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 会議室に静かな声が響く。


「その対決は……令嬢達にやらせるのは、どうなのか……」


 男は躊躇うように渋い表情をして首を左右に振る。

 そんな男の迷いを振り切るように、静かな説得力をもった声がかかる。


「確かに令嬢らしくはないかもしれません。ですが、殿下や審査員の御令息がたも日頃されていることですわ。殿下が令嬢の人となりを知る。それも学園生活の中で王妃候補を選ぶ理由のひとつでございます。それを考えれば……」


 女の声は切羽詰まっているようにも感じられた。


「しかし……」


「ノブレス・オブリージュ。この件には当てはまらないかもしれませんが……令嬢がたが今回の試練を経験することで、この言葉の意味の一端を理解する一助になるのではないでしょうか」


「むう……」


 男はだいぶ心を動かされているようだ。

 女はたたみかけるように言葉をつぐ。


「少なくとも、ひとりの哀れな男を救えますわ。そして私自身も」


「……わかった。対決の内容はそれにしよう。まあ、今回の一騎打ちは余興の側面も強い。王妃候補などすでにほぼ決まっているのだから。…………彼女は、一騎打ちなど挑んだりしないな?」


「大丈夫ですわ。少なくとも、今は」


「そうか。どちらにするかは……今後次第だな。私としては彼女になることを願うばかりだが」


「そうですわね。…………それでは、準備があるので失礼しますわ」


 疲れたように目をつぶった男を残して、女は静かに部屋を後にした。










「さあーーーーあ!やって参りました!今年度第2回目の一騎打ち対決!晴天にも恵まれ、一騎打ち日和だと思いませんか、コゼットさん!」


「そ、そうですわね……天気がいいことは何よりですわ。雨だと足が滑って危ないですし。それより、今回の対決……」


「その通りです!さて!今回アンジェ嬢とマリエッタ嬢にやって頂く競技を発表致します!」


 サンディ先輩の大声が青空に響き渡る。


「春爛漫!どっちがたくさん掘れるのか?!仲良くわいわいタケノコ堀り対決ーーーーー!!!!」


「「「わあーーーー!!!」」」


 我が家の竹林に集まった生徒たちから大歓声があがる。


「いや、おかしいでしょ!令嬢の対決がタケノコ堀りはおかしいでしょ!!」


「そんなことはございません!聞けば王太子殿下の最近のご趣味もタケノコ堀りだというではありませんか!御令息がたもタケノコ掘りには精通されているご様子!」


「そ、それは、まあ……」


 私のタケノコ掘りを手伝ってくれているだけだ。

 本来、王太子殿下にタケノコを掘らせるなど不敬に値するのかもしれないが、そこは友達同士のよしみだよ!という殿下の言葉に甘えてしまっている。

 なんとなく後ろめたい気持ちで目をそらす。


「しかし、ただタケノコの数を競うだけの競技ではありません!掘ったタケノコは譲渡可能とします!そしてタケノコ掘りにはここにいらっしゃる審査員の方々および生徒の皆さま全員に参加して頂きます!」


「えええ?!」


 会場からもざわめきがもれる。


 そういうことか。

 つまりこれはタケノコ堀りにかこつけた人心掌握力対決ってことね。

 それにしても、タケノコ堀りじゃないといけなかったのか。

 なにもこんな泥くさいことじゃなくても……

 他になんか無かったのか。


 いつもタケノコを掘っている私は泥くさいのは慣れているけど、他の貴族の方々はそうではないだろうに……気の毒に。



「それでは詳しいルールをご説明致します!」


 サンディ先輩がタケノコ堀りのルールを説明し始めた。


 それによると、タケノコを掘るのは参加者本人のみ。

 生徒一人につき学園側から一人の従者兼護衛が付けられるが、従者にタケノコを掘らせるのは厳禁。持たせるのは可。

 タケノコを盗んだり奪ったりした場合、失格およびタケノコ没収。

 タケノコは誰に譲っても構わない。

 また、ポイントになるタケノコは長さ二十センチ以上のもののみで、掘り出す時に誤って傷付けてしまう以外にタケノコを傷つける行為は禁止。



 などなど。意外に細かくルールが決められていて驚いたが、つまり不正はダメよ、食べ物は大事にしましょうってことね。


 掘り出されたタケノコは学園が一括で買い取ってくれるらしい。

 ありがたやー


 サンディ先輩の説明が終わると、生徒たちにそれぞれ作業着が配られ、従者と引き合わされていた。

 私も作業着に着替える。


「それでは、対戦者のご紹介をいたします!」


 サンディ先輩の声で二人の令嬢が前に進み出た。


「まずは前回の対決でもお馴染み!赤い作業着のアンジェ嬢ー!!!」


 アンジェは遠目にも色鮮やかな赤い作業着を着ている。

 ぺこりと軽く頭を下げた。


「ひとよんで黄色のマリエッタ!黄色い作業着のマリエッタ嬢ー!!!!」

 マリエッタは物凄く黄色い作業着だ。頭も黄色いから目がチカチカする。

 優雅にお辞儀をしてみせたが、普段スカートをつまむその手は作業着の裾をつかんでいる。



「もちろん審査員の皆様方にもタケノコ堀りにご参加頂きます!それでは、タケノコ堀り、スターーーートーーーーーーーーーー!」


「「「おおおおおおお!」」」




 盛大なファンファーレとともに、タケノコ掘り対決が幕を開けた。


 どうしてこうなった。

誤字脱字、たけのこの長さを20センチに変更致しました。

いつもご指摘ありがとうございます。


ルールを変更しました。

審査員の4人は参加可能ですので、先生も参加可能となっております、

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竹の子掘り…ずいぶん昔にやりました(自然薯掘りもね)
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