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第2章4

 焼き芋は結局、配ることが出来なかった。

 欲しいと言ってくれる方は沢山いたのだが、忠誠を誓われてはたまらない。


 仕方がないのでプリシラ嬢とゲオルグと王太子殿下や信号機令嬢達にもらってもらい、残りは持ち帰ることにした。


 やがて授業が始まる時間になり私の周りにいた令嬢達も各自の座席に戻っていった。

 今日は国の歴史の授業である。


 私は教師の話を聞きながらパラパラと教科書をめくっていた。

 幼い頃から家庭教師についてひと通りの勉強をしてきたので、授業でも取り立てて新しいことを習うことはない。

 私だけでなく、上級貴族達はほとんどがそうだろう。

 この学園での学生生活は、貴族達にとって人脈作りの側面が強い。

 そのため貴族クラスの授業は少なく、午前中で終わることがほとんどだ。

 希望する生徒は午後も授業が受けられるが、私はシグノーラに行くことが多かった。


 教科書をめくるうちに、レミーエ嬢の留学したルメリカについてのページを見つけた。


 教科書にはこう書いてあった。

『ルメリカ王国は豊富な資源の産出国であり、我が国アルトリアをはじめとした周辺諸国との交易が盛んである。商会が多くあり、商人の国としても知られている。街には多くの店が立ち並び、ルメリカの首都リンゴスタでは手に入らない物は無いとまで言われる』


 ルメリカは教科書の説明だけでもだいぶ興味深い国だった。

 ルメリカまでは馬車でひと月くらいかかるので、気軽に行ける場所ではないが是非行ってみたい。


 しかし商人の国というと、日本でいったら大阪のような感じなのだろうか。

 ……いや、ここはヨーロッパ風の国を想像したい。

 レミーエ嬢が大阪に馴染んでいる姿が想像できないからだ。むしろ馴染んで欲しくない。


「それでは今日の授業はこれで終わります。それから来月には前期末試験がありますので復習などしておいて下さい。期末試験が終わりましたら、創立祭のパーティがありますので、それを楽しみに乗り切って下さいませ」



 教師は笑顔で締めくくった。

 学期末試験だと……!


 くっ!すっかり忘れていたが、私がその程度で動じると思ったか!

 令嬢として勉強をしてきた私に死角などない!

 私はふんと胸を張った。


「このクラスは貴族クラスですので、問題はないとは思いますが……このクラスはダンス試験もあります」


 生徒達がざわめいた。

 それもそのはず。通常はダンスは期末試験にはない。



 これは特訓しなければならない……ダイエットのエクササイズで割と運動はしているからそこそこはこなせるが、もともとドンくさい私はダンスに苦手意識がある。


 基本的なステップのワルツなどはそれなりには踊れるが、夜会などにも出たことがないため自分がどの程度踊れるのかもよくわからない。

 途端に試験が不安になってきた。


 すると、後ろの席からはああ、とため息をつく声が聞こえた。

 振り向くと、マリエッタ嬢が私と同じように憂鬱そうな顔をしていた。


「ダンスの試験なんて、最悪ですわね……」


「本当に……」


 私達は顔を見合わせて、もう一度ため息をついた。


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