第2章16
「さて、それではふらフープの講習会を始めまーす」
わあーぱちぱち
私の合図でゲオルグがすちゃっとふらフープを構えた。
「皆様もゲオルグの真似をして下さいね〜」
全員でふらフープを構え、ゲオルグに注目する。
「これは、腰の動きが肝心でな。こう、クイッとリズム良く回すのがポイントなんだ」
ゲオルグがえいっとふらフープを回し出す。
ぶんぶんぶんぶんぶんぶんぶん
シュシュシュシュシュシュシュシュ
「な、なんということでしょう……!」
「ふらフープが……見えない!」
まさに目にも留まらぬ高速回転!
私達にはゲオルグがくねくねしてる様にしか見えないなんて!
私やジュリア様たちも真似してみるが、何回か回ってもすぐに落ちてしまう。
殿下とレミアスは普段から運動をしているためか、勘がいいのか、軽々とふらフープを回しているが、さすがにゲオルグのスピードには敵わない。
「ふむ……このふらフープの外側に刃をつけたら攻防一体の武器にもなりそうだな」
ゲオルグを見つめながら、殿下が不穏な言葉を口にする。
ふらフープの周りに刃って。
なにそれこわい。
「それっ」
殿下がもはやふらフープの化身と化したゲオルグに向かって何かを投げた。
あれは……ふらフープ!
え?なんで?
「よっ」
ゲオルグは自身が輪投げの棒にでもなったかの様に、飛んできたふらフープに入り込んだ。
「はーっはっはっはっはっ!」
ゲオルグが二本のふらフープを高速回転させる。
「それっ」
今度はレミアスが投げた。
「よっ!はっはっはっ!いくらでもいけるぞ!よし、全部こい!」
これも難なく受け止める。
「えい」
「そりゃー」
「どうぞー」
「そうりゃあっ!」
ゲオルグに向かって次々とふらフープが飛んでいく。
「よっほっ!うぐっ!よしっ!」
ゲオルグの首、手などのまわりを、合計七本のふらフープがぶんぶか回る。
「うあああああ!俺に不可能はなーーーーい!!」
全身でふらフープを回すゲオルグはさながら大道芸人のようだ。
私達はその光景を固唾を飲んで見守った……!
その時。
ゲオルグの手から、首から、ふらフープが跳ね上がり、勢い良く吹き飛んできた。
「きゃああ!」
「危ない!」
隣にいた殿下が咄嗟に私を庇い、こちらに飛んできたふらフープはそのまま背後にすっ飛んでいく。
「コゼット、怪我は……」
「大丈夫ですわ、ありがとうございます……」
「ぎゃーーーー」
背後で悲鳴が聞こえ、ふらフープがばいーんと戻ってきた。
「「「「え」」」」
後ろを振り向くと、何故かエドがカエルのように伸びていた。
「エド……?なんでここに?」
「ブーツを作られるとの事だったので、ご昼食の間に呼び出したのですわ……」
横から圧力を感じる。
私は知っている。
これは決して振り向いてはいけないやつだ。
しかし圧力は増すばかり。
ついに耐えられなくなった私は、ギギギと首を動かした。
「何故、こういう事になったのでしょう?ねえ、お嬢様……」
そこには。額に青筋を浮かべ、首にふらフープをかけたシシィが笑顔で立っていた。
ものすごく怖い笑顔で。
ハハッ!こんなに怖い笑顔がこの世にあるなんて!
私、こんなの見たことない!
「こめんなさい……」
私は即座に謝った。
しかしその後、私とゲオルグはガミガミシシィの気が済むまでガミガミされたのだった。
なんで私まで?!




