表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/181

26

「ふふふんふーんふんふふふーん♪」


 私は今日もシグノーラに来ていた。


 今日は新商品の発売日なのである。


 シグノーラが満を持して紹介する、新商品……!


 その名も……


「アオダーケフミ〜!そして縄跳び!!」


 侮るなかれ。まずこのアオダーケフミ、つまり青竹踏みだが、ここアルトリア王国には青竹がないのだ。

 というか竹がない。当然タケノコもない……とても残念だ。

 そのため、この青竹踏みは木を加工して作っている。


 つまり竹でもなんでもないのだが、このアイテムに青竹踏み以外の名前をつけることは元日本人として譲れなかったのだ。


 ちなみに名前は横文字風にアレンジしてある。

 シシィに初めて青竹踏みといった時に


「アオダーケフミ?」


 と聞き返された事が由来だ。


 縄跳びはまんま縄跳びである。

 つまり縄である。

 しかし!数多のボクサーが縄跳びで減量を行っているように、縄跳びはダイエットにおいて大きな効果を発揮するはず!(多分)

 しかも省スペースで持ち運びにも優れているためどこででもエクササイズが可能……!!

 まさに完璧といっても過言ではない。


 まあ、貴族や商家のご令嬢方に省スペースは必要ないかもしれないが……。


 とにかく、この世界において画期的な新商品だと自負している。


 この商品の発売を期にシグノーラの一画にダイエットコーナーを改めて設置した。

 なんだか高級靴店とかけ離れてきた気がするので、売れ筋に乗ってきたら他に店舗を構えた方がいいかもしれない。



 私が自信満々でダイエット商品コーナーに向かうと、そこには縄跳びを熱い眼差しで見つめる1人の少年がいた。



「……ゲオルグ様?」


「縄跳び……手で紐を持って跳ぶ……?腕と足を中心とした全身運動……」


「ゲオルグ様」


「全身のバネを鍛える……!しかし具体的な跳び方がわからない!!」


「お見せしましょうか」


「お願いします!……って、コゼット嬢ではないか」


 私は縄跳びを手に取ると、ゲオルグを外に誘った。


「ちょっと離れてみていて下さいね」


 ひょんひょんひょんひょんひょんひょんひょんひょんひょんひょん


「これが基本の跳び方です。応用で……」


 ひょひょひょん ひょひょひょん ずでーー


「二重跳び……いたたた」


 うーん、二重跳びは難しい。

 前世でも2回くらいしか出来なかったが、生まれ変わっても出来ない。呪いだろうか。

 しかし、あまりに画期的すぎて説明書だけでは跳び方がわかりづらいかもしれない。

 定期的にデモンストレーションを行うなどした方がいいかな。


「ふむ、二重跳びか。ちょっと貸してみろ」


 ゲオルグ様は私から縄跳びを受け取ると跳び始めた。

 ふふーん、二重跳びは甘くなくってよ!

 二重跳びの洗礼を受けるがいい!


 ひょんひょんひょんひょんひょん

 ひょひょひょん ひょひょひょん ひょひょひょん

 ひょひょひょひょん ひょひょひょひょん ひょひょひょひょん


 なん……だと!!!

 あれは、三重跳び……!!!

 こやつ……できる!!


 私は愕然と目を見開いた。

 まさか三重跳びまで楽々こなすとは思いもよらなかった。


「他には技はないのか?」


 技……?


「オーホホホ!あなたにこれが出来るかしら?!必殺……!あや跳び!!」


 ひょんしゅっ ひょんしゅっ ひょんしゅっ


「ふっ……あや跳びか……俺に不可能という文字はない!!」


 ひょひょんしゅっ ひょひょんしゅっ ひょひょんしゅっ


 二重あや跳び……またの名をはやぶさだと……!!!

 くっ……!


 私はがくりと膝をついた。


「私の負けだわ……まさか、はやぶさまで出来るなんて……あなたはまさに縄跳びの申し子……縄跳びのために産まれてきたようなひとね」


 私の完敗だ……私は鈍臭いのだ。はやぶさなど出来る訳がない。


「ふっ……また勝ってしまった。負けの味が知りたいものだな!ハーッハッハッハッ!」


 ゲオルグ様が高笑いを放つ。


「くぅ……仕方がないわね。ゲオルグ様!あなたに縄跳びPR大使の座を譲るわ……」


「謹んで拝命しよう。……ところでピーアールとはなんだ」


 己の力を振り絞って戦った私たちの周りには人垣が出来ていて、検討を讃えて温かい拍手がわいた。


 私はキッと顔を上げ、深く息を吸い込んだ。





「さあさあお立会いの皆様!今日はようこそおいで下さいました!こちらが本日の目玉商品、縄跳びでございます!こちらの縄跳びは誰でも手軽に全身運動を行う事ができます!使い方がわからないって?大丈夫です!誰でも簡単に行えます!さあ、アシスタントのゲオルグさん!まずは基本の跳び方から!」


「え?お、おう」


 ひょんひょんひょん


「この運動を続けていくことも出来ますし、負荷を上げていくこともできます!アシスタントのゲオルグさん、次は二重跳びです」


「え?お、おう」


 ひょひょひょん ひょひょひょん






 ゲオルグ様のお陰で、縄跳びは飛ぶように売れた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ