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36

 一騎打ち勝負はアンジェの勝利で終わった。

 次は私の番なのだろうか。

 でもまさか私から勝負を挑むわけがない。

 そう。私は気付いてしまったのだ。


 勝負しなければ負けないということに……!


 しかし最後のアンジェの目が気になる。

 あんなに睨まれるようなことをしただろうか。

 同じ転生者同士、仲良くしてもいいような気がするのにな。

 今度お茶にでも誘ってみようか。



 講堂から出てテラスでボケーっとしていると、殿下たち3人がやってきた。


「ここにいたのか」


「ええ。休んでいましたの。皆さんもお疲れさまです。お茶をどうぞ」


 私は薄くスライスした木で作ったコップを取り出すと、持参していた水筒から麦茶をそそいだ。


 これはピクニック用に開発したアイテムだ。

 ピクニックに毎回ティーカップを持っていくのは割れそうで怖いし。こっちのほうが軽いし。


 しかし、王太子殿下にそんな粗末な器で飲み物をお出しできません!とメイドたちに拒否され、日の目をみるのは今回が初だ。


 取り出したコップに殿下とレミアスは目を丸くしている。


「これは……木か?」


「素晴らしい薄さですね。それに持ちやすくて軽い!」


「ティーカップは持ち歩きに不便ですからね。こっちの方がいいでしょう?」


 あー、麦茶が染み渡るわー。

 一気に麦茶を飲み干したゲオルグにおかわりを注いであげる。


「その緑の筒はなんだ?」


「水筒ですよー。竹ってご存知ですか?東方の植物の……」


「ああ。コゼットの家のカレサーンスイにある植物だろう?」


「あれですか!あの緑の……!」


 この水筒は竹でできている。アオダーケフミの件で竹のことを思い出してから、お父様に頼んで探してもらったのだ。この世界の竹は成長がものすごく早くて、いまでは我が家の庭に竹林が出来ている。お陰でタケノコも掘り放題だ。


「竹は中で節にわかれているので、水筒にはもってこいなんですのよ。しかも軽くて丈夫!」


 ゲオルグにまたおかわりを注いでやる。


「素晴らしい……!王国軍に取り入れたいくらいだ!」


「本当ですね!私も欲しいです」


「あ、俺も欲しいー」


「いいですよ〜竹はいくらでも生えるので、逆に持って行って欲しいくらいです」

 そう。竹はどんどん増えるから、我が家の庭が竹林に侵食されつつあり、ボブじいさんが毎年タケノコ掘りで大変なのだ。

 じいさん自身はタケノコ掘りでタケノコホリデーとか喜んでるけど。今年の春は腰を痛めて本当にタケノコホリデーをとるはめになっていた。



「それで、一騎打ちの審査員はどうでした?」


「ああ……」


 全員に竹の水筒を作る約束をしてから、気になっていたことを聞いてみる。

 しかし何故か殿下が疲れた顔をしてため息をついた。


「アンジェ嬢なんだがな、何故かずっと顔を凝視されて、怖かったのだ……」


「殿下の時はすごかったよな。俺も最初は毛穴まで見られてんじゃないかと思ったけど、すぐに普通になったし」


「私も穴が開くかと思いました」


 アンジェはダンスの間中、殿下を凝視していたらしい。

 それは疲れるだろうなぁ……

 鼻毛でも出てたとか?

 殿下の鼻毛とか想像つかないけど。

 もし出てたら侍女とかが処理してくれるんだろうか。


 思わず殿下の鼻の穴を凝視した。

 ふむ。出てないな。


「コ、コゼット、そんな近くで見つめないでくれ」


「あら、失礼いたしました。安心してください!鼻毛は出てませんよ!」


「ありがとう……」


 何故か殿下がガックリと肩を落とした。


「コゼット、女が鼻毛とかいうのはよくないと思う」


 ゲオルグに突っ込まれてしまった。

 そうか。確かに令嬢は鼻毛とかいわないよね。


「……お鼻の……毛?」


「……うーん」


 ゲオルグと一緒に考えてみたが、いい言い方は思いつかなかった。




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