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第2章7

「それでは、シグノーラ秋冬物商品の販促戦略会議を行いたいと思います。まずは靴部門の新商品です」


 シグノーラでは、秋の新商品を来月から一斉に販売する。

 丁度前期末試験の頃なので私は店には来られない。そのため店舗の運営はシシィとエドに一任する予定だ。


 二人は私が不在の時もまめに連絡を取り合い、シグノーラ商会の運営を頑張ってくれているので安心して任せられる。


 エドの専門分野である靴部門では、秋冬用のブーツを展開する予定だ。

 この世界のご令嬢達はあまり乗馬はしないのだが、乗馬用ブーツも発売するつもりだ。


 あえてかなり凝った刺繍やデザインにすることで、ブーツを履きたいがために女性の乗馬人口が増えるかも、と思ってのことだ。


 乗馬をして積極的に外に出るようになれば、女性の社会進出の助けになるかも知れない。


 そのため、女性が思わず欲しくなるような美しいデザインにとことんこだわった。


「こちらが今回の目玉商品になる、乗馬用ブーツです。女性用としてデザイン性を重視しています」


 エドがブーツを取り出した。


「エド、素晴らしいわ!こんなに美しい乗馬ブーツが出来るなんて想像以上よ!」


 今日エドが持ってきてくれた試作品のブーツは赤茶色の皮を使い、後ろをリボンで編み上げる、かなり女性らしいデザインだ。

 光沢が出るまでなめした皮を小さな宝石のついたビスで留め、つま先とヒールの部分にも宝石で模様を描いている。

 クズ石を使っているため値段は少しは抑えられたが、かなりの高額商品になりそうだ。


 ブーツのふくらはぎ部分には通気性確保のための穴が開けてあり、こちらも穴が花の模様を描くようにしてもらった。穴の下にはピンクのレースがチラリと覗く。


 想像以上の可愛らしい出来に、私は感嘆のため息をもらした。

 エドも自分の作品に満足気な表情だ。



「ありがとうございます。ですが、予想通り原価が高めですね……皮もかなり上質なものを使っているので、一般向けには難しいでしょう」


「そうね。これは見本品として、あとは受注生産にしましょう。貴族のご令嬢むけね」


 乗馬ブーツの他にもファーをワンポイントにしたベルベット地のハイヒールや、ツイード調のハイヒールなどの冬向きな素材を使った新商品を用意している。




 ダイエット部門では、室内で出来るようなエクササイズグッズを考案した。


「ふっふっふ……この度開発しました新商品をご説明します!」


「わあーぱちぱち」


 シシィがおざなりな拍手をくれた。


「今回の商品は……ジャジャーン!ふーらーフーゥプーーゥ!」


「「フラフーウプ???」」


「いや、ふらフープ」


 ダイエット部門の目玉商品はふらフープである。我が家に腐るほどある竹製だ。

 軽くて丈夫!竹はうってつけの材料だった。


「……ただの輪っかにしか見えないのですが……」


 竹製の輪っかを得意気に掲げたシシィの冷たい視線が突き刺さる。


「いーやいやいや!寄ってらっしゃい見てらっしゃい!ここに取り出しましたるは魔法の輪っか!一見、ただの輪っかに見えますが、こちらに腰を通してですね!こうやって、こう……」


 ぶんぶんぶん!!

 カランカラーン


 ぶんぶんぶん!!

 カランカラーン


「……」


 ふらフープって、意外と難しいよね。

 シシィの視線で凍えそうだ。

 しかし私には秘策がある!


「……カモン!ゲオルグ!」


「よしきたぁ!」


 こんな時のためにクローゼットに隠れさせていたゲオルグが華麗に飛び出した。


「これはな、腰をこう、クイッと回すのがポイントなんだよ!」


 ぶんぶんぶんぶんぶんぶん

 ぶんぶんぶんぶんぶんぶん


 ゲオルグの華麗な腰使いでふらフープは目にも止まらぬ速さで回転する。

 いつの間に練習したのか、腕や首、挙句に足首を使ってふらフープを回しまくっている。


「きゃあああ!ゲ、ゲオルグ様!危ない!危ない!」


 シシィとエドが慌ててテーブルを部屋の隅に退避させる。

 しかし時すでに遅し。


 調子に乗ったゲオルグの足から飛び立ったふらフープは、エドの頭に突撃をかました。




「……と、まあ、こんな感じで使う道具なのですが……」


「そんな危険な道具はいけません」


 シシィの視線はすでにツンドラ地方も真っ青だ。

 エド、寝ちゃダメ!眠ったら死ぬわよ!


 しかしゲオルグとともに正座させられている私は抗議した。


「シシィ!誤解よ!用法容量……じゃない、使用法を守って正しくお使いになったら安全なダイエットグッズなのよ!」


「お嬢様、言葉がめちゃくちゃです。まあ、それはいいとしても……使用法に関しては説明が必要ですね。それに室内では危険です」


 シシィの言葉に私とゲオルグはちーんとうな垂れた。


「せっかく室内用に開発したのに……外は寒いのに……」


「はあ……それで、どんな効果があるんですか?」


「よくぞ聞いてくれました!この商品はですね!腰を使ってこの輪っかを楽しく回す事によって、ウエストまわりの贅肉にサヨナラできる魔法のアイテムなんです!もちろん!それだけではありませんよ!なんと腰痛にも効果的なんですね〜……」



 私の渾身の説明により、シシィにふらフープ販売を許可してもらえた。

 危なかった。危うく販売中止にさせられるところだった。

 最近のシシィさんは大変強いです。はい。





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