私ってほんとダメ。
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花子の件は衝撃的だったが、俺やチカちゃんのステータスは、順調に伸びていた。
俺がレベル15、チカちゃんがレベル17となっていてお互いに各能力が900~2000程度上昇している。
俺は物理関連と魔力抵抗が伸び、魔力は変化なし。チカちゃんは、魔力関連のステータスは良く伸びていたが、物理関係はあまり伸びていなかった。
俺は、新しい能力等は得られなかったが、チカちゃんは新たに雷、風属性の魔法を習得していたのと、『魔法使い』の才能が開花し、火と水の属性強化の技能を取得していた。
ひとまずは、順調かな?
レベル上昇ごとのステータス変化を観察していたのだが、セオリー通り、レベルが上がるほどステータスの上昇幅が増えていた。
「明日は、隣町に向かいながらモンスターに、新しい魔法を試してみようか。」
「うん。魔法のレベルもあがっているから、全力の威力も試してみたいな。あと、僕思ったんだけど、水と雷の組み合わせみたいな応用も出来るんじゃないのかな?」
「あー、確かに。そっち方面の確認もしておきたいな。」
「あとは、戦闘のときの連携なんだが、敵のタイプによっていくつかセオリーを作っておきたいんだが……。」
「そうだね。僕も、今日で大分魔法に慣れたから、色々な戦い方が出来そうだよ。」
「じゃあ、まず、飛行型の敵が出てきたときから決めようか……。」
そう、話を続けようとしたとき……。
「ごちそう様! お腹いっぱいになったら、眠くなっちゃった。先に、部屋に行ってるね!」
先に、ご飯を食べ終えた花子は、そう言って部屋に戻っていった。
まあ、花子は直接の戦闘には関係ないからな、後で結果だけ伝えれば問題ないだろう。
それから30分ほど、チカちゃんと、明日に向けての連携の確認をおこなった。
「ごめんな。チカちゃん。」
「どうしたの、お兄ちゃん?」
「花子が、あのステータスだろ? 花子は、俺の犬だからさ……。守ってやりたいんだ。でも、俺も他の勇者に比べて強いわけじゃない。だから、きっとチカちゃんに、負担をかけることになると思う。」
「本当なら。俺が、花子も、チカちゃんも、守れる力があればよかったんだけどな。」
「なんだ、そんなことかー! 突然、お兄ちゃんが、『ごめん』なんって言うから、何かと思ったよ。大丈夫だよ、この僕に任せなさい。お兄ちゃんも、お姉ちゃんも僕が面倒を見てあげるよ。」
無い胸を反って、高らかに宣言するチカちゃんの鼻息が、荒くなっている。
「ああ、そうだな。じゃあ、よろしく頼む!」
「でも、お兄ちゃん。少しは見直したよ。最初はお姉ちゃんに、ご主人様とか言わせているから、ただの変態さんだと思ったけど。案外しっかりしているし、優しいところもあるんだね。」
「あと……。僕は、子供じゃないんだから『ちゃん』付けは、やめてよね!」
「では……。チカ様と及び致しましょうか?」
「!?」
「もう! からかわないで! 普通に、呼び捨てでいいからね!」
チカちゃん……、いや、チカは、よほど幼く見えることがコンプレックスなんだな。
あと、からかうと結構面白いかも。
…
部屋に入り、1つだけあった大きめのベッドに、顔を埋めた。
お腹いっぱいなのに気分が晴れないのは、ご主人様と、チカちゃんの話に入れないからじゃないよね……。
さっき、ご主人様が言っていた言葉を思い出す。
「花子が弱い分は俺が頑張るし、守ってやるから心配するな」
どうして、いつも私は、ご主人様に守って貰ってばかりなんだろう
せっかく、ご主人様と同じ姿になれたのに……。
ご主人様との、最初の出会いもそうだった。
前のご主人様も、最初は私のことを可愛がってくれたし、毎日撫でてくれた。
――でも、私が大きくなると。
「邪魔」だとか、「こんなに大きくなるなら飼わなければよかった」と、毎日言われた。
ご飯を貰えなかったり、殴られたりしたこともあったし。もう、ずっと、撫でても貰えなかった。
でもね。いつか、また昔見たいに、可愛がってくれるんじゃないかって思ってずっと、ずっと待ってた。
……だけど。
毛並も汚れ、所々毛が抜け落ち、みすぼらしくなってしまった私は……。最後はもういらないって捨てられちゃった、殺されるんだなってなんとなくわかった。
人間が、好きじゃ無くなった。
人間が、信用出来なかった。
もう生きることも、どうでもよかった。
ご主人様が助けてくれたときも、最初は信用出来なかったし
噛みつきもした……。我ながら愛想も全くなかったなって思う。
でも、そんな私を……。可愛いって撫でてくれた。
ボロボロで、汚くなった私と、ずっと一緒にいてくれた。
噛みついても、物に当たり散らしても、ご主人様は自分が悪いわけじゃ無いのに、
「ごめんな……。人間って勝手だよな、でも。俺は、絶対花子を見捨てたりしない。だから花子……、大丈夫だよ。」
そう、言ってくれた。
すぐには、昔のことが忘れられなかったけど
ご主人様とずっと一緒にいるうちに、人間にも信用出来る人もいるって思えたし。なにより、ご主人様のことが大好きになった。
ご飯も、おやつも、散歩も、公園で遊ぶのも大好きだけど……。ご主人様が、一番大好き。
でもね……。こんなに好きなのに、ご主人様は、可愛い女の人が近くにいると、その人のことばかり見て全然構ってくれないんだよ。
しかも、胸の大きい人だと尚更。
私とご主人様は同じじゃないから仕方ないよね……、そう思ってた。
でも、この世界に来て目が覚めて、自分の姿が変わっていたことに気が付いたとき。
嬉しかった……。ご主人様と一緒の姿になれて、お話も出来て、何もかもが最高だと思った。
今度は、私が、ご主人様の力になれるんだって、そう思ったのに……。
はぁ……。
自分のステータスを見て、ため息をつく。
なんで、私って、こんなに弱いんだろう……。
ご主人様も、ステータスは「数字が大きいほど強い」、って言ってたし。
やっぱり……。『2』の後ろの数字が小さいのが、駄目なのかな……。
そう……、実は花子のステータスは「2^25(2の25乗)」と表記されていたのだ。
異世界にきて、最低限の知識を補完された花子だったが、少し右上に記された小さい数字が、どういう意味を持つか理解出来ていなかった。
実際には、3000万を超えるステータスを持っているはずの花子は思う。
私ってほんとダメ……。こんな私じゃダメだよね……。
でも……。もしも何時か……、私でも、ご主人様の役にたてる日が来たら、そうしたら、今までの感謝と、この気持ちをご主人様にぶつけよう。
それまでは、この気持ちに蓋をしよう。ご主人様に、相応しい相手になれるまでは……。
…
トントンと、ドアをノックする音がした。
「は、はひ!?」
変な声が出た。
ドア越しに、ご主人様が話しかけてくる
「おーい、花子大丈夫か?」
ご、ご主人様……!?
「だ、大丈夫です。なんでもありませんよ!」
「そうか? 昼はあんなに食べてたのに、さっきは、おかわりもしなかっただろ? だから、どこか体調が悪いのかと思ってさ……、まあ、大丈夫ならいいんだ。もし、体調が悪かったりしたら、すぐに言えよ?」
そっか……、ご主人様、私の事心配してくれたんだ。
「大丈夫ですよ! でも、女の子の部屋に勝手に入ったら、駄目なんですからね!」
泣き顔を見られたら余計に心配させちゃうよね…、だってご主人様は世界一優しい人だもん。
「そうか、ならいいんだ。明日は、早く村を出るからな、早く寝るんだぞ。」
「はい♪」
いつの間にか、ご主人様という太陽が、私の心に掛かった雲を晴らしてくれていた。
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