シグノーラ開店!シシィ視点
「「「いらっしゃいませ!」」」
開店時間になり玄関扉を開くと、かなりの人数のお客様で玄関前はいっぱいになっていた。
店の周りには馬車がたくさん停まっている。
近隣の店の迷惑になるので、店員が慌てて馬車を別の場所に誘導する。
お客様は比較的若い年齢層の令嬢方が多く、お友達同士で誘い合って来ているようだった。
ほとんどが子爵や男爵令嬢などの身分的には低めの家柄の令嬢で、そうでない方も貴族でなく商人の娘らしい方々が多いように思う。
「これがハイヒール!綺麗なかたちねぇ」
「こちらの靴もリボンがとっても可愛いわ!」
「バランスシューズ……歩くだけで美脚になれるですって?!なんてこと……!!」
「トレーニングチューブ……?教本が……ふむ……」
並べてある見本品を手にとってとても楽しそうに笑いあう令嬢方をみて、私も嬉しくなって頬が緩んだ。
お嬢様のデザインやアイデアが認められるのはとても嬉しい。
忙しくてついつい口調がきつくなって、今も奥に追いやってしまったけれど、お嬢様が頑張っていたのは知っている。
まったく、お嬢様のくせに私たちに気を使って、下働きみたいなことまでしようとするんだから!
まったく…………可愛いんだから!
お茶の淹れ方だったり、時々妙に上手にこなす事もあるけれど、まだ十歳で小さいくせに沢山のティーカップを運ぼうとしたりして、結局大失敗して。
でもそんな失敗も、お嬢様の優しい気持ちがみえるものばかりだったから、みんな嬉しくなってつい甘くなってしまったが……
今日は開店初日。
失敗は許されないのだ。
だから心を鬼にして奥に追いやったのだ。
なのに……
「そうなんです!こちら最高級の絹地を使用しておりまして、職人が丁寧に手作業でひとつひとつ作っております!見てください、この光沢!実際にいま私も履いているんですけどね、履き心地が最高なんですね〜これならいくらでも踊れます!こちらの商品がなんと……」
はあああ……
私は特大のため息をついた。
短くて申し訳ないですm(_ _)m




