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第2章5

「なにため息ついてるんだ?」


 ゲオルグがあくびをしながらやって来た。


 ゲオルグは余裕そうね。

 いつも通りの脳筋……じゃない、能天気さだわ。

 まあ、ゲオルグはもともと運動が得意だし、ダンスもかなり上手だものね。


「ゲオルグ様。……ダンスの試験が憂鬱なのです」


「私も。いくら練習しても苦手意識が消えないわ。まして先生の前で踊るなんて緊張しますわよね」


 私達は再びはぁ、とため息をついた。


「だったら、私が教えようか?」


 ゲオルグの後ろから、王太子殿下がひょこっと顔を出した。


「よろしいのですか?」


「ああ、もちろんだ」



 私達はさっそく明日からダンスの練習をすることにした。

 結局、殿下とゲオルグに加えてジュリア様とエミリア様も参加することになった。

 アンジェとレミーエが学園を去ってからというもの、なんだかんだでこのメンバーで集まることが多い。


 あとは緑とピンクがいれば……と自分の平凡な茶色の髪を残念に思う。

 ……それを考えると、緑髪とピンク髪は奇跡的にいたのか……惜しい髪をなくした。


 ピンクの代わりは白でもいいのだが、白髪は前世からの天敵だ。

 一本抜いたら三本生えてくるなんて本当にとんでもない。



「なにをお話ししているんですの?」


 明日の予定を決めていると、プリシラ嬢がやって来た。

 背の高いゲオルグの横からぴょっこり顔を出しているのが可愛らしい。


「明日、ダンスの練習をしようと思っていて。よかったらプリシラ様もいかがですか?」


「まあ、ダンスの!そういえば試験があるんですものね。是非参加させて下さい!」


 手のひらを顔の前で合わせ、こてんと首を傾げるプリシラ嬢はリスのようでとてつもなく可愛かった。

 思わず彼女の頭をナデナデしてしまったほどだ。


 その後、学園を出てシグノーラに向かった。

 今日はジュリア様も一緒だ。

 最近知ったのだがジュリア様はかなり紅茶に詳しく、今度新発売するシグノーラのハーブティーを試飲してもらう約束なのだ。


「ジュリア様、今日はありがとうございます」


「構わないですわ。シグノーラのハーブティーは私も大好きなんですもの。こちらこそお礼を言わなければいけないくらい!」


「そうなんですか?ジュリア様にそう言って頂けるなんて光栄です!」


 ジュリア様はありとあらゆる紅茶に精通しており、紅茶マニアと言えるほどだ。

 お忍びで何度もシグノーラにも来て頂いていたそうで、たまたまシグノーラのカフェスペースに行った時に会って以来、紅茶についてのアドバイスを貰っている。


 お陰でハーブティーのクオリティがかなり上がった。

 是非アドバイザーとして正式にシグノーラに来て欲しいほどだ。


「それはそうと……コゼット様、プリシラ様にはお気をつけになった方がいいかもしれませんわ」


「え?」


 唐突なジュリア様の言葉に、私は面喰らった。

 ジュリア様は真剣な表情で続ける。


「お茶会などにお出にならないコゼット様はご存知ないでしょうが……あまりいい噂は聞かなくてよ」


「噂……ですか」


「私もあまり詳しい事は聞いていないのだけど、彼女に恋人をとられたという令嬢が何人かいるみたいよ。まあ、相手の男性が不誠実だったという事もあるのでしょうけど」


「まあ……」


 プリシラは小動物のように可憐な可愛らしい令嬢だ。

 本人に悪気が無くても男性が夢中になってしまう事もあるだろう。

 しかし、何人もとなると……


「わかりました。ありがとうございます。まあ、私に恋人はいないのですけど……」


 私の言葉に、ジュリア様は目を見開いた。


「あら、そうなの?私、てっきり殿下と想い合ってらっしゃるものと……」


「はは、そんな、恐れ多いですわ」


 殿下の事は大切な友人だと思っているが、恋人などとんでもない。

 第一、王妃としての将来なんて想像もつかない。

 私が苦笑いをしていると、ジュリア様はくすりと笑った。


「そうですの。……ですがあんまり油断をしていて、とられても知りませんわよ」


「とられるなんて……もともと私のものじゃありませんし」


 ジュリア様にそう答えながら、なんだかもやもやとした気持ちが湧いてくるのに、私は見ないふりをした。









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プリシラ嬢は、リス系小悪魔令嬢?
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