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シグノーラの新商品、ハイヒールの売れ行きは好調だ。
スリッパの時と同様に、お母様が夜会で履いてくださったことで貴婦人たちの間に着々と浸透してきている。
王妃様効果もあり完全に市民権を得てしまった感のあるスリッパを駆逐することはまだできていないが、ハイヒールが多くの貴婦人の足元を飾る日も遠くないだろう。
ちなみにバランスシューズは全く売れていない。
使用目的がわからない、というのが最大の理由だ。
こちらは私のダイエットのために作ったようなものなので構わないが。
すごーーーーくいい商品だと思うんだけどね!
悔しくなんかないんだからねっ!
ふう。そしてバランスシューズダイエットも順調である。
この世界には体重計がないため詳しい重さがわからないのが残念で仕方ないが、体感ではかなり軽くなっているように思う。
見た目的には、最初の超重量級力士体型から、ややぽっちゃり……違いますの、これは大根ではなくて足ですの、くらいの変化だろうか。
色白も相まって雪だるまそっくりだった事を思えば、今は可愛い白ブタくらいにはなれただろう。
思えばダイエットを始めてはや半年が経過し、季節は秋から春に移り変わっている。
子供というのは身長も伸びるしもともとの基礎代謝も高いため、ダイエットの成果も出るのが早いような気がする。
今ではしゃがむことも出来るし、庭を駆け回ることだって出来るのだ!
やらないけど。最近忘れがちだけど令嬢だから。
春が近付いてきたお陰で最近は温かい日が続くようになってきた。そろそろお茶会などの社交のお誘いも増えてくるころだ。
ダイエットによって生まれ変わったニューコゼットを披露できる日が楽しみで楽しみで、最近の日課になった肌や髪のお手入れが嬉しくて仕方がない。
「お嬢様、随分ご機嫌ですね。なにかいいことでも?」
私の髪を優しく梳きながらシシィが問いかける。
「だってシシィ。この髪を見てちょうだい。シシィのお陰でこんなに綺麗になったわ。この綺麗な髪を披露できるお茶会が楽しみで仕方ないの」
「まぁ……うふふ、そういえば随分髪質が変わられましたね。あまりお肉を召し上らなくなってからでしょうか?」
「そうね!揚げ物と脂身はデブの大敵だもの」
私たちはキャイキャイと美容談義に花を咲かせた。




