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 あの事件から、はや三ヶ月が経った。

 春が終わり、季節は夏から秋になろうとしていた。


 事件後、レミアスは爵位の授与と共に下賜された領地の経営や身の回りの整理などが忙しく、学園を休学している。

 手紙のやり取りはしているが、以前ほど頻繁には会えなくなってしまった。


 レミーエ様はアルトリア王国外に留学されたそうだ。

 この留学は事件の後、割とすぐに決まったらしく、レミーエ様とは出発前に一度会えたきりだった。


 直前に彼女の留学を知った私が駆けつけた時、レミーエ様はひっそりと国外に出発する馬車に乗るところだった。


「レミーエ様……!」


 私の声に振り向いたレミーエ様は、怯えるように顔を歪めた。


「コゼット!……ごめんなさい。本当にごめんなさい」


 顔をくしゃくしゃにして苦しげに呟く彼女をみて、私は思わず駆け寄ってその震える手を握りしめた。


 目を見開いたレミーエ様の瞳から、ボロボロと涙がこぼれ落ちる。


「……色々なことがあったけれど、私はこの通り元気です。誰にでも間違いはあります。外国に行かれると聞きました。でも、こうして涙を流せるレミーエ様ならどこでだって強く生きていけると信じています」


「私を……許してくれるの?あなたにひどいことをしたのに」


 レミーエ様が信じられないものを見るような顔をしている。


「ええ。とっくに許していますわ。というか最初からあまり怒ってもいなかったというか……」


 ぽりぽりと頬をかく私に、レミーエ様はぽかーんとしている。


 アルフレッド先生には腹わたが煮えくり返るほどムカついたが、自分でも不思議なほどレミーエ様に対して怒りは湧いてこなかった。


 彼女は利用されていただけだというのも勿論あるし、被害や怪我もほとんどなかったからかもしれない。



「私、やっぱりレミーエ様のこと、好きなので……。だから国外に行ってしまうのは残念ですが、お元気でいらして下さい」


 私の言葉にレミーエ様はキュッと唇を結ぶと、深々と頭を下げた。


「私の完敗ね……殿下と幸せになって」


 顔を上げた彼女は、先ほどよりすこしすっきりした表情をしていた。


「殿下と幸せになる予定は今のところないですが……そうだ、お手紙を出してもいいですか?」


「勿論よ。良かったら……もし良かったらなのだけれど。……改めて、お友達になってほしいわ」


 彼女は、躊躇いながら口にした。


「……!勿論です!レミーエ様……!」


「……お友達でしょう?レミーエ、と呼んでほしいわ」


「はい……!レミーエ!」


 私たちは互いに微笑みあった。


 今度こそ本物の友達になれたと感じたのだ。

 私達の関係は、やはり対等ではなかったのだ。

 それは互いの呼び方にもあらわれていたことだった。

 共にいることがあっても、彼女にとっても私にとっても『レミーエ様の取り巻き』でしかなかったのだ。

 十歳のあの日からは、一緒にいることも少なくなっていたけれど……

 そこには少なからず上下関係ともいえるものが存在していた。


 それが今なくなり、私達は対等な友達になったのだ。





 私はこの日、『悪役令嬢の取り巻き』をやめた。






これで第一部完となります。

ご愛読ありがとうございました。


この後、第二部ではコゼットのほのぼの?学園ライフ編が始まります。

外伝としてレミーエ様の外国ライフも予定しております。


ここまで書いてこられましたのも、応援してくださる皆様のお陰です。



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