第4章4
「ええと……お話の流れから推察すると、貴女はミカエルの妹さんとかかしら?」
「見ればわかるでしょう?!」
「いやまあ、大体は……」
膝をおり、顔を覗き込んで話しかけると、何故か彼女は驚いたように少し後ずさりしながらもそう答えた。
この世界では割と珍しい黒髪に、黒の双眸。そして黙っていれば際立った美形であるミカエルに似ている美貌を見れば、彼女がその妹であることはすぐに想像がつく。
しかし不思議なのは、何故こんなに怒られなければならないのかということで……まあそっちも大体想像つくのだけれど、あまり納得がいってないというか。
知らずうちに眉根を寄せて考え込んでいた私の顔を見上げていた彼女は、私が黙りこんでいることにじれたように声を高くした。
「な、なによ、なんか文句でもあるの?!」
まるで毛を逆立てた子猫のように威嚇してくる彼女。
でもそうして怒ったように目を釣り上げる様子さえ可愛らしいのだから、生まれ持った容姿がいいっていうのは本当にズル……素晴らしいことね。
もし彼女が動物だとしたら、漆黒の毛並みがツヤツヤした、気位の高い素晴らしく可愛い猫に違いない。
「そうなのね。私はコゼット。もう知っているみたいだけれど……貴女のお名前は?」
猫の姿の彼女を想像し、若干、にまにましながら言葉を返すと、彼女は途端に瞳をさ迷わせ、もじもじしだした。
うんうん、猫って遠くから様子を伺っているのに、近づくと逃げたりするのよね。
「わ、わ、私はガ、ガガ、ガブリエラ……」
「ガガガガブリエラ様と仰るのね。よろしくお願い致します」
変わった名前ね。文化の違いかしら。
でも世の中にはレ○ィガガみたいな名前の人もいるしね。
しかし私がそう告げると、ガガガガブリエラは小さな顔を真っ赤にして声をあげた。
「ガッガブリエラよっ!変な名前で呼ばないで!」
「ガッガブリエラ?」
「ガーブーリーエーラー!」
そう叫んだガブリエラは、何故か涙目だった。
「とっ、とにかく!お兄様は、貴女なんかに渡さないんだから!」
涙目のまま、私に向かってビシリと指を突きつけるガブリエラ。
そんな様子を見ながら、しゃがんでいるのに疲れたので東屋のベンチに腰掛けると、春のポカポカ陽気がとても気持ちがいい。
「勝手に座るんじゃないわよ!聞いてるの?!無視しないでよ!」
「聞いてますよーあー、今日はあったかくなりそうですねえ」
「そういえばそうね。今日はいいお天気になるって侍女が言っていたわ……ってそうじゃなーい!」
「はあ……あったかいとご飯も美味しいですしねえ……」
中庭に吹き抜ける風が、優しく私の頬を撫でていく。あー、極楽かしら、ここは……と和んでいると、忘れかけていた眠気が襲ってきた。
可愛い小動物を見て気が緩んだのかな……あったかいしな……
「ふわ……んじゃ、おやすみなさい……」
「ええ、おやすみなさい。……って、なに寝てるのよ!」
「ぐー」
「ちょっと!嘘でしょ?!ここは中庭よ?!」
「うーん、むにゃむにゃ」
「起きて!起きてよお!」
「…………」
「起きてったらあ……う、うわああああああん!なんなのよこの人!おっ、お兄様ああ!」
とうとう泣き出したガブリエラの声をBGMにして、私は心地よい眠りへと旅立ったのだった。
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