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第4章7

「ルメリカの王位継承についてはあまり知らないの、ごめんなさい」

「いや、ゴメン。おかしな事を聞いたね。王位継承自体はそんなにアルトリアと違うわけじゃない。ただ、今のルメリカだと少し事情が複雑でネ」

「複雑、というと……」

ミカエルはひとつ肩をすくめると、言葉を続けた。

「知っての通り、僕には配偶者はおろか、子供がいない」

「ええ」

「エリオットが王位継承権を放棄した今、第一位は繰り上がりでガブリエラになったんだ」

「そうね」

国王陛下の妹姫に王位継承権がうつるのは、恐らく普通……というか、よくあることだと思う。

まあ、アルトリアのことくらいしかわからないんだけど……

「だから僕になにかがあって国王を続けられなくなった場合……ガブリエラの配偶者が王位につくことになるんだ」

「うんう……んんん?」

サラリと話すミカエルにつられて聞き流しそうになっちゃったけど……つまり、女は王位につけないってことなのかしら。

継承権をもつ王女の配偶者が王になる……女王制度がないなら、それも仕方ない事なのかもしれないけれど。

でもそれならガブリエラに王位継承権があるのもおかしな話ね。

でも確か、古代エジプトでは王位継承権は女性がもって、その配偶者が王になったというし……そんな感じなのかしら。


「ルメリカでは、女王は認められないのね」

「女王?……なるほど、考えても見なかったヨ。王位には男がつくものだと思い込んでた」


私の言葉に、ミカエルは大きく瞳を見開いて、瞬きを繰り返した。

アルトリアでも女王がいたという記録はないし、こちらの世界ではあまりない事なのかしら。


「女王か……考えてみてもいいかもしれない! コゼット、ありがとう!ハハッ!」

「え? ど、どういたしまして?」


やけに嬉しそうに礼を言うと、ミカエルはサッと席を立った。


「あら、もう行くの?」

「ウン、ごめんね!また来るよ。さみしいとは思うけど、泣かないでネ」

「泣かないわよ!」


晴れやかに笑ったミカエルは、パチリとウインクをしてから部屋を出て行った。





「女王ですか……コゼットはまた、柔軟な発想をしますね。私も考えてもみませんでしたよ」

「だな!でも女王ってのも面白いかもしれねーな!」


ポカポカとした陽の射すルメリカ城の中庭でテーブルを囲んでいるのは、レミアスとゲオルグと私。

友人達の様子が気になり、彼らの部屋を訪ねようとしていた時、ちょうどレミアス達からもお茶のお誘いがあったのだ。

本当は殿下ともお話ししたかったんだけど、なんだか忙しいみたい。

気楽な身分の私たちと違って、ミカエルのお見舞いでルメリカを訪れた殿下には、公務が目白推しみたいなのよね。

せっかく久しぶりにお会いできたのに、なんだか寂し……ゲフンゴホン!


「でも確かに女王が認められるようになれば、妹姫の周りも落ち着くかもしれませんね」


神妙な顔つきでウンウンと頷くレミアスだったが……さっぱり事情がわからない私とゲオルグは、揃って首を傾げた。


「落ち着く? ガブリエラ様に何かあったの?」

「何かあったかといえばありましたし、なかったかといえばなかったですね」

「あーっ!もうまどろっこしい!レミアス!はっきり言えよ!」

「ああ……これは失礼しました。そうですね、つまり、妹姫……ガブリエラ姫は、非常に微妙な立場にいるんです」

「権力争いってこと?」


眉をひそめる私の言葉に、レミアスは真剣な顔つきで頷いた。


「ええ。婿入りという形とはいえ、王位が欲しい貴族にとっては何としても獲得したい相手。ですが同時に、王家を信奉する貴族にとって、彼女は目障りなんです」

「どうして?王家を信奉しているってことは、王女であるガブリエラ様の味方じゃないの?」

「まあ、味方といえば味方なのでしょうが……それよりも、王家の血筋ではない者が王位につくことを忌避している貴族も多いようです。まあ、声高に叫んでいるのは一部の過激派くらいのもののようですけれどね」

「過激派か……そいつらは危険なのか?」


黙ってレミアスの話を聞いていたゲオルグだったが、過激派、という言葉に表情を引き締めた。


「表立ってはまだ何も……裏では暗殺などを企てていてもおかしくありませんね」

「なっ……!」


レミアスの発した言葉に顔色を変えた私は、思わずガタリと音を立てて席を立った。


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