1. ticket
「それじゃダン、お留守番頼むね。」
「嘘でしょぉお?!」
昨日から楽しみにしていたダンは、本日行われるT&Nのライブのチケットが一枚無くなったのだ。
つっちーは朗らかな笑顔で家を出て行った(ちなみにT様のファンである)
「つっちー、いいもんね。僕だってヤギさんのライブ今度一人で行ってやるもん!」
つっちーの出て行ったドアを恨めしそうに見つめ、ダンは悪態をついた(ちなみに彼はNIWATORIのファンであった)
一人置いてけぼりをくったダンは、仕方なく自室でひっそりとライブDVDを見て過ごすことにしたのだった。
「ああ、ついにこの目でNIWATORIを見ることができる・・・!今日は人生で一番素晴らしい日ですね!」
休日のためかいつもより大勢の人々でごった返している街中を
片手にライブチケットを握り締めて歩きながら、気持ち悪いほどの笑顔でダンはそう言った。
「つっちーに内緒でチケット買っておいて正解でしたね・・・。あんなのが一緒に来たら騒がしくてライブに集中できないもん。」
と言って、今頃部屋で悔しそうにライブDVDでも観ているであろうダンを想像し、彼は意地悪く笑った。
ところが、そうして彼が自分だけがT&Nのライブに行ける優越感に浸っていた、ちょうどその時。
「遅刻だああああ!ライブ遅れるやなかいっ!!」
前方から、坊主で、耳には痛々しいほどの数のピアスをつけ、サングラスをかけていて
ちょっとEXXILEのATSUMIにも似る男が猛スピードで走って来た。
それを見たつっちーは「ダンといい勝負ですなぁ〜」と呑気に呟いた・・・のも束の間、その男は何をそんなに急いでいるのか、
すぐ先に人・・・つっちーがいるのにも構わず、そのまま勢いよく突っ込んで来たのだ。
「きゃぁ!!」
「うっ!?」
つっちーと男は後ろに倒れ、つっちーの意識が無くなってしまった。
近くにいた人は救急車を呼び、男はすぐ起き上がって つっちーに
人工呼吸をしたのだ。その現場を見たダンはショックを受けてしまった。