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白狼使い  作者: 向日葵
第1章
28/35

27 買取が終わらない






私を探しているダルトさんに声をかけるべきかどうか考えていた。


声をダルトさんにかければ目立つこと間違いなし!というこの状況で声をかけるべきかどうか悩むなぁ。


正直言うと声をかけたくない・・・・けど、多分ギルドカードのことだと思うんだよね。


ギルドカードは必要だし・・・・・


そんなことを考えていたら、ダルトさんと目が合った。


「っお!いたいた。すまん、これを渡すのを忘れていた。」


「ありがとうございます。」


ダルトさんから渡された物はやっぱりギルドカードだった。


良かった、これで買取の手続きができるね。


「すまなかったな。ギルドカードがなくて買取、困っただろう。それより、さっき目が合ったってことは、こっちに気付いていたんだろ?だったら声をかけてくれればいいのに。」


「困っていたところにダルトさんが来たので。・・・・気付いたんだからいいじゃないですか。(だって目立ちたくないし、あそこで声をかけたら何かが起きそうな気がしたんだもん)」


「そりゃそうだが・・・。」


気づいてたのに声かけなかったことばれてた。


まぁばれるかなとは少し思ってたけどね。


でも声をかけなかったのは、何となく周りの目線が集中してる気がしたからなんだよね・・・・・。


「気がした」のではなく、実際にギルドにいる人々の目線はユキ達に集中している。


ユキがダルトに声をかけなくても、ダルトがユキのところに近寄った時点で目立ってしまっている。


なぜなら、ギルドマスターが探していた人物であると言っているようなものなのだから。


そしてユキの「何かが起きる」という予感は外れない。


「キャン!(主を困らせるな!)」


「?なんか今ラルトに怒られた気がしたが・・・気のせいか?」


今までユキの肩の上で黙って見ていたラルトの我慢の限界がきてしまった。


ラルトは「ユキを力づける」という使命を果たすため、ユキに応援を送ることに専念していた。


応援はラルトの心の中で送っていたため、その声はユキに届いていない。


もし声が届いていれば、応援しているラルトの姿にユキは暴走していただろう。ラルトを可愛がりすぎるという名の暴走を・・・・。


幸い、ラルトの応援の声が聞こえていないユキの暴走は起きない。


だが代わりに黙ってユキとダルトの会話を聞いていたラルトが暴走することとなる。


ラルトはユキが困っていた原因がなくなりそうになった時(買取金額が提示されている時点)、これでユキの困った姿を見なくてすむと思い喜んでいた。


喜びもつかの間、ギルドカードがないことでまたユキが困り始めた。


その原因は、目の前にいるダルトがユキにカードを渡し忘れたこと。


ラルトの頭の中では、ダルトの存在=ユキの困った姿の原因という式が成立した。


そしてラルトが暴走することに・・・・・


しかし、怒りを向けられているダルトは気付いていない。


その事を感じとったラルトはダルトに飛びつく体勢をとった。


「ガゥ!!」


ラルトは試験でユキに怒られたことを覚えていたため力を抑えてダルトに噛み付いた。


「っわ!?いきなりなんだ?」


ダルトは噛み付いてきたラルトを両手でキャッチ!


するとさらにラルトは怒った。


「キャンキャン!!(触るな!この問題の塊め!)」


「ユキ、何でこんなにラルトは怒ってるんだ?」


「それは・・・・・」


詳しく説明するがめんどくさかったので、適当な答えを考えているとダルトさんの手の中にいたラルトがその手に噛みつこうとしていた。


そのおかげでダルトさんの質問に対して答える必要がなくなった。


というよりは、ラルトを落ち着かせるのに苦労したので説明するということを忘れてしまっていた。


ラルトは何度ダルトから離しても、また噛み付こうとするのだ。


ユキが止めても、頭の中に「原因は排除」という言葉が貼りついている今のラルトは止まらない。


止めるために最後にとったユキの行動は・・・


「かまってくれないの?」攻撃である。簡単に言うとダルトばかり構ってないで自分も構って、と念話でラルトに送った。


すると、効果はテキメン!


今にも噛み付きそうだったラルトは、甘声を出してユキの方を向いた。


甘声を聞いたユキはラルトをモフモフし、ラルトの怒り自体を吹っ飛ばしたのであった。


ラルトをモフモフした後は、ギルドカードが手に入ったので買取の手続きを再開することにした。


「こちらのお金はすべて貯金されますか?」


そういえばさっきリーリエさん、お店でカードが使えるって言ってたけど使えないお店とかないのかな?


「あの一つ質問なんですが、カードが使えない場所とかありますか?」


「そうですね・・・この町のお店ならカードを使っていただけると思います。ただ、屋台やギルドのない村などではカードが使えない場合がありますね。」


聞いといてよかった。すべて貯金してたら危なかったよね。


「それじゃぁ、屋台で食べ物とか買いたいので、1白金貨だけ現金でそれ以外はすべて貯金でお願いします。」


「かしこまりました。少々お「ちょっと待て!」」


今まで横で手続きの様子を見ていたダルトさんが真っ青な顔をしてストップをかけてきた。


なんだろう?


「ちょ、ちょっとそこで待ってろ!すぐに戻ってくるから動くなよ。リーリエ、二人を見張っといてくれ!!」


リーリエさんにそういうと、ダルトさんはどこかへ走って行ってしまった。


「かしこまりました。ユキさんこっちに座って待っていてください。」


「はい。」


私は訳が分からないままとりあえず、リーリエさんに案内された受付の横にあるソファーに座ってラルトを膝の上にのせた。


『ただ買取をしてもらってお金を受け取るだけのはずなのに、なんでスムーズにいかないんだろう?』


「キュー?」


私とラルトは、ダルトさんが走って消えて行ったほうを眺めながら首を傾げた。







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