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「ふおおおおおおお!」


「たあっ!たあっ!たあっ!」


「はーっはっはっはっ!はっはっはっ!」


 竹林に掛け声が木霊する。

 タケノコ掘りに集中し過ぎて周りの音などは何も聞こえない。五感が研ぎ澄まされ、タケノコの気配すら掴めるほどに……!はならなかったが、気が付けば台車には大量のタケノコが山積みになっていた。


 フッ私に掘れないタケノコなどない!


 しかし周りに人の気配がない。タケノコを追いかけて随分遠くまできてしまったようだ。

 遠くでトランペットの音が聞こえる。

 集合の合図だ。


 私はシシィを連れて急いで集合場所に戻った。




 集合場所にはすでにほとんどの生徒が集合していた。

 そして大量のタケノコ。


 そういえば、勝負の結果はどうなったんたろう?

 アンジェとマリエッタ嬢に目を向けた私は、驚きに目を見開いた。


 二人とも大量のタケノコを積み上げているのだが……アンジェのタケノコ山のほうがふたまわりはおおきい。


 おお……あの量には私でもかなわない。

 遊んでいるようにしか見えなかったが、あれほどのタケノコ掘りの技量を持っているとは……なかなかやるな。

 前世はタケノコ農家かなんかだったのだろうか。


 我が宿敵、アルフレッド先生は……

 え?!

 タケノコが、ない。


 アルフレッド先生は私と目があうと不敵に笑い、クイとアンジェのタケノコ山を顎で指し示した。

 まさか……

 アンジェの方を見ると、勝ち誇ったような笑みを向けられた。


 そういうことか……

 アルフレッド先生は自分のタケノコをアンジェに譲渡したのだ。

 だが私と勝負した理由がわからない。

 それにアルフレッド先生のタケノコを全部渡したとしても、あの量はないはず。

 どこからあのタケノコが……?


 周りを見渡すと、ゲオルグの姿がみえた。

 しかしゲオルグはタケノコを持っていない。

 あのゲオルグが?


 私がじっと見つめていると、すまなさそうな顔をしたゲオルグがこちらにやってきた。


「ごめんな。俺のタケノコはコゼットやろうと思ってたんたけど、お前が見つからなかったからさ。アンジェに頼まれてあげちゃったんだ」

「えっそうなんですか……それは構わないのですが、ゲオルグがアンジェを応援していたとは意外です」


 本当に意外だ。

 ゲオルグがアンジェを気に入っている様子などなかったのに。

 どちらかというと、一緒に縄跳びしたりしていたマリエッタ嬢の方がまだ仲が良いと思っていた。


 疑問に思って問いかけると、ゲオルグはキョトンとした。


「応援?なにが?」


「え。今日のアンジェさんとマリエッタ嬢の勝負でアンジェさんの味方をしたんですよね?」


「え?」


「え?」


 ゲオルグはポカーンとしている。

 まーさーかー

 頭が痛くなってきた。


「ゲオルグ。朝のサンディ先輩の説明聞いてました?」


 ゲオルグの目がものすごく泳いでいる。


「今日はタケノコの数を競う一騎打ちだったんですよ」


 ゲオルグはダラダラと汗を流している。


「アンジェさんを応援してタケノコをあげるならともかく、なにも考えずにあげるなんて……」


「ご、ごめ……」


 ゲオルグの顔色は真っ青だ。


 私ははぁ、と息を吐いた。

「私に謝っても仕方ありませんわ。今回はもう仕方ありません。ですが!次回の勝負があるのなら、審査員の1人として、対戦者のどちらを応援するかよく考えて下さいね」

「はい……」

 しゅんと肩を落としている。

 全く!


 だが、アルフレッド先生が私に勝負を挑んだ理由がなんとなく分かった。

 恐らくゲオルグからタケノコを受け取らせない事が目的だったのだろう。

 遠くに離れることまで計算にいれていたかはわからないが、真剣にタケノコ勝負をしていた私は恐らくゲオルグのタケノコを断っていただろう。



「お待たせいたしました!集計の結果を発表致します!今回の勝負!アンジェさんの勝利です!!!」


「ありがとうございまーーーす」


 サンディ先輩の声が響き、アンジェが嬉しそうに飛び跳ねている。

 マリエッタ嬢は悔しそうに顔を歪めていた。


 うーん。

 私はどちらが勝っても良かったのだが、アルフレッド先生はアンジェに勝たせたかったのだろうか。

 別に邪魔とかしないんだけどな。

 それにアルフレッド先生はすでにアンジェに攻略されているということだとは思うが、アンジェがアルフレッド先生を攻略している時間があったとは意外だ。

 いつも殿下に張り付いていると思っていた。


 でもマリエッタ嬢がかわいそうだなぁ。

 主にゲオルグのせいで。

 やっぱり勝負に負けた令嬢たちの居場所作りを進めないといけないな。


 私は決意を新たにし、フンッとタケノコを持ち上げた。

 え?なんでって?

 もちろんタケノコご飯を作るためです。

 まずはアク抜きしないとね!




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