50 ゲオルグ視点
「レミーエ……?」
コゼットとレミーエが会場の入り口の方へ消えてから随分たった。
そろそろ舞踏会も終わりかけなのに戻ってこないコゼットを探して会場内を見回していると、遅れてやって来ていた王太子殿下のそばにレミーエの姿があった。
俺は足早に近づくと、レミーエの肩をひいた。
「レミーエ、コゼットはどこに?」
「いたっ……ゲオルグ様、不躾ですことよ。殿下の御前にも関わらず」
「失礼。それで、コゼットは?」
質問に答えないレミーエにイライラしてつい口調がきつくなる。
殿下も不穏な空気を察したのか、俺たちを見つめている。
「……コゼットとは少し話してすぐに別れました。会場のどこかにいるのでは?」
俺から視線を外すレミーエは、何故か少し震えているように見える。
「いや、どこにも居なかった。いつ別れたんだ?コゼットはすぐに会場に戻ったのか?」
「っだからそう言っていますでしょう!コゼットは会場に入って行きましたわ!公爵令嬢たる私に無礼でしょう!お手をおはなし下さい!」
レミーエの声が存外響き渡り、会場内が水を打ったように静まった。
生徒達の視線がこちらに集中したため、俺は仕方なくレミーエから手を離した。
「……レミーエ、コゼットとはすぐに別れたというのは本当か?その後どこに行ったのかは知らないのだな?」
「殿下まで私の言葉をお疑いですの?……私を信じて下さらないのですね……気分が優れませんわ。失礼させて頂きます」
殿下と俺の詰問するような口調に気分を害したのか、レミーエは足早に会場を後にした。
「ゲオルグ……コゼットはいつから姿が見えないのだ?」
「……舞踏会会場に着いてすぐにレミーエに話があると言われて、それきり姿を見ていません」
殿下と話すのは久しぶりだ。
最近、不自然にコゼットを避けていたが、心配はするのか。
「殿下はコゼットを嫌って避けているのかと思ってました。心配ですか?」
「っ当たり前だ。……嫌ってなどいない。私は……だが、彼女はレミアスと……」
コゼットを避けていたのは、レミアスと?うん??
意味がよくわからないが、取り敢えず嫌いじゃないことはわかった。
「そうですか。では、俺はコゼットを探します」
「…………伯爵家に帰っているかもしれない。私が伯爵家に連絡をとろう」
俺はもう一度会場中を探したが、コゼットの姿は無かった。
コゼットは俺の馬車で一緒に会場に来たので伯爵家の馬車はない。コゼットが屋敷に帰るにも足がないはずだ。
馬車番に会場から出て行く馬車が無かったか聞くと、舞踏会の開始前に会場から出て行く馬車があったが、誰が乗っていたかはわからないという。
「はぁ、はぁ、学園のどこにもいなかった。コゼットは、伯爵家には?」
「帰っていなかった。急ぎ捜索をかけよう。私に動かせるのは私兵のみだが」
「俺は伯爵家に向かいます。もしかしたら、もう帰っているかもしれない」
俺は急いで伯爵家に馬車を走らせたが、やはりコゼットは戻っていなかった。




