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 王太子殿下とのお話を終えてテラスに戻ると、すでにお茶会は終わりかけの雰囲気になっていた。

 存外長く話してしまったようだ。


 殿下もこんなに長く話すつもりはなかったらしく、続きはまた後日改めて、というと急いで席に戻っていった。


 それにしても、難しい話を聞きすぎて大変疲れた。

 家に帰ったらお父様に聞きたいことが沢山あるが、とりあえず今日はもういいや。


 私はそうそうに帰宅することにした。





 門から家に入っていくと、車寄せには沢山の馬車が並んでいた。

 なにこれ……今日はなにかあるのかしら。


 馬車を降りて玄関にはいると、シシィが待ち構えていた。


「おかえりなさいませ、お嬢様。大変です!」


「ただいまシシィ。なんだかお客様が沢山見えていらっしゃるみたいだけど……今日はなにかあったかしら?」


 普段は割と冷静なシシィがこんなに慌てているのは珍しい。ドキドキしながら先を促してみる。


「バランスシューズの注文が殺到していまして……しかもなぜか口々に、本日中の注文なら……とか、二足買うともう一足ついてくる、とか口走っていまして。公爵家から男爵家、はては市井の商人までの使いの方で通用門までいっぱいです!」


「ええええええええ!」


「旦那様と奥様も対応して下さっていて、靴職人のエドも呼び出して対応させていますが、あまりの注文の数でもう……」


 シシィが涙目だ。

 私はヨシヨシとシシィの肩を撫でて落ち着かせる。


「お客様のお名前とご希望を伺って今日は帰って頂きましょう。後日改めてご注文をお伺いにいくとお伝えしてね。私は着替えたらお父様達のところへ行くわ」


「かしこまりました!」


 そういうとシシィは急いで身を翻した。


「大変なことになったわ。今後の対応を考えなきゃ」


 私も急いで自室に向かった。





 対応が終わってやっと落ち着くと、すでにだいぶ夜もふけていた。お父様達も疲れ果てたようで今日は早々に寝室へ下がられた。

 いままで全くといっていいほど売れなかったバランスシューズの注文殺到には驚いたが、私の自信作であるバランスシューズが世に認められたようでとても嬉しい。

 しかしだんだん商売の規模が大きくなってきたので、今までシシィとエドに任せていたシグノーラが回らなくなってきた。


「シシィ!商会を設立するわ!そこでシグノーラの靴販売を行うことにしましょう」


「商会を……それは……助かります……」


 お客様の対応に追われ、走り回っていたシシィは息も絶え絶えだ。

 私のソファに座らせてあげると、失礼します、といってひじ掛けにぐでっとした。心なしか白目をむいている。


「だ、大丈夫?お茶いれましょうか?」


「いえ、お嬢様にお茶をいれて頂くなど……」


 ぐでぐでしながら遠慮しているが、ここまでぐでぐでしていたら、すでにお嬢様もなにもないと思う。


「遠慮しないで。いまはこの部屋に二人きりなんだし、私にもお茶くらいいれられるのよ?」


「私もいます……」


「おわっ」


 気付かなかった。部屋の隅の絨毯の上に、エドが死体のように転がっていた。


「エド……いたの……」


「はい……ご報告にあがろうとして……力尽きました」


「お疲れ様。とりあえず今日はお茶を飲んだら帰ったほうがいいわ。商会設立に関してはまたエドにも頑張ってもらわないといけないけれど、その話は明日にしましょう」


 私は手早くお茶を入れると、戸棚に隠してあったお茶菓子と一緒に出した。


「そんなところにお菓子を隠して……お茶、美味しいですね」


 しまった。夜食に隠しておいたのがばれた。


「本当だ、お茶を入れるのがお上手なんですね。」


 エドがお茶を褒めてくれたので、便乗してごまかすことにする。


「うふふ、庭のハーブで作ったの。リラックス効果があるハーブティーよ」


 ボブじいさんと庭いじりしているときに見つけたのだ。こちらの世界では紅茶が主流で、ハーブティーの類はあまり飲まれていないようだったので自作した。

 元主婦なんだからお茶を淹れるのなんてお茶の子さいさいだ。

 お茶だけに。


「お嬢様!このハーブティー?というものも売れますよ!とても美味しいです」


「あらそう?ならこれも商会の商品にしようかしら」


「でしたら……」


 三人で商会の構想を練っているうちに随分遅くなってしまったので、話を切り上げて明日また相談することにした。




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