第2章26
「そういえば、王妃殿下にコゼットの乗馬服のことをお話ししたの」
食卓について料理長の美味しい料理を堪能している時、お母様が聞き捨てならない発言をなさった。
私はフォークに刺していたジューシーな肉汁あふれる鶏肉を一旦お皿に置くと、お母様に向き直った。
「そ、そうですの。ありがとうございます……あの」
「そうしたらね!先ほど王妃殿下からお手紙がきて。最高の舞台を用意したわ!っておっしゃっていたのよ。なんのことかしら?」
よくわからないけれど、きっと素晴らしいお考えがあるのでしょうね!とニコニコと笑うお母様の前で、私は思わず頭を抱えた。
最高の舞台って、一騎打ち勝負のことかーー!!
そりゃあ目立つ!目立つよ?
でも一騎打ち勝負に勝つにはかなり一か八かの賭けじゃない?!
学園の生徒達だけじゃなく、ほとんどの貴族の前で乗馬服を披露するんだもの。
その中には勿論、保守的な貴族もいるわけで。
「コゼット?どうしたの?」
「コゼット!お腹が空いているのかい?」
いや、むしろこれは王妃殿下のおっしゃる通り最高の機会だ。
この際、私の一騎打ち勝負のことは置いておこう。
乗馬服を沢山の人に見てもらって宣伝が出来るのだ。
もし勝負に負けたとしても私にはシグノーラがあるし、女商人として乗馬服を引っさげてルメリカにでも行けばいい。
「料理長!コゼットにお代わりを急いで!早く!」
「コゼット?どうしたの、そんなに低い声で唸って……お腹が空いたのね!?料理長!コゼットにケーキを!」
私はクワッと顔をあげて、両親にむけて宣言した。
「お父様、お母様!狩猟会を楽しみにしていて下さいませ!私、最高の乗馬服を披露してみせますわ!そしてあわよくば、一騎打ち勝負にも勝利してご覧にいれます!」
腰に手を当て胸を反らして言い放つ私を前に、両親は目を白黒させつつも拍手をした。
「コゼット、その意気だ!……ところでなんの話かな、コーデリア」
「コゼットのデザインした新しいお洋服のお話だと思うわ、エドワード」
堂々たる宣言に満足した私は、なぜか目の前に山積みしてある鶏肉やケーキを猛然と食べ始めた。
腹が減っては戦は出来ぬ!
ああ、美味しい……
「ところで今、一騎打ち勝負とか聞こえた気がするんだが」
「そうですわねえ。お食事が終わったら聞いてみましょう。どうせ今は耳に入らないわ」
やはり料理長の料理は絶品だ。
外はパリッ!中はジューシーな鶏のハーブ焼きの美味しさときたらもう……




