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「ふうーーー。シシィ、どう?おかしくない?」


 私は今日、何度目になるかわからない質問をした。

 鏡の前で色んな角度から確認する。


「はいはい、おかしいところなんてありませんよ。よくお似合いです」


 シシィの返事もだんだんおざなりになってきた。



 シシィには申し訳ないが、私にも事情があるのだ。

 今日はアルトリア学園への入学式。

 今日の入学式で、本格的にゲームが開始する。


 私との一騎打ち……チュートリアルは、恐らく入学式からの一ヶ月以内に行われる。

 ゲームではチュートリアルの明確な日時は示されていなかったが、五月頭に行われる新入生歓迎の舞踏会より前にイベントがあったはずだからだ。


 さすがに入学式にイベントが起こることはないと思うが……警戒しておくにこしたことはない。


 一騎打ちでは、容姿も審査対象になるのだ。

 気を抜いた服装でいくわけにはいかない。


 しかし、私に前世の記憶があるせいか、ゲームの登場人物たちに変化が生じているかもしれない。

 一度、この乙女ゲームの攻略対象者たちを整理してみよう。


 レオンハルト・アルトリア

 繊細な美貌をもつアルトリア王国の王太子殿下だ。

 優しく穏やかな気性だが、正義感が強いようだ。

 主人公のアンジェをなにかと気にかける……はずだが、最初の頃以来、あまり気にしているところを見たことがない。

 まあ、学園にはいったらそのうち気にかけ出すのだろう。

 その正義感の強さゆえに父王に反発を覚えているが、アンジェと結ばれるために苦難を乗り越えていくうちに、清濁併せ呑むということを理解して成長していく。



 ゲオルグ・レイニード

 騎士団団長であるレイニード伯爵の息子。

 活発で武芸に秀でている。趣味は鍛錬。

 確かゲームではレミーエ様に淡い恋心をいだいていたが、途中で打ち砕かれていたはずだ。


「私に筋肉バカは似合いませんことよ!オーッホッホッホッホッ!」


 という台詞を覚えている。レミーエ様に振られたところをアンジェに慰められ、ひたむきに頑張るアンジェと一緒にいるうちに自信を取り戻していく。

 ゲオルグはレミーエ様に恋心を抱いているのだろうか。

 全くそうはみえないが、心の中はわからない。恐らく胸に秘めているのだろう。



 レミアス・ドランジュ

 宰相でもあるドランジュ公爵の子息。

 レミーエ様の兄上でもある。私たちより一つ年上のため、すでに学園に入学している。

 確かゲームでは割と陰気で不健康な病弱キャラクターで、主人公アンジェがお弁当を食べさせたりなにかと世話を焼いていくうちに心を開いていくストーリーだった。

 彼が一番変わっているかもしれない。

 不健康なことが見逃せなかった私が、レミアスを健康ピッチピチにしてしまったからだ。

 いまの彼は以前の不健康さや陰気さの影も形もなく、生来持っていた類い稀な美貌に磨きがかかっている。

 美しすぎて横に並びたくない……。



 そして最後の攻略対象者には、まだ出会っていない。

 学園の教師を務める若き侯爵である。

 名前はアルフレッド・グランシール。

 彼については名前以外はよくわからない。攻略が難しくて娘がわめいていた記憶があるので、まだ攻略出来ていなかったんだろう。


 攻略対象者は以上の四名だ。

 こうして考えてみると、レミアス以外はあまり変わっていないな。


 アルフレッド以外の三人とは仲良くしてもらっているが、一騎打ちの投票で私に票を入れてくれるかどうかはわからない。

 とりあえずダイエットには成功したと思うから、容姿の点はゲームよりもあがっているとは思うが……油断は禁物だ。

 女子修道院なんてまっぴらだしね!

 あれ、でも、もし結婚出来なかったらシグノーラもあるし、一人で生きていけばいいんじゃないのかな?

 私はその可能性を考えてもみなかったことに愕然とした。


「ねえ、シシィ!結婚出来なかった貴族の女性はいるのかしら?というか、結婚しなかった場合とか!」


「結婚出来なかった女性は総じて女子修道院にはいられるのがこの国の慣例です。しかし、女子修道院を嫌がって入られなかった女性もおられます」


「その女性はどうなさったのかしら?」


「国外に出て行かれました。その後はわかりかねます。平民ならいざ知らず、貴族の女性で結婚出来ないのは恥ですからね。国内には居場所がなかったのでしょう」


 なん……だと!

 結婚出来なかったら国外に逃亡せねばならんのか。

 それはイヤだなぁ。優しい両親もいるし、友達も出来たし、なんだかんだ楽しいのに。


 私がうんうん唸っていると、シシィが優しく慰めてくれた。


「大丈夫ですよ、お嬢様。ダイエットに成功されて、こんなに変わったじゃないですか。自信を持って下さい!それに、お嬢様はエーデルワイス伯爵家の一人娘!旦那様が必ずいいお婿さんを連れてきてくれますよ!」


 そうだ!大丈夫だ!私にはお父様がついている!

 私は自分を奮い立たせると、学園指定のカバンを握りしめた。





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