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第2章13

 いつの間にか日々は過ぎ、ついに前期末試験に突入した。


 試験期間は一週間。

 歴史や文学などの座学の試験、後半は音楽やダンスなどの実技科目の試験が行われる。


 何を隠そう、私は座学は得意なので前半は楽勝だ。

 幼い頃は座って本を読むくらいしか出来なかったから。

 何故って?太ってたからね!


 反面、前世ではほとんど馴染みのなかったダンスや音楽はかなり苦労した。

 私は致命的にドンくさいため、人並みに出来るようになるまで周りよりも努力をしなければならなかった。

 人並みになったと思える今でも、その二つには苦手意識が消えない。



「はふー。緊張する……」


 今日はダンスの試験当日。

 次は私の番である。

 しかし幸運にも私のパートナーはゲオルグだ。


 ダンスのペアは成績上位者から割り振られると思っていたため、発表された時はビックリした。

 ゲオルグのダンスの腕はトップクラスなので、せいぜい真ん中くらいの成績の私と組むことは無いだろうと思っていたのだ。


「そんなに緊張しなくていいぞ。もしミスっても俺がなんとかしてやる」


 緊張する私の手をゲオルグがギュッと握ってくれて、いくらかほっとした。


「ありがとう。……でもなるべくそうならないように頑張るわ」


 ゲオルグに微笑み返した時、私達の番が来た。


 私達はホールの真ん中まで歩み出ると、二人で息を合わせて踊りだした。




 さすが、ゲオルグのリードは巧みだった。

 もともと運動が得意であるためか、足捌きにも迷いが無く動きにキレがある。

 練習で何度か踊った事があるので安心感もあり、私もミス無く踊ることが出来た。

 これなら最後まで大丈夫そうだ……と安心したのも束の間。



「大丈夫そうだな。よし、ちょっとテンポあげるぞ」


「え?!ちょ、ちょまっ」


 調子に乗ったゲオルグがステップにアレンジを加える。

 私は慌てながらも必死についていくが、ゲオルグは止まらない。

 ゲオルグのステップが加速していく。


 それにつられたのか、ピアノを弾いている教師もアレンジを加え出した。


 おお、おおおあお、おおおおおああああああ!


 私は心の中で絶叫しながらも懸命に足を動かした。

 ゲオルグにリードされ、華麗にターン!

 更にステップ!

 盛り上がるピアノ!

 何故かスピンするゲオルグ!

 え、それって私はどうするの?!

 そして感動のフィナーレ……!


 盛り上がりまくったピアノの劇的な終わりとともに、ゲオルグに促されて最後のお辞儀をした時には私は肩で息をしていた。


「素晴らしい!素晴らしいわ!感動致しました!」


 ダンスの教師の感極まった声とともに、生徒達から盛大な拍手が私達におくられた。

 ぜはぜはいう私の隣で満足気な表情で拍手に応えているゲオルグを私はギロリと睨みつけた。


 なんてことしてくれるんだ!死ぬかと思ったじゃないか!


「な……ん……じゃ……ゲホゲホ」


 文句を言いたいのに、息切れがひどすぎて声にならない。


「なんじゃ?うん、楽しかったな!」


 お前だけだーー!!

 ゲオルグの今日のおやつは抜きにしようと心に決めた。


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