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番外編 レミアスのお弁当 前編

「今日はお弁当を作ってきました!」

あれは確か、私たちが出会ってから二年くらい経った頃だっただろうか。

ピクニックを予定していた、春のある晴れた日。

そう言って満面の笑みで現れたレミアスは、大きなバスケットを携えていた。

レミアスのお供をしてきた従者も同じく、バスケットを両手に抱えている。


「まあ!まさか、レミアスが作ってくれたの?凄いわ!料理が出来るなんて知らなかった!」


この世界に生まれてこのかた、貴族男性が料理を作っているところは見たことがなかった。だからてっきり『男子厨房にはいらず』的な感じなのかと思っていたのだが、そうでもないのかしら。

でも、優雅で美しい……ぶっちゃけ実はご令嬢なんですのと言われても違和感のないレミアスなら、なんとなく納得してしまう。

きっと、繊細で上品な料理に違いない!

ソースにこだわって……フランス料理みたいな感じ?

それとも予想を裏切って、ハーブやスパイスを利かせたエスニックだったりして!

うーん、スタイリッシュ!


想像するだけでワクワクがとまらない。

お腹の虫まで大合唱を始めそうだわ!

期待しているのは私だけではないようで、すでに我が家に着いていたゲオルグも、嬉しそうに声をあげた。


「すごいな!俺、キャンプ先で肉くらいは焼くけど、ちゃんとした料理なんてしたことないぜ!」

「ふふふ!私も初めて挑戦したのです。コゼットがよく料理をすると聞いて、自分でも作ってみたくなってしまって。お口に合うといいのですが」

「レミアスが作ってくれたんだもの。美味しいに決まっているわ!」

「だな!レミアスは器用だからな!楽しみだぜ!」


お弁当への期待に胸を膨らませ、ガヤガヤと話していると、扉が開いて王太子殿下がやって来た。

今日も見目麗しい美貌はそのままだが、ピクニックの予定とあってか上質だが簡素な装いで動きやすそうだ。


「やあ、少し遅れてしまったかな。おや、なんだか楽しそうだな」

「ええ、そうなんですの!実はレミアスがお弁当を作ってきてくれて!早く出掛けて、景色のいいところで頂きましょう!」

「そうだな!早く食べたい!」

「ふふ、そんなに期待されると恥ずかしくなりますね」

「レミアスが料理を?!それは興味深いな。それでは急いで出かけるか」

「はーい!」


ウキウキでテンションMAXな私たちは、はやる気持ちのままにピクニックへと出発した。



景色のいい丘の上に場所を決めると、シシィがレミアスの連れてきた従者と協力して食事の準備をしてくれた。

私たちはワクワクしながらそれを待っていたのだが……何故だか従者の様子がおかしい。

その様子に首を傾げたレミアスが、従者に声をかける。


「ん?それは私の作ったものではないですよ」

「い、いえ、あの。足りないといけないから、と料理長が……」

「そうなのですか。料理長は心配性ですね。大丈夫ですよ。沢山作りましたから」

「いえいえ、そう仰らず……」

「ほら、こちらのバスケットに沢山いれてきましたし」

「あ、いや、あのその」


そう言って自分の持っていたバスケットを開こうとするレミアスを、従者は何故か遮ろうとする。


どうしたのかしら……ドランジュ公爵家の使用人が主人の意向に従わないのなんて、初めてみたわ。


従者はレミアスの持っていたバスケットをさりげなく取り上げて手が届かないように高く掲げてしまう。それをみて、温厚なレミアスもさすがに眉をしかめた。


「なにをするのです!返して下さい!」

「レミアス様、どうか……」


しかし、従者のほうもなんだか申し訳なさそうにしていて、悪気でやっているのではないとわかる。

その様子を見ながら私たちが困っていると、遠くから激走する馬車がこちらに近づいてくるのが見えた。

馬車は土煙りをあげ、車体をきしませながら走り寄ってくる。


「なんだありゃ?!殿下、俺の後ろに隠れろ!」

「ああ!コゼットもこちらに来るんだ!」

「え?きゃっ!」


いち早く反応したのはゲオルグだ。

どこから取り出したのか、ゲオルグは竹の棒を構えて馬車の進路上に立ちふさがって殿下をかばう。そして私は殿下によって腕を引き寄せられた。

それと同時に、離れて見守っていた衛兵たちも私たちを守るように取り囲む。


「こんな真っ昼間から襲撃とは穏やかじゃねえな……って、あの馬車、ドランジュ公爵家のヤツじゃないか?」

「あれ?本当ですね。おや……?あれは……レミーエの馬車ですね」

「え?!レミーエ様の……?あんなに急いで、なにかあったのかしら」


襲撃かと警戒したが、公爵家の馬車だとわかり、少し安心した私たちはホッと息をついた。

しかし馬車の尋常でない様子に、衛兵たちはいまだ警戒中である。

なんとなく黙って馬車がこちらに向かってくる様子を見ていると、すぐに近くまで来て停車した。そして勢いよく開いた扉から、転がるようにまろび出てきたのは、慌てた様子のレミーエ様だった。


「そのお弁当、まったあ〜!!」

明日の3月11日、ついに『悪役令嬢の取り巻きやめようと思います』第1巻が発売になります(*^▽^*)詳しくは活動報告をご覧ください!ツイッターもヨロシクです(*´꒳`*)

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