表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/181

1

「アナタ!あたくしの言っていることがわかっていて?!早くここから立ち去りなさい!」


 豪奢な金髪を見事な縦ロールに巻いた、年の割に背の高い少女が、腰に手を当てた凛々しいポーズで仁王立ちしている。

 声を張り上げながら指差す先には、おそらくピンクの髪をふわふわさせた、可憐な少女が座り込んでいる。


 なぜおそらくなのかというと、私にはこの金髪縦ロール……もとい、公爵令嬢レミーエ様の後ろ姿しかみえないからだ。

 私こと、伯爵令嬢コゼットは、レミーエ様の取り巻きの中でも下っ端の方で、彼女の取り巻き筆頭の三人の令嬢の後ろが定位置である。


  このお三方はそれぞれ侯爵令嬢ジュリア様、伯爵令嬢エミリア様、子爵令嬢マリエッタ様とおっしゃって、レミーエ様を筆頭に悪役令嬢の第一の配下三人衆とでもいえる立場なのである。

 髪の色はそれぞれ赤、青、黄色と信号機のようなわかりやすさで、あとはピンクと緑さえ加わればナントカ戦隊が完成するのに……と残念で仕方がない。


 ハッ!この、さっきからレミーエ様の前でカタカタ小動物のように震えている美少女を加えれば……

 レミーエ様とその取り巻き三人衆の背後から少し位置をずらして様子見しながら物思いにふけっていると、いきなり腕を引っ掴まれた。


「ちょっと!コゼットもなにか言ってやりなさいよ!ここは貴女の花畑でしょう?!」


「へ、あ、は……」


 突然レミーエ様に前に押し出された私は、目を白黒させながらうずくまるピンク色の少女と対峙した。


 そう、ここは私の花畑なのである。

 伯爵令嬢にもかかわらず園芸が趣味の私は、伯爵であるお父様にお願いして自分専用の花畑を作っていたのだ。

 5歳からコツコツと育てた花畑は、庭師のボブじいさんの助力の甲斐あって、10歳のいまではいっぱしの庭園といえるまでになっていた。


 今日は、自慢の庭園をお披露目するためのお茶会を開いていたのだ。

 伯爵令嬢である私のお茶会には、なんと同い年である王太子様までいらしている。

 招待状を頑張って書いた甲斐があった……と、またしても自分の世界に浸っていると、レミーエ様の苛立った声が爆発した。


「ちょっと!コゼット!聞いてるの!自分の世界に入らないでちょうだい!」


 ハッ!危ない危ない!

 私にはこうして考え事をすると、ぼーっとしてしまうクセがあるのだ。いかんいかん。


 私はあらためて目の前の少女をまじまじと見つめた。


 ふわふわのピンク色の髪におおわれた顔は思った通り可憐だが、空色の瞳は意外なことに挑戦的にギラギラと光っていた。

 彼女の足元にはたくさんの白い花が落ちており、その可憐な容姿をさらに引き立てていた。

 レミーエ様に責められて震えていると思ったのだが、どうやら彼女は思った以上に肝が据わっているようだ。


「コゼット?ふーん、アンタ、コゼットっていうんだ。ゲームじゃ名前も出てこなかったから、知らなかったわ」

 ポロリと口からすべり出た言葉を耳にして、私は驚愕に目を見開いた。

「あなたは……誰?」

 私がようやく口にできたのは、そんな言葉だけだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ