再会2
黄金の鬼子は、生まれてすぐに隔離された。
ガイガロス人の力を封じる術を施されるまでは、全ての情報を遮断された。
だが、物心のつく前に、全ては完了していた。
鬼子が自身をガイガロス人であると認識したのは、この世に生を受けてから、数十年後であった。
人間として暮らしていた頃の彼女は、普通にその時代の若者と恋に落ちた。
共に生活をする時間が続き、若者は徐々に老いていく。
だが、彼女は若いままでいた。少女のままの彼女に寄り添う若者たちは、最初は喜んでいたが、徐々に老人になり、やがて彼女の隣から姿を消す。
彼女はいつしか伴侶を作ることを止めた。
子を成すことも考えたが、いつまで経っても子は宿らなかった。
自分は他人とは相容れない存在。
そう気づいた時、彼女の元に使者が訪れた。彼女同様、恐ろしく長寿な者たちだった。
彼らは、双眸が緋の色となり、青い血を流した。違和感を覚えた少女だったが、自身も同じであると気づき、愕然とする。
最強の蒼い戦士の一族。
だが、蒼も黄金を恐れた。
彼女は、今度は自分の意志で黄金を封じた。黄金を封じることは、蒼を封じるのと同義だった。
黄金の球体を取り巻く森林地帯での激闘は、同じく黄金の身体を持つ巨大なドラゴンの閃光の一撃により中断させられ、そのまま終結を迎える。
斬りかかるインテ=リザードのオスと、それを迎えんとするキマビン。刃を合わせた別のオスとゴウト。相手の攻撃を避け続けるテマを救援に向かうレベセス。そして、二体のインテ=リザードのオスの首を一振りで斬るガガロ。
仲裁の光の矢は、それぞれの者たちの間に降り注ぐ。
届いた光の矢とドラゴンの体色は同じ。鋭い咆哮を上げ、大地に舞い降りた黄金のドラゴンは、その右手に球体をしっかりと掴み、そのまま一気に舞い上がる。そして五人の戦士たちの上空を一周ゆっくりと飛行すると、そのまま遺跡の奥に飛び去った。
その旋回の間、ドラゴンの右手に黄金の球体は一度強く輝く。
それにより、ガガロに斬首された二体のインテ=リザードはその首が胴から離れる前に再度接合、絶命を免れた。他のその場にいた戦士は皆、体に負った傷を失っていた。
飛び去った黄金のドラゴンに、いつの間にか目を奪われていた五人の戦士は、力なく武器を降ろした。
対するインテ=リザードたちも、もはや戦意を失っていた。圧倒的な力に充てられたからだろうか。だが、その圧倒的な力は、彼らの削り取られていた力を取り戻させた。
一瞬だけ覚えた苦しみ。激痛。死への恐怖。
それらは柔らかい黄金の光により、見事に昇華させられ、同時に戦意すら奪い去ってしまっていた。
「……行ってしまった……」
降ろした聖剣を、ゆっくりと腰に戻しながらレベセスは呟いた。
ガガロは、未だに信じられないとでもいうように、黄金のドラゴンが飛び去った方向を最後まで見つめていた。だが、諦めたのか、死神の剣を腰に、刃殺しを背に収めた。
ジョウノ=ソウ国の先代皇帝であるテマは、この場にいるインテ=リザードに語り掛けた。この後の戦いは完全に無駄になる。我々も武器を納める。そちらも武器を納め、各々の住む世界に戻ろう、と。
それに応じたインテ=リザードの群れは、ゆっくりと森林の中に姿を消していった。
SMGの戦士ゴウトは、最後までシェラガとの決着をつけられなかったことを嘆き、キマビンはそれを宥める。そのやり取りは、遺跡を抜けるまでずっと続いたが、最後の方は慟哭だったという。
何だ、来てくれたのか。来ないとばっかり思っていたよ。
当たり前でしょ。放っておけるわけないじゃない。心配だったのよ。いつも勝手なことをして、勝手なことを考えて、結果問題は片付いてこそいるけれど、他の人に心配ばかりかけている。そんな滅茶苦茶な貴方の面倒を、誰が見られるの?
それじゃあ、なんか俺が酷い奴みたいじゃないか。……でも、ありがとう。
あら、珍しいのね。貴方がお礼を言うなんて。
……あいつはどうした?
貴方が一番信頼できる人たちに預けてきたわ。私や貴方が育てるより、ずっときちっと育ててくれそうだから。あの子にとって、私たちのことは知らないほうが幸せなの。多分ね。
……そうか。なら安心だな。
……そうね。
ある者は、シェラガとフアルの会話をはっきりと耳にしたといい、またある者は、あの二人なら、こんな会話をするだろうと語った。
黄金球と化したシェラガとドラゴン化したフアルが、会話をしたという記録はない。シェラガは既に意識が溶解しているはずだし、ドラゴン化したフアルが人間の言葉を口にできたかどうかは甚だ疑問だ。
黄金のドラゴンがどこに行ったのか。
それを知る者は誰もいない。
ただ、通過した場所だけは口伝として残っている。
ドラゴンが通過した場所は、弱っていた木にその年だけは花がつき、荒れ果てた大地に植物が根付いた。病んだ者は快方に向かい、負傷した者の傷の治りが格段に早くなった。
だが、天寿が伸びることはなかった。ただ、その際は、より穏やかなものになったという。
いよいよ次章完結予定です。
そして、少し休憩した後、本編に戻ります。
本編、どうしよう。終われそうな予感が全くしない……。




