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約束通り、舞踏会の前日にザムス夫人のドレスは仕上がってきた。
ザムス夫人渾身の一作であるそのドレスはとても斬新なものだった。
ドレスの生地は淡いクリーム色で、上半身の身体のラインがモロにでるフィットしたデザインだ。
宣言通り背中がグワッと開き、肩甲骨がこんにちはしている。
スカート部分は正方形の生地の真ん中を摘んで持ち上げたような作りで、丈の長い部分と短い部分があり、それらが複雑なフリルを作り出している。
そのフリルは裾に向かってグラデーションになっていて、フリルが揺れるたびに縫いこまれた細かいクリスタルがキラキラと輝いている。
そしてダンスを踊るとフリルの隙間からふくらはぎがハローする。
……これは、ありなのか?
確か、足を出したらいけないんじゃなかったっけ?
チラリとシシィを窺うと、難しい顔ながら頷いてくれたのでセーフなのか。
「……我ながら素晴らしいザマス。当日は是非、こちらのハイヒールを。シグノーラのエドさんとの合作ザマス」
差し出された靴は、ドレスと同じ布地で作られており、スワロフスキーが散りばめられているピンヒール。
芸術的なまでに美しいその靴は、殺人的に踊りにくそうだった。
「おうふ」
「ハイヒールの発案者であるお嬢様なら履きこなせるザマスよね?」
ザムス夫人のメガネがキラリと光る。
デザイナーとしての挑戦とみた。
素晴らしいドレスを仕上げてくれた夫人に敬意を表し、その勝負、受けて立つ!
「当たり前だわ!完璧に履きこなして見せましてよ!…………シシィ、湿布と包帯の準備は抜かりなくね!」
私はスカートの裾を翻してシシィに完璧な指示を出した。
「かしこまりました。骨は拾いますのでご心配いりませんわ」
明日は舞踏会。
ダイエットのエクササイズを兼ねてダンスは随分練習したのでそこそここなせる自信はある。
学園行事とはいえ舞踏会は初めてなので緊張でドキドキする。
そういえば殿下やレミアスは誰かと参加するのだろうか。
最近ほとんど話せていないし、参加するのかもわからないが、舞踏会は必ずパートナーと組まなくてはならないものではない。
懇親会の意味合いが強いため1人での参加も構わないのだ。レミーエ様達もパートナーなしでの参加だと言っていた。
私はこの舞踏会をいい機会にして、幼馴染み以外とも交流を深めたいと思っている。
入学してから今まで、何故か話しかけても逃げられることが多く幼馴染み以外とは仲良くなれていなかったのだ。
私は期待と緊張を胸に、明日に備えて早々に就寝した。




