21 ギルドマスターは現実に戻ってきた
私はダルトさんに向かって念話を送るために自身の魔力に意識を集中させ、ダルトさんがいる方向を確認してから念話を送ろうとした。
「ちょっと待て!」
送る前に闇帝に止められてしまった。
(せっかくうまくいきそうだったのに)
私は闇帝をじっと睨んだ。
「止めたのは悪かったが、魔力多めに念話するならダルトだけに送れよ。念話に込める魔力の量によっては頭に響くからラルトも影響を受けるぞ。」
その言葉を聞いてユキは闇帝が自分を止めた理由がわかった。
ユキはラルトに言われたとおりに念話に魔力を多く乗せて今まで通りに念話を送ろうとしていた。しかし今まで通りに送ると今回の対象のダルトだけでなく、闇帝とラルトにまで念話が飛んでしまう。
それはつまり、耳元で大声を聞いて耳が痛くなるのと同じようなことが頭の中で起きてしまうということであり、その影響は対象のダルト以外の念話を受け取った闇帝とラルトにも及ぶ。
「止めてくれてありがとう。でも練習どうしよう・・・」
可愛いラルトに苦しい思いをさせずに済んだのは良かったけど、練習するつもりが、出来なくなっちゃったな。
(ダルトを現実に戻すことが念話を飛ばす理由だったはずなのだが、ユキの中で今回のことは練習に変わってしまっていた。)
「魔力量の操作と念話を飛ばす方向の操作練習ならダルトにだけ送ることで練習になるんじゃないか?」
闇帝は落ち込んでいるユキを見て、解決案を提供した。
つまり、被害がダルトにだけいくように仕向けたのであった。
しかし、闇帝も別にダルトが嫌いで仕向けたわけではなく、ただ単に自身への被害を回避しようとした行動の結果である。
それと落ち込んでいるユキを見ていると、何とか練習させてやりたいという気持ちが湧き上がってきたのであった。
闇帝のこの気持ちに名前が付くのはもう少し後の話。
「そっか!!ダルトさんにだけ送れたらいいんだね。やってみる!」
解決案がみつかり、ユキは今度こそダルトだけに念話を送ることに集中した。
『ダルトさーーん!!!!』
ユキが念話をダルトに向かって思いっきり飛ばした!
ユキが念話を送った結果は・・・・
「ギャーーーーーー!!!!?」
闇帝が想像していた通り、ダルトの頭の中ではユキの声がボリュームマックスで響いていた。あまりの声の大きさに今までいじけていたダルトは飛び上がった。
それはきれいに真っすぐと上に飛んだのであった。
ダルトの悲鳴を聞いてユキは耳が痛くなった。急いでラルトが痛がっていないか振り向いたが、闇帝とラルトは耳をふさいでいたのであった。
ユキは思った。
(予想できたなら、教えてほしかった。耳痛い・・・。)
「ユキ!もっと魔力抑えて!?」
ダルトが念話を飛ばしたユキに向かって切実な願いを言った。
頭を押さえながら・・・
ユキは念話の成功に喜び、ラルトも一回でやり遂げた主を誇らしそうに見つめ、闇帝はあきれていた。
ダルトの頭に被害はあったが、こうしてダルトを現実に戻すことが出来た。
さぁ、見習いとしての仕事の内容を聞こう。
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