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みんなで収穫したタケノコを厨房に運び、どんどんアク抜きしていってもらう。
時間が経つほどえぐみが増してしまうから、新鮮なうちにやってしまわないといけない。
その間、タケノコ堀りを楽しんで疲れた皆様にはお茶を振る舞った。
まあ、真剣にタケノコ掘りをしていたのはごく一部で、ほとんどの方はタケノコ見物をしていたようだが。
それを横目に、私はバリバリとタケノコの皮を剥ぐ。
新鮮なうちしか食べられない料理があるのだ。
そのために若くて細いタケノコをいくらか確保しておいた。
前世では一度食べたことがあったのだが、久しぶりにまた食べてみたかったのだ。
根元を落とし、皮を剥いたタケノコを軽くあらって、薄くスライスしてお皿に盛る。
でっきあがり〜!
3分クッキングにも満たないほど簡単だが、タケノコの刺身の完成だ。
わさび醤油で頂きたいが、残念ながら醤油もわさびもないので、塩とレモンで食べてみる。
しゃくしゃくしゃく
うーん。
りんごとなしを足して割ったみたいな感じ。
正直、そんなに美味しくない。
珍味って言われてたくらいだし、新鮮なタケノコと季節を味わう感じだね。
ひとりでしゃくしゃくしてると、ゲオルグたちがやってきた。
「コゼット、なにを食べているんです?タケノコ?」
「はい、タケノコの刺身ですよ。新鮮なうちしか味わえないんですが、珍味だしそんなに美味しくはないかも」
「さしみ?生で食べるんですね。サラダみたいなものかな」
「あ〜!よく考えたらサラダですね」
それからみんなでタケノコを食べたが、なんだか微妙。
やっぱり調理したほうが美味しいね。
そんなことをしているうちにタケノコ料理が運ばれてきた。
醤油やみりんがないので和風の料理は作れず洋風なのが残念だが、料理長が絶品タケノコ料理を開発してくれた。
タケノコのクリーム煮、タケノコの洋風炊き込みご飯、タケノコソテー……うーん、絶品!!
タケノコ掘りに参加した方々も庭で思い思いにくつろぎながらタケノコ料理を堪能していた。
レミーエ様たちもタケノコ料理を食べて元気が出てきたみたい。
「レミーエ様、マリエッタ様、タケノコ料理はどうですか?」
「コゼット、とても美味しいわ。あなたのところの料理長はさすがね」
「ありがとうございます。マリエッタ様、今日はお疲れ様でした」
「コゼット……」
落ち込んだ様子のマリエッタ様は、タケノコ料理もあまり進んでいないみたいだ。
私は一騎打ち対決に出るつもりもないが、一騎打ちでどちらかを助けるつもりもない。
特に前回、今回と続いて我が伯爵家やシグノーラが関わっているため、半主催者側ともいえる立場だ。
そもそも王太子殿下の妃候補を決める催しに、自分が王妃になる気もない上に、誰かを王妃に推したいという明確な気持ちがない私が関わる事が、怖いのだ。
ゲームと違ってやり直しがきくわけではない。
だからこそ、王妃の座を目指す人達が悔いのないように頑張ってくれたらいいと思う。
私はその戦いに敗れた令嬢たちの受け皿を作っていくのみだ。
だが、一騎打ち対決の内容がゲームと違ってきているのは気にかかる。
ゲームではまさかタケノコ対決はなかった。
恐らく私が前世の記憶を持つことによる変化だろう。
しかし、一騎打ちの内容がゲームと違って令嬢力を競うものではなくなっているだけに、令嬢の名前につく傷が軽いことは救いだろう。
そのせいか、マリエッタ様もだんだん元気が出てきた。
「コゼット様、このクリーム煮はとても美味しいですわ!我が家の料理人でも作れるかしら」
「あら、気に入っていただけて嬉しいです!ではレシピを料理長に聞いておきますわね」
その後はみんなで楽しくタケノコ料理に舌鼓を打ち、タケノコの水煮をお土産にお渡しした。
「今日は疲れたわ……」
私は自室に戻ってシシィに淹れてもらった紅茶飲んで一息ついていた。
ひとりになってベッドでごろごろしながらアルフレッド先生のことを考える。
アルフレッド先生はなんであんな事をしたんだろう?
アンジェに味方する理由がアルフレッド先生にはあるのだろうか。
考えられるのはアンジェが王妃になることでアルフレッド先生に利益があるということ。
しかし貴族の情勢をいまいち把握していない私にはそのあたりの微妙な部分はよくわからない。
今度お父様にお聞きしよう、と考えたところで私の意識は眠りの中に落ちたのだった。
いつも読んでくださりありがとうございます。
タケノコのあたりについてご批判が集まっているのに悩んでいます。
コゼット無双に変更するか、考えております。
活動報告でアンケートを取らせて頂こうと思います。




