15 ギルドで見習いとして働くことになった。
お待たせしてました。
ラルトはこっちを見るとダッシュで駆け寄ってきた。
『主、大丈夫ですか!?』
「えぇ、だいじょうぶよ・・・・ってそうじゃないでしょ!!あれほど気をつけなさいと言ったのに感情だけで動いたらダメでしょ!!」
『ごめんなさい。』
私は、ラルトを怒った。私のことで怒り行動してくれた気持ちは嬉しいが人間社会の中で生きていくのならラルトは今回のように暴走してはいけない。だからこそ私は叱ったのだ。
ラルトは私に怒られたことで自分のしたことをちゃんと反省しているみたい。
耳を伏せて、目をうるうるとさせてこちらを悲しそうに見ている。
「クーン。」
・・・・心を鬼にして怒ったけど悪いことをした気持ちになる。
でもこれは大切なことなのでしばらくはこのままの状態でほっとくことにした。
これからもこんなことが何回も続いたら困るしね。
私がラルトを叱っているころ、ダルトさんのところには闇帝がいてダルトさんを助けていた。
私は体に力が入るようになるとダルトさんのところに駆け寄った。
「イテテ・・・・」
「ダルトさん。大丈夫ですか?」
ダルトさんは闇帝に手を借りて腰を押さえながら立ち上がった。
「おう。腰を打っちまったがこのぐらいはしょっちゅうあることだから大丈夫だ。気にしないでくれ。」
・・・・・。こんなことが頻繁にあるってギルドマスターってそんなにしょっちゅう戦ってるの?
「そうなんですか、少し安心しました。でもラルトを止めることが出来なかったのは私の力不足が原因なので謝らせてください。すみませんでした。」
ダルトさんは気にしなくていいと言ってくれたが、こんなことになってしまったのはそもそも私の力不足が原因だから謝ることは当たり前のことだ。
「本当に気にしないでくれと言ってもひかなさそうだからな、その謝罪は受け取っとくわ。」
ダルトさんは謝罪を受け入れてくれた。
「さて先程戦ってみて分かったことがあるが、ユキは魔力もあるしセンスもあるだろうが力を使うのに慣れていないのと、そもそも戦い方が素人すぎる。それなのに使い魔のラルトの方は戦い慣れしている。これは一見バランスがいいように見えるがはっきり言うと危なすぎる。このままユキを冒険者として外に出すのはいろいろと心配だし問題がある。」
ですよね。私も頭の中ではわかっていたつもりだがわかりきっていなかった。ここまで力の差があるとバランスが悪すぎるうえに、ラルトにもしものことがあれば私は一瞬で死んでしまうだろうし、ラルトが暴走しても止めてあげることが出来ない。
どうするべきかな。ダルトさんにお願いして弟子にでもしてもらおうかな?
でもギルドマスターって忙しそうだし、誰か良い人をしょうかいしてもらうとか?
どうしようかと考えているとダルトさんが声をかけてくれた。
「ユキは誰か教われそうな人はいるか?」
私は首を振った。
「なら、冒険者見習いとしてここでしばらく働いてみないか?」
「ここで働く、ですか?」
「そうだ。ユキの魔力量とか使い魔の事とかを考えると一般の冒険者見習いコースではだめだ。それにそれだけの力を持っていながら扱いきれていないということをあまり人に知られるのは危険だ。そもそもその力ははっきり言うと隠した方がいいだろうしな。だからと言って俺はギルドマスターの仕事があるから、しょっちゅうみてやることができねぇ。だから見習いとして入って俺が信用できる奴に教えてもらいながら俺もめんどうが見やすいようにここで働いてみないかっていうことなんだが。」
そこまで考えてくれているなんて、正直言うとこんなに親切にしてもらえる裏に何かありそうな気もするのだけれど・・・。
私は初めてのことが多すぎるし、ラルトも常識とかを知らなそうだしここは頼ってみよう。
それにダルトさんの目は曇りがない。こういう目をする人は良い人が多いしね。
「ありがとうございます。お世話になります。」
私はダルトさんに頭を下げた。
「おうこれからよろしくな。」
ダルトさんは笑ってそう言ってくれた。
そういえば近くにラルトがいない。どこだろう。
周りを見渡してみるとラルトは私が怒った場所で今も悲しそうに落ち込んでいた。
さらにこちらを見てものすごく寂しそうに鳴いている。
「キューン。」
しまった忘れてた!?