第2章28
晴れ渡る空の下、木々は赤や黄色の葉をつけ、草原を吹き渡る風になぶられてハラハラと舞い落ち景色に彩りを添える。
秋ももう終わりかけ、冬の気配が忍び寄ってくるのを感じられる、少しだけ冷たい風が火照った頬に気持ち良かった。
今日は王家主催の狩猟会だ。
王家の所有するこの狩猟用の広い土地は、現在私たちがいる草原の所々に木々が立ち並び、こんもりとした森が点在している。
その時、ひゅうっと一際強い風が吹き、私の隠れている衝立代わりの布が翻るのと共に、栗色の髪がふわりと広がった。
秋の匂いがする気がする……
枯れ葉の匂い、花の匂い…………焼き芋の匂い。
んん?誰か焼き芋してる?
お腹すいた……
私は遠い目をして、焼き芋……と独りごちた。
シシィの監視のもと、狩猟会に合わせて凄絶なダイエットを敢行した私のお腹は、一ヶ月前が嘘のようにぺったんこになっている。
彼女の全力を持って絞められたコルセットがまるで鉄板のように私のウエストを締め上げ、傍目には折れそうにか細いご令嬢が出来上がった。
ご令嬢の中には繊細でよく気を失う方がいるそうだが、私も今にも気絶しそうだ。
このコルセットというやつは、私を殺しにかかってきているに違いない。
今に見ていろ。
絶対に、コルセットをこの世から消滅させてやる。
いいか、絶対にだ!
国王陛下の開会の挨拶を聞き流しながら一人で決意を固めていると、隠れている布越しに王妃殿下の声が響いた。
「……皆様!今日は、レオンハルトの友人である二人のご令嬢が、それぞれ素晴らしいご自慢の衣装で参加してくれることになっていますの。二人の衣装比べを皆様もお楽しみ下さいませ!」
沢山の貴族達が集っている会場の隅々まで響く王妃殿下のお声。
メガホンもないのにすごいな。
いつも優雅な殿下のお声だが、今回は少々野太い感じがするのは仕方ない事だろう。
「まあ!それは楽しみですわね!」
「そのご令嬢とはどなたのことなのかしら」
「知らないのかい、先日学園で……」
「まあ……」
王妃殿下の声を受けて、貴族達がヒソヒソと口々に囁き合っているのが聞こえ、私の心臓がドキドキと鼓動を打ち鳴らし始めた。
大丈夫、落ち着け自分!
今日のために散々ザマス夫人やシシィとやり合って作り上げた衣装じゃないか。
毎日毎日顔を突き合わせて相談していたせいで、最後は私もザマスといってしまいそうだったザマス。
おっといけない。
私たちが作り上げたこの衣装が、受け入れられるかどうかはわからない。
しかし、確実にこれからのファッション業界に革命を巻き起こすだろうと、ザマス夫人は予言した。
「それでは、皆に二人をご紹介致します。イザベラ嬢、コゼット嬢、こちらへ」
王妃殿下の呼びかけが聞こえる。
私は一度大きく深呼吸すると、覚悟を決めて足を踏み出した。




