第2章24
ティーパーティーはその後も続いていたが、なんとなく気が削がれてしまったため私は早々に学園を後にした。
王太子殿下はやけに私の事を気にかけてくれて、屋敷まで送る!と言っていたが、疲れていたので丁重にお断りした。
殿下が付いてきたら、コルセットが脱げないから寛げないし。
ジュリア様達も私の一騎打ちを心配してくれていたが、狩猟会まではあと一ヶ月弱ほど時間がある。
彼らには後日また衣装の相談に乗ってもらう約束をして、私は屋敷に帰宅したのだった。
「はふー。あー疲れた」
コルセットから開放された私は、ソファに寝そべって体を伸ばした。
だらしが無いが、私の自室であるこの部屋には私とシシィの二人だけだから気にしない。
シシィさんの視線はだいぶ強いけどね。
コルセットってのは、アレだね。
着けてる時は最悪だけど、外した時の解放感がたまらないね。
もうこの時のために着けてるようなものだよ。
これでビールでもあったら最高なのに。
楽チンドレスでゴロゴロしつつ、シシィの淹れてくれた紅茶をひとくち。
はあー、落ち着くわ〜。
ひと息つくと、私はシシィに声をかけた。
「シシィ〜、そう言えば、一騎打ち勝負をする事になったの」
「えっ!?はっ?!一騎打ち勝負ってあの、一騎打ち勝負ですか?」
「ええ。どの一騎打ち勝負かわからないけど、多分『その』一騎打ち勝負よ」
「お嬢様、あんなに嫌がってらしたのに。どういう心境の変化ですか?」
「実は色々あって……」
かくかくしかじか。
シシィにティーパーティーでの経緯を説明する。
「その時、神々しいお声があたりに響いた!すると魔法のように、人垣がサッと割れて……そこに現れたのは……!」
ふう。
思わず熱が入ってしまった。
私の身振り付きの迫真の演技……じゃなくて説明を聞いたシシィは、なるほど〜と間の抜けた声を漏らした。
「なによシシィ。気のない返事ね」
私は若干汗ばんでいるというのに。
不満気に声を漏らすと、シシィは苦笑いを浮かべながら首を振る。
「いえいえ。お話はとってもよくわかりました。ちょっと面白かっ……なんでもございません。ところで、お嬢様はついに王太子妃候補になられる覚悟を決められたのですね」
神妙にウンウンと頷くシシィに、私ははて、と首を傾げた。
「なんでそうなるの?私は一騎打ち勝負に参戦するだけよ」
「は?」
今度はシシィが首を傾げた。
私達は見つめあったまま、しばらく沈黙した。
やがてシシィは指でこめかみを揉みながら苦々しい表情で口を開いた。
頭でも痛いのかな。
「お嬢様。なんで気付いていらっしゃらないのか皆目見当がつきませんが……一騎打ち勝負に出るという事は、王太子妃レースに参戦すると宣言したも同じ事です」
「え……ええええええ!」
シシィの言葉に、私は本日最大の衝撃を受ける羽目になったのだった。
あああ、考えなしの癖は生まれ直しても治らないのね……
私のバカーー!!




