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界遊記外伝 ~ ファルガの父 ~  作者: かえで
滅びゆく権力からの復讐

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急襲

 テマと名乗った銀髪の壮年の紳士は、悠然と微笑んでいる。

 切れ長の目に通った鼻筋。後ろに撫で付けられた銀髪は、短く整えられ、よく手入れされている。ラウンド髭と呼ばれる、口の周りを囲うように剃り揃えられた髭も、見事なシルバー。スラリとした長身は、流石にコーウトには及ばないものの、シェラガの頭一つ分は高い。凡そ体型の分かりづらい装束ではあるが、年齢に応じた恰幅の良さは全く感じられなかった。彼もシェラガやケザンと同様、支給された黒装束を身につけ、腰にはショートソードよりは短いが、短剣よりは長い剣を腰に二本装備している。

 ケザンは、あからさまに不信感を隠さない。

 戦闘とは無縁そうな上品な紳士が、生命の痕跡もない荒廃した灰色の瓦礫の地に、なぜいるのか。彼は調査隊への登録は、学者枠で行なっていると言った。だが、学者としての教養は感じられるが、学者特有の脆弱さは感じられない。戦士の素養もありそうではあるのだが、生死を常に意識した戦士特有の、飢えた獣のような荒々しさは感じない。醸し出す雰囲気と、今この場で求められるべき人材とのアンバランスさが、よりケザンを警戒させた。

 そもそも彼は、シェラガとケザンがやり取りをしていた時に、近くにはいなかったはずだ。どんなに耳の良い者でも、シェラガとケザンの間でなされた会話に聞き耳を立てることは難しいだろう。それにも拘らず、彼は凡その流れを知っているようだった。いや、察したのだろうか。だとすると、恐るべき推理力だ。

 シェラガは彼を知っていた。

 テマという男とどの程度近しい知人なのかはわからないが、彼の『学者仲間だ』という言葉を鵜呑みにするのは憚られた。シェラガから瞬間的に感じられたのは、緊張感だったからだ。

「カルミア姫にはお会いしたことがあるのですよ。彼女は、小さかったので覚えは無いでしょうけれど」

 人懐っこいのとは種を異にする爽やかな笑みを浮かべる彼の言葉は、ケザンに妙な安心感を与える反面、それが非常に不気味なものに感じられた。彼女が経験したことのないタイプの安心感だったからだ。あえて表現するならば、『覚える』安心感ではなく、安心感を無理矢理覚えさせられている、というべきか。

 だが、彼女の感じている違和感の前提条件は、実はシェラガにも当てはまる。凡そ学者臭も戦士臭もしない男。そういう意味ではテマとシェラガは何も変わらない。

 だが、ケザンの経験豊かな、危機を察知する能力が、この男の醸し出す言葉では言い表せない雰囲気は、何かが違うと告げていた。

「テマ教授、ご無沙汰しております。まさか貴方もこの調査隊に招聘されているとは」

「いえいえ、現役を退いたとはいえ、私もまだまだ遺跡の調査に関わりたかったのですよ。そういう意味では、今回の遺跡調査隊の募集は渡りに船だったと言えますね」

 単なるご機嫌伺いの意味しか持ちえない、シェラガとテマのやり取りを何となく聞きながら、ケザンは徐々に二人から距離を取り、カルミアの消えた瓦礫の渓谷へと歩みを向けた。例え、どれほどコーウトが敏腕の戦士であったとしても、護衛の基本は二人一組だ。あまりカルミアから離れる時間が長引くことを彼女は是としなかった。

 

 夕食も終わり、兵士たちは交代で夜営に入った。

 あちらこちらに篝火が焚かれ、篝火一基を中心にして、二十人ほどの人だかりができる。篝火ごとに最低二人が不寝番として火を管理し、それ以外の者たちは仮眠を取るのだ。非常事態が起きれば、不寝番が笛を吹いて全員に起床を促す。笛の音を聞いた瞬間に、他の兵士たちがすることは、笛を吹くこと。そうすることで、一気に兵士たちは起床となる。不寝番が異常に気づかなければ、隊は全滅する可能性がある以上、不寝番は非常に重要な仕事だといえる。

 そんな中、シェラガたちは日中カルミアが引き起こした騒動を受けて、篝火を守るのとは別の不寝番を立てていた。

 トリカ卿の孫娘であるカルミア=サイディールの遺跡調査隊の参加は、まだ隊全体には知れ渡っていなかった。一部の人間は、どこかの非常識な貴族の娘が調査隊に混じっている、とは勘づいていたようだったが。間違いなく、先の騒動でカルミアは他の兵士から目をつけられている。

 そして、今回の不寝番は、兵士たちが出来心でカルミアに狼藉を働く可能性を考慮してのものだった。

 この調査隊では、特段貴族向けの護衛をつけているわけではない。だからこそ、むさ苦しい調査隊の中に貴族の娘が混じっていると知れれば、何かしら悪戯をしようと思い立つ輩がいるかもしれない。

 極限状態が続けば続くほど、人間はストレス発散の為に常軌を逸した行動をとる事も多いと言われる。そうなった人間は、所謂『鬼』と呼ばれ、正気の沙汰ではないような事件を引き起こし、またその精神状態は伝播する。集団ヒステリー状態だ。

 対応が遅れれば、数多くの『鬼』を生み出す事になりかねず、鬼と化した者は、実際に処断するだけでなく、『鬼』と化した者の家族も、不肖な存在を世に送り出してしまった罪として処断しなければならない。鬼を生み出した一族は、さらに鬼を生み出す可能性がある。そんな下らなくも悲しい慣習のためだ。『鬼』の出現は、本人だけの問題ではなく、その一族までが崩壊の危機を招いてしまうことになるのだ。それはちょうど、ガイガロス人のドラゴン化の言い伝えにも通じるところがある。『鬼』にさせないことは、その人間だけでなく、その家族を守ることになる。兵士たちの最後の優しさだといえる。

 今回の調査隊は、あくまで古代帝国の遺跡調査を主として活動している。だが、その実は未踏の地への探検行為であり、今回のリザードマンの急襲は、ほぼ軍事活動と言えるような戦闘だった。

 只の遺跡調査のはずが、準戦争体制に突入した現在では、兵士達は普通の精神状態でいるとはとても思えなかった。戦闘があると分かっていての従軍と、戦闘がないと思っている状態での従軍では、精神的にかかる負担も格段に差がある。

 その負担に負けて『鬼』になる人間を律するためには、やはり緊張感を持続させること。カルミアが仮に隊にいたとしても、自分たちの緊張を解す為の対象ではない事をはっきり見せつけることが、誰も喜ばぬ『鬼』への堕落を防ぐ唯一の方法であると言えた。

 そして、その力を見せつけるために、圧倒的な力を持つ者が防波堤になる必要があった。

 シェラガとコーウト、ケザンとテマ。

 その四人がカルミアの不寝番の役目を負った。不寝番はローテーションで行われ、今のところ何の異常も目受けられなかった。

 コーウトと交代したシェラガは、篝火の前に座ると、大きく伸びをした。

 何もない。何もないに違いない。そうは思っていたが、余り油断しすぎてもいけない。無論緊張しすぎてもいけないが、それも程度問題だ。極端な状態はいずれにせよ好ましくない。

 腰に吊るした剣を弛め、胡坐を掻いた足の中心に立てると、そこに捕まるように寄りかかった。

 炎を挟んだ右斜め前方に、毛布をかけ丸まるように眠るカルミアを見て、思わず頬を緩めるシェラガ。あんなに生意気な物言いをしていても、寝ているときはまだ子供。

「寝ている子供は天使だな」

 自分は、父親になれるのだろうか。

 そんなことをふと思う。

 血の繋がっている人間でさえ、父親になりきれぬ者もいる。ましてや、自分はフアルの子とは血が繋がっていない。その存在を子として愛せるか。

 だが、そんなシェラガでも、他人の孫であるカルミアの寝顔を愛おしいと感じることが出来る。その感情を客観的に見つめると、自分でも父親になれるのではないか。そんな気持ちになる。

 ふと背に気配を感じる。殺気ではない。シェラガはゆっくりと振り返った。

 そこには、二つの木製のカップを持ったテマが立っていた。

「……流石に酒はちょっと……」

 一瞬酔いたいな、とも思ったシェラガではあったが、今は一応警護中の身だ。ほんの少しだけ擡げた欲望を抑える。

「相変わらず真面目だな、君は。安心したまえ、これは葡萄ジュースだ。乾燥葡萄を水で戻したものを磨り潰したものなので、新鮮さには欠けるが、酷は普通のジュースよりははるかにある。口当たりだけなら十分ワインだ」

 そういってカップを差し出す。

 乾燥させた葡萄は、樽内で寝かせたワインのようにアルコールとはならないのだろうが、濃縮された風味は、また一種独特の物だという。

 シェラガが礼を言ってそれを受け取ると、テマは彼の横に腰を下ろした。

「テマ様が、まさかこの隊に参加なされているとは。驚きましたよ」

「シェラガ君、『テマ様』は止めてくれないか。

 今回は私人として参加している。今生きているのは、強いて言えば、せいぜいテキイセ大学の元教授、という肩書くらいだ。君と同じ立場だ。それに、公務は既に息子に引き継いだ。私はもう隠居の身なのだよ」

「そ、そうでしたか。それは失礼しました」

「まだまだなところはあるが、私の最初の頃に比べれば十分だよ。満点以上と言っていい。親バカで申し訳ないが。……それも君のお蔭だ。ありがとう」

「私は何もしていませんよ。貴方が十分だというなら、それは彼の才能と頑張りの賜物ですよ」

「その、頑張る機会を与えてくれたのは君だ。感謝している」

「そんな改めて言われると……」

 むず痒そうな表情を浮かべ、シェラガはテマから手渡されたカップに注がれた葡萄ジュースを少し口に含んだ。

「君が礼を言う機会をくれんからだ。事態が収斂した時には、いつも君はいない。

 君はそうやって行く先々で人を救い、勝手にいなくなる。君の為に泣いた女もさも多いだろうな」

 完全に優劣が決定してしまった。二の句が継げず、目を白黒させて押し黙るシェラガ。

 そんなシェラガを温かい眼差しで見つめながら、肩を叩くテマ。

「さて、本題に移ろうか。君は集団での調査活動は好まないはず。この隊の招聘にはなぜ応じた?」

「応じたわけではないのです。気づいたら参加していた……」

 シェラガは、自分が下級貴族に騙され、結果的に、トリカに殺されかけた事を話した。そして下級貴族は事故で全員命を落としていることも。だが、シェラガ自身には、今回の下級貴族の落命は事故ではないという確信があった。形はどうやっても事故のように思えるのだが、事故を引き起こした状況には、どう見てもトリカの殺意が見え隠れする。だが、第三者に提示しても納得してもらえるだろう証拠がない。

 それ故、彼は動いた。

 限りなく事故に見せようとするトリカの殺意の存在。それを調べるための屋敷への潜入、高機動兵士との戦闘、そして、遺跡への墜落。端的にではあるが、彼の見た事実を言葉にした。

「……ふむ。やはり君の言う通り、トリカ卿は、考古学者とは違う側面を幾つかお持ちのようだ。だが、今の時点では、今回の調査隊と下級貴族の事故とは直接の因果関係は見当たらないな」

「そのようですね。ただ、同じトリカ卿の行動である以上、関連性はなくともトリカ卿という人間を理解するという意味では、大いに参考にすべき事案ではあると思っています」

「そうだろうね。

 私の中では、あれほど愛していた孫娘を、なぜ調査隊に参加させたのかというのも気になっている。私自身は君から聞いて初めてカルミア姫の調査隊参加を知ったが、それは即ち、調査隊の人間は殆ど、カルミア姫が参加している事実を知らないという事だ。

 カルミア姫は、それほど考古学、とりわけ古代帝国史に興味があるようには思えない。だとすると、何か他に理由があると考えるべきだろうな」

 ファルガが、聖剣に手を掛けるのとほぼ同時に、テマも腰に着けた二本の長短剣に力を込めた。

 シェラガたちは、背後に崩落の危険性のなさそうな瓦礫を背負い、カルミアを囲うように三人が横になり、篝火を挟んで不寝番を置いていた。今はテマが起きてきているために、実質は二人の不寝番がいることになる。

 目を凝らすと、広場全体に満遍なく焚かれた幾つもの篝火が、ゆっくりとこちらに近づいてくる数人の男たちを照らし出す。顔は確認できないが、体躯からして男であろうと思われる影が三つ。影が通りかかった篝火のそばの影が立ち上がる。影が四つ。

「指輪は支給されましたか?」

 シェラガは、ゆっくりと近づいて来る影から目を離さずに尋ねる。

「指輪?」

「どうも、身につけると聖剣のように身体能力を引き上げることができる代物のようなのですが……」

「ああ、遺跡から出土したと言われる指輪だな。まだ正式名称はなかったと思ったが、『魔法の指輪』とか、有り体な名前で呼ばれていたよ。兵士たちに支給できるほど大量に出土した話は聞かなかったが。だが、確かに斥候としてこの第二宿営地の候補地の周辺を巡回している時に、各方面隊に一人はいたようだ」

 一瞬沈黙するシェラガ。

 やはり、どんなに注意を払っていても、研究には人数が必要だ。

 自分には指輪の知識がまるでなかった。だが、その指輪は、トリカの元ではある程度調査が行われ、軍事転用すらされている。そして、シェラガと同じ個人活動をしているフリー考古学者のテマですら、指輪の存在は知っていた。その効能や発動の特殊条件など、細かい情報は持ちえていないようだったが。

「……さて、一悶着在りそうだな」

 そう呟くと、テマはゆっくりと立ち上がった。すでに、四人の男たちは、表情がある程度窺い知れる距離までの距離に迫っている。

 シェラガも、腰の剣に意識は集中させながら、剣の柄部分には手を置かず、四人の男たちの前に立ちはだかる。

「今は夜営の時間帯のはずだが、連れ立ってどちらに?」

 テマはあくまで抑揚のない言葉を紡いだが、言葉の内容は暗に軍規違反を咎めている。本来、従軍している場合には就寝時間帯に就寝していない事も違反なのだ。

「いえね、ちょっと用足しなのですがね」

 軍規違反を指摘された男は、薄ら笑いを浮かべる。

 もう、ここに来た理由はわかっているだろう? ほんの少しくらい大目に見ろよ。時間などかかりはしないのだから。

 言葉にしない男たちの下卑た眼差しは、明白にそう語っていた。

 逆に、シェラガの方がそういった男たちの表情に殺意にも似た苛立ちを覚える。今ここで彼らを撃退したところで、よそで同じことをやっているに違いない。彼らの毒牙に掛かった婦女子は多いだろう。ならば、今この場で今後の禍根を絶つか?

「用足しはよそで願いたい。すでにここでも人は寝ているのでな」

 対するテマは、歳の功か、何とか誰もが傷つかない方向で事態を収束させようとしている。そんなテマの余裕を見て、少し反省するシェラガ。

 こんな男たちでも、帰りを待つ者がいるかもしれない。彼らがしようとしていることは、帰りを待つ者への裏切り行為だとしても、帰りを待つ者達から彼らを奪う権利などありはしない。

「そういえば、この隊は女もいるのか。羨ましいねえ」

 四人の男たちの中で、最後部にいる最も人相の悪い男が、他の三人を押し退け、前に踏み出した。心なしか、この状況に興奮を覚えているようで、若干目が血走っている。

 シェラガは、素早く四人の男たちの手を確認する。指には皆指輪が嵌められている。どうやら全員高機動兵士のようだ。早めにコーウトとケザンの女性高機動兵士組を起こさないと、事態は悪化の一途を辿るかもしれない。歴戦の勇士として名を馳せたこともあるテマとはいえ、高機動兵士相手の戦闘は流石に荷が重いだろう。そして、当のシェラガ自身も、カルミアを守りながらテマをサポートして戦うのは、些か荷が重いか。

 と、突然四人の男たちの、最も人相の悪い男が横に跳躍した。

 その動きに呼応してテマとシェラガは抜刀する。一気に二人の間に緊張感が走る。

 だが、その男はそのまま大地に横たわると、まるで踊り狂っているかのように激しく痙攣した。

 男の側頭部には、左から右に貫通するように矢が刺さっていた。これは、人間が使うサイズの矢ではない。もっと膂力のある別の存在。

 テマは持っていた笛を強く吹き鳴らした。

 敵襲!

 耳を劈く笛の音に応じるように、兵士達は口々に叫び、笛を吹きながら武器を持ち立ち上がる。

 だが、敵は人間ではなさそうだ。

 周囲で、瓦礫の破砕音がする。雨音のように連続しているが、その音は比ではない。いわば、巨大な雹が大地を激しく打ち付ける。そんな轟音。

 弩弓から放たれた重い矢が、大地に無数に降り注いでいるのだ。通常の戦闘での矢と同じように。そして、弩弓の矢は、その威力に違わず速度も速い。通常の人間では防ぎきれるしろものではなかった。

 シェラガと高機動兵士の二名は、テマとカルミアの前に立ちはだかり、飛来する矢を悉く弾き飛ばした。弾き飛ばしたといっても、その重量だ。弾いて矢の軌道を変え、直撃を避けるのが精一杯だった。

 他の高機動兵士たちも指輪を発動させたが、指輪を持たぬ学者たちは悉く打ち倒された。また、高機動兵士の中でも、矢の速度に耐え切れず討たれる者も多かった。

 シェラガは、矢の雨の中、打倒された暴漢の指から指輪を奪い、テマへと投げ渡す。

「お嫌でしょうが、研究資料です。お持ちください!」

 研究資料として渡せば、テマとて死者から奪った指輪だとしても拒否はすまい。そう考えてのシェラガの行動だった。だが、その実は、テマにも己を守る術を与えたかった。このまま行けば、テマが倒されてしまうのは時間の問題だったからだ。

「……使い方は?」

「指輪をつけた指に神経を集中させてください。後は指輪が導いてくれます、多分!」

 シェラガは振り返ることなく、テマに指輪の使用法を伝授する。だが、実際のところシェラガは指輪を発動させたことがない。どちらかというと、聖剣を発動させる時の感覚を伝えた形になる。

 シェラガの言葉を耳にしたテマの何とも言えぬ表情を、ケザンはおそらく生涯忘れることはできないだろう。

「学者ぁ! 手を貸せぇ!」

 コーウトは、野太い声でシェラガを呼ぶ。轟音の中での会話は非常に困難だった。

「な、なに!?」

「弩弓なら、放つ砲台を破壊すれば済む! 大凡の場所は特定できた。ついてこい!」

 コーウトは、シェラガの返答を待つことなく、高機動兵士独特の高いパフォーマンスで、矢の雨の降り注ぐ中、駆け抜けていく。

「弩弓がこんなに連射できるわけがないだろう! もし、弩弓用台車があるなら、何百台にもなるぞ。相手はおそらく人間じゃない! 単身切り込んでいくのは無謀だ!」

 テマが叫ぶが、コーウトの言うとおり、現状を打開するためには何かをしなければならない。このまま相手に弩弓を打たせ続けるのは、遺跡調査隊の全滅を招きかねない。

「テマ様! 残った高機動兵士達の指揮を! ケザンはテマ様の統率を補助してくれ! 俺もコーウトを追う!」

今回も途中まで書いて、ボリュームが大きくなってしまったため、また分割で投稿します。

ちょっとした敵役のはずのリザードマンたちも、その歴史などに思いを馳せると面白くて、ついつい加筆してしまいます。なので物語はあまり進んでいません。申し訳ありません。


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