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第4章10

「そういえば、アンジェの様子はどうですか?大変な事件に巻き込まれたんだもの、体調を崩していたりしませんか?」

ガールズトークがひと段落した頃、ずっと気になっていたことをやっと尋ねることができた。

窺うように息を詰めて返答を待つ私に、レミーエとジュリア様はクスリと笑みを漏らす。

「ジュリア様?」

訝しげに目を見開いていると、二人はさもおかしいといった様子で笑い出した。

「ふふ、ごめんなさい。貴女だって大変だったっていうのに、またひとの心配ばかりしているから……」

「本当よ。まあ、それがコゼットの良いところなんだけれど!」

「っ!もう、レミーエもジュリア様も、からかわないでください!」

顔を赤くして抗議すると、二人はやっと笑いをおさめてくれた。

全く、からかってばかりなんだから!

「アンジェは元気にしているわ。むしろ、憧れの人に会えたってとっても嬉しそうだったわね」

「ああ……ハットリさんですか?」

私の脳裏に、忍者のコスプレ……じゃなかった、衣装を見にまとった奇妙な語尾の青年の姿がよみがえる。

「そうそう!なんだか不思議な方よねえ。風のように現れて、煙を出して消えていったのよ。煙たくって、換気が大変だったわ」


……室内で煙玉はどうかと思うのよ、ハットリさん……


「確か、モンジャっていうのよね?」

「美味しそうだな!……いえ、失礼しました。確か、ニンジャだったかと」

「ニンジャねえ……闇に生きる定めの身でゴザルーとか言ってたけれど、とても闇には紛れられそうにない衣装よね」

ミカエルの指示によるものか、アンジェの様子を見に現れたらしいハットリさん。

今朝は緑とオレンジのマーブル模様の忍者服だったらしい。

主従ともに、一度自分のセンスというものを見直して欲しいと切に願うコゼットであった。


「……ま、まあでも、アンジェが元気で安心しました」

「そうね、皆んなが無事で、本当に良かったわ」

ほっと息を吐き、冷めかけた紅茶で喉を潤そうとしたその時……中庭を囲む回廊の柱の間を、鮮やかなエメラルドグリーンがよぎった気がした。

「え……?」

「どうしたの、コゼット」


エメラルドグリーン……蛍光グリーンとも言えるその色は、私の中の嫌な思い出を呼び覚まし、ゾクリと背筋に冷たいものが走る。

しかし、じっと柱を注視してみても、そこから人影が現れることはなかった。


「ねえ、コゼット?本当にどうかしたの?」

「え、あ、レミーエ……」

こちらを心配げに覗き込むレミーエの声に、私はようやく柱から目線を動かすことができた。

「あ、な、なんでもないの。ちょっと、ぼーっとしてしまって」

あの色は、私以上にレミーエには嫌な色だろう……いえ、色ではなく、あの色をまとった人物が。

「……やっぱり少し、疲れているのかもしれないわ。今日はもう休もうかしら」

「そうね、押しかけて長居をしてしまってごめんなさい」

「また様子を見に来るわ。ゆっくりお休みになってね」

私は曖昧に微笑み、お見舞いのお礼を告げて二人を見送ったのだった。

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