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第2章10

「コゼット、踊ろう」


 殿下が私に手を差し出してくれる。

 私はその手をとり、エミリア様の弾くピアノの音に合わせてワルツを踊り始めた。


 実は殿下とダンスを踊るのは初めてだ。

 間近に迫る深い翠色の双眸に見つめられ、瞬く間に顔が赤くなり、胸が高鳴るのを感じた。


 殿下の巧みなリードのお陰か、足が自然とステップを踏む。

 握られた手が熱かった。



 しばし、時を忘れてダンスに集中する。

 まるで二人でひとつであるかのように、相手の気持ちまでわかるような錯覚に陥りそうになる。

 出来るだけ優雅にみえるように指先まで神経を行き渡らせてターンをし、手と手が再び握りあわせられる。



「ありがとうございました」


 いつの間にかエミリア様のピアノの音がやみ、マリエッタ様の声が聞こえて我に返った。


 私も慌てて殿下に礼をする。


「あ、ありがとうございました」


「こちらこそ。……とても楽しかった」


 殿下ははにかむように笑った。わたしはなんだかとても恥ずかしくなって、ドギマギしながら俯いてしまった。




「……いつまで見つめ合っているのかしら」


 ジュリア様の声で我に返った私達はパッと目を逸らし、繋いだままだった手を離した。


「殿下とコゼット様は息も合ってらして素晴らしかったですわ。そうね、コゼット様は時々ステップに迷う所がありましたが……それくらいですわね」


 ステップを踏み間違えそうになったのがバレていた……

 私は思わず苦笑いで頬に手を当てた。


 ジュリア様のダンスの腕前は学園でもトップクラスだ。

 そのため今日は先生役として来てくれている。やはり彼女の目は誤魔化せなかったか……


「そうだね。ジュリア嬢の言うようにそこを気を付ければもっといいと思う。試験の本番も私がリードならばフォローしてあげられるのにね」


 試験の時の相手役はまだ発表されていないが、普段のダンスの授業の成績を鑑みて教師が決めるらしい。

 殿下は間違いなくトップクラスなので、恐らく私と組むことはないだろう。


「マリエッタは……私ともう一度踊りましょうか。要練習だわ」


「そんなあ……ジュリアは厳しいからイヤですわ……」



 ゲオルグの隣で肩で息をしていたマリエッタ様がはあーとため息をついた。

 ダンスの間もゲオルグがちょこちょこ指導をしていたようだが、マリエッタ様は本当にダンスが苦手らしくステップの踏み間違いもかなりあったみたいだ。


「うーん、マリエッタ。焦らないのが一番だぞ。間違えても堂々としてたらバレないから」


「ゲオルグ様。バレてますよ」


「げ……」


 ゲオルグも間違えていたらしい。気付かなかった。堂々としていたからだろうか。


 エミリア様に代わって私がピアノを弾き、ゲオルグとエミリア様、ジュリア様とマリエッタ様でダンスを始めた。


 その後もパートナーを換えながら練習を続け、全員にジュリア様からの合格が出る頃には皆クタクタに疲れきっていた。




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