががっ!?」
「いや、どー見ても普通に甘えたいだけじゃねーか…?」
抱き着いてソウタの腹部に顔をぐりぐりするアイスドラゴン幼女に対し
「そこはワタシの特等席だ下がれ下郎」と顔に出てるネネが
適当な理由でアイスドラゴン幼女を排除しようとしたが、
近くにいたルヴァルのエネルギー体の手に拘束される。
「はぁなぁせぇえええええええべべべべべべッ!?」
「はぁ…ホント普通に魔眼ブチかましてくんのやめろよなー…
条件反射で攻撃性の魔力を注入しちゃうだろうが…」
「まぁ仕方ないんだぬ。あんのじょーいつものネネちーだぬ」
スーリャに回復してもらったヴァイスもルヴァルの隣に歩み寄る。
「兄様…その子の好きにさせたままでいいの?」
「兄鬼ってば、生まれたばっかのドラゴンにも懐かれるのな?」
状況的にはとりあえず心配することも無さそうだと判断したのか、
ナージャやゼナスフィールも近寄ってくる。
「…!? パーパ? こいつらなぁに? エサ?」
「ばっ…!?」
周りの者達の存在に気付いたアイスドラゴン幼女は、全く
悪気の無さそうな顔でそんなことを言う。これにはソウタも
ちょっとばかり血の気が引く。
「ぷっははは…! 流石はドラゴン様ってかァ? でもなぁー…
ちっとばかしアタシらを舐めすぎじゃねーかよぉオイ?」
「………昔殺した海竜みたいでムカつく…」
「待て待てお前ら、相手は赤ん坊みたいなものだぞ…?」
「パーパひどい! ボクもう子供産めるんだよ! 生まれた時から
もうドラゴンはほとんど大人なんだよ!?」
アイスドラゴン幼女の一言で不意に沈黙が訪れる。何処となく
周りの空気が冷えた気もした。
「え」
「マーマも言ってたんだよ? 孵った時の傍にいるパーパが
優しくて強いって分かったらそのパーパの赤ちゃん一杯産みなさいって…
そうしたら絶対さびしくないからそうしなさいって言ってたんだよ?」
「え、ちょ、え」
「あ゛ぁ゛ぁ゛ん゛?!(<0><0>)」
「うわっ!? ウソだろ!? ネネが!?」
「ち、注入出力を上げるんだぬ!! コレくっそヤベーやつだぬ?!」
拘束中+封じ込めのための魔力直接注入攻撃をされているにも関わらず
ゴゴゴゴゴゴ…! とか聞こえて見えそうなレベルでネネが
正直もう幼女の皮を被ったバケモノの本性としか言えない形相を剥く。
「………ふざけてるの?」
「お、おいナー子……………あー……これは…兄鬼………生きろよ…?」
そしてナージャもナージャで色々と氷点下な雰囲気がドドドドド…!
と聞こえて見えそうなレベルに達していた。
「ひっ…?! 助けてパーパっ!!」
「……………善処する」
メンドくさくなったのか、リヒャルトの葉巻を吹かして
メチャクチャだるそうに成り行きを見守るユガが
とても印象的だったソウタである。
今日も(?)ヒブリドは波紋疾走やむなしであるようだった。
10:ヒブリドには託児所が無い(終)