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第4章5

「ふわああ……」


徹夜したおかげか、疲れがたまっていたのか……どうやら随分ぐっすりと寝込んでいたらしい。

とっても心地よい目覚めだわ。

ゆっくりと覚醒した意識でそんなことを思いながら目を開くと、目の前に黒くて艶々したモノがあった。


「……ん?」


不思議に思いつつ自分の体勢をよく確認してみると、何か柔らかいものを両手で抱き込んでいるようだ。

試しに手のひらをわきわきと動かしてみると、すべすべしてふわふわした感触。そしてふんわりといい匂いがする。

こんな抱き枕持ってたかしら。とっても気持ちいいわ。

抱き枕の素晴らしい手触りを楽しみつつ、二度寝に勤しもうとした私は、枕から聴こえてきた声に硬直した。


「……んにゃ、んふふ」

「……んん!?」


ガバリと身を起こした私の前に横たわっていたのは……可愛らしく体を丸めて眠り込んでいる、黒髪の美少女だった。

丸まった猫のような、その寝姿のあまりの可愛さに……


「ぎゅむっ」


私は迷うことなく再び腕の中に抱き込んだのだった。




「全く、寝室でもないところで眠り込むなんて、淑女の風上にも置けないのですわ!」

「ごめんなさい……」

「しかも、わ、私を……だだだ抱きしめて離さないだなんて!!」

「重ね重ね、申し訳ないことです……」


プリプリと怒りつつ、朝食の付け合せのレタスを食べるガブリエラ様。その頬はリンゴのように真っ赤に染まっている。

そんな彼女のはす向かいに腰掛けた私は、しょんぼりと肩を落とした。

なんと私は、中庭で眠りこけたあげく起こそうとしたガブリエラ様を抱きこみ、そのまま朝まで彼女を離さなかったらしい。

最初は激しく抵抗していたガブリエラ様だったが、抵抗するほどに拘束をきつくしていく私に根負けし、最後には諦めて一緒に寝てくれたそうだ。

中庭で眠り込んだ私たちを放置するわけにもいかず、困った侍女たちがえっちらおっちら寝室まで運んでくれたらしい。

もはや意識がなかったことがラッキーだったとしか言いようのない醜態である。

どこへ行ったんだ、私の警戒心。

カムバック私の羞恥心。


「本当に、ごめんなさい……」

「……もういいわ。……わ、私も、久しぶりによく眠れたもの」

「……え?」


落ち込んで謝り続ける私を見かねたのか……ガブリエラ様は、小さな声でポツリと呟いた。

驚いて顔を上げた私に、ガブリエラ様はそっぽを向きながら照れたように言葉を続ける。


「侍女たちが、お兄様のご病気はもうよくなるって言っていたわ。……あ、貴女のおかげだって」

「ガブリエラ様……」

「もっ、もちろんお兄様の奇跡的な回復力の結果に決まっているんだから!お兄様は神に愛されていらっしゃるしね!で、でも貴女のおかげってことも、ほんの少しくらいはあるのかもしれないじゃない!」

「そんな……私は結局、なにもできなかったのに」

「ふ、ふん!やっぱりね!そうに決まっているわ!で、でも、愛するお兄様の最愛の妹としては一応、感謝しておかないといけないのよ!」


そっぽを向いたままのガブリエラ様の目尻は、よく見れば頰と同じくらい赤かった。

まるでずっと、泣いていたみたいに……

この小さなお姫様はずっと、ミカエルの心配をして枕を涙で濡らしていたのかもしれない。大切なお兄様が生死の境をさまよっていたのだから、当たり前のことだ。

不安で夜もあまり眠れなかったに違いない。そうじゃなければ、一国の王女様が中庭で寝るなんてしないだろう……私じゃあるまいし。

ミカエルが回復しつつあるのが、結局大して役に立っていない私のおかげとは……彼女の言う通り、とても思えないけれど。


ガブリエラ様のいじらしさにキュンとしていると、いつの間にか私の顔はヘラリと緩んでいたらしい。

ヘラヘラと笑う私を、ガブリエラ様はキッと睨みつけた。しかし頬が赤いままなので、怖くもなんともないのだが。


「かっ、勘違いしないでよね!あなたのこと、認めた訳じゃないんだから!」

「え?そんなことより、ガブリエラ様ったら、本当に可愛らしいですね」

「ななななな、いきなりなに言ってるのよ!気持ち悪い!ちょっ!触らないでよ!頭を撫でるんじゃないわよ!」

「ああ、可愛い……」

「勝手に抱きしめないで!触らないでったら!くっ、くるしっ!」


なんなのこの可愛い生き物。愛しさ大爆発だわ。

……これが娘が言っていた、萌えってやつなのかしら。

私は前世の娘を思い出しつつ、ジタバタと抵抗するガブリエラ様を思う存分堪能するのだった。

ついに本日、取り巻き第2巻発売です!

電子書籍版もよろしくお願い致します٩( ᐛ )وイェーイ


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