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第2章29

「……異議だと?」


 国王陛下の視線が鋭さを増し、その矛先がイザベラ様から私にうつされる。

 それと同時に会場中の視線も私に集まり、全身が痒くなるような緊張感がその場を支配した。


 そのあまりに重い空気に、回れ右をして帰りたくなる足を奮いたたせ、私は陛下を真っ直ぐに見返した。


 居ても立っても居られなくて、考える前に口から飛び出した言葉だったが、後悔はしていない。


 ……いや、本当は少し後悔している。

 主に言い方的な意味で。


 もっと他に言い方があっただろう、自分……


 思わず頭を抱えたくなったが、今は国王陛下の御前にいるのだ。

 頭を抱えるのは後回しである。


「……大変な失礼を致しました。コゼット・エーデルワイスと申します。重ねての失礼を承知で申し上げたいことがございます。発言を宜しいでしょうか、陛下」


「……許す。申してみよ、コゼット・エーデルワイス」


 あからさまに機嫌の悪そうな国王陛下に向けて淑女の礼をとってから、私は口を開いた。


「それでは……私を含め、女性とはいつ如何なる時もお洒落に気を使う生き物でございます。舞踏会はもちろんの事、乗馬の時すらそれは変わりません」


「ふむ。そのような事は余とてわかっておる。全く大儀なことよ」


 そんなことか、と国王陛下は心底面倒そうにため息をついた。

 その様子に、失礼ながら少しムッとしてしまう。

 国王陛下がそんなんだから、この国は女性が活躍出来ないのよ!


 内心ではムカムカが止まらないが、私はそれを押し隠して精一杯優雅に微笑んだ。


「国王陛下ともあろう方が大儀とは、異な事をおっしゃいます」


「なに?」


 陛下の眉が不快げにピクリと跳ねるが、気にしない!

 気にしないったらしない!


「……原始、女性は太陽であった、という言葉を聞いたことがございます。女性とは太陽のように輝くもの。女性が輝いていてこそ国がより一層輝くのは自明の理。返せばこの国が豊かであるからこそ、女性は輝けるのでございます」


「ほう……」


「国王陛下の素晴らしい統治の元、私達は乗馬の時すらお洒落をすることが出来るのです。これを陛下に喜んで頂けないとは、とても悲しいことでございます」


 立て板に水の如く持論を展開するうち、陛下の態度が徐々に軟化してきたのを感じる。

 これはいける!よし、もういっちょ!


「優雅な女性を乗せた馬をひくのは男性の喜びでもありましょう。美しいイザベラ様の乗る馬を引きたい男性は数多いるはずでございます。狩猟会とはいうものの、狩猟をする女性はあまり多くはいらっしゃいません。それを考えれば、イザベラ様の装いも乗馬に相応しいお洒落のうちのひとつではございませんか」


「そなたの言いたいことはわかった。確かにそうした面もあるやものう」


 陛下の言葉に、私はほっと肩を落とした。

 知らないうちにだいぶ緊張していたようだ。

 あー、肩凝るわー。


 しかし、陛下はゆるりと自らの顎を撫でると、意地悪そうに瞳を瞬かせて私に問いかけた。


「時に、そなたらは衣装比べをしていたな。王妃の発案じゃが、余も審査に加わることとなっているのは知っておるな?」


「は……はい。存じ上げております」


 訝しげに見上げる私に、陛下は愉快そうに言い放った。


「余は機能性のない衣装は好かぬ。馬に負担をかけるものもな。そして今日は狩猟会……それを受けてそなたはどう考える?」


「……勿論、狩猟に参加させていただきます」



 国王陛下を見据えて、私は不敵に笑った。


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