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最近、気がつくとスリッパのことで頭がいっぱいだが、そもそも私の本来の目的はダイエットである。
そしてゆくゆくは、悪役令嬢の取り巻きB(またの名をチュートリアル令嬢)としての敗北を回避することが最終目標だ。
というか、何故にこんなにスリッパに振り回されねばならんのだ。
最近で一番の衝撃はあれだ。
この国で最高の権勢を誇る女性、つまり王妃殿下が、国王主催の夜会にスリッパで登場されたのである。
年齢的に夜会に出ることの叶わない私がお母様からそれを聞かされた時の衝撃がいかほどだったか、おわかりいただけるだろうか。
むしろ夜会に出席出来なくてよかった。
思わず突っ込んでしまうところだった。
嬉しそうに報告してくださるお母様を張り倒さないのが精いっぱいだった。
しかしもはや、スリッパが室内履きであるなどと誰がいえようか。
まあ王宮は室内だし、広い意味でいえば舞踏会場だって王妃様のご自宅みたいなもんだからギリセーフか?
いや、アウトだろ……
だめだ。自分をごまかせなかった。
しかし私がどう思おうと、この国一番の女性がスリッパを夜会で履いたのならば。それはもはや正装である。
スリッパだけど。
足元スリッパだけど!!!
これだけちまたで流行っているのだ。流行に敏感な王妃様がスリッパを見逃すはずがないに決まっている。
バカ!バカバカ!私のバカ!
まあ、落ち込んでいても仕方がない。
このうえは、新たな靴の流行を作り出し、スリッパを速やかに時代の波におし流す所存である。
そう、可及的速やかに。
ということで、私はダイエットと同時進行で新たな靴の開発に乗り出すことにした。
靴に関しては発見されたゴムを使った製品を考えている。
同じくダイエットでもゴムを使ったエクササイズを取り入れるつもりだ。
あとは日課の屋敷内散歩の範囲を屋外まで広げ、速足でのウォーキングに切り替えることでさらなる効率アップをはかっていく。
新たな構想に目覚めた私は、さっそくシシィに頼んで靴職人を呼び出した。




