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打ち砕かれた野望。

 読んで頂きましてありがとうございます。

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 ネタバレ:次回で、花子の力が明らかになります。

 村へ戻る頃には、辺りはすっかり夕日で赤く染まっていた。


 すぐに宿に戻って、夕食にしてもよかったのだが……。

 魔物からドロップした品の数々を、路銀の足しに出来ないかと、情報を聞きに武器屋に来ていた。

 花子は「お腹が減ったよー。」と、文句を言っていたが……。の後の予定を立てるためにもまずは先立つものが必要だ。


「魔物からドロップした素材なら、この村だと防具屋で取り扱ってくれるぜ。それにしても、お嬢ちゃんたち結構頑張ったな。これなら、そこそこの額になるんじゃねぇか?」


 今日の探索で、俺たちは40匹程の魔物を倒していて、ドロップも其れなりの数になっている。


「しかし、喋るスライムなぁ……。」


 オヤジが、腕を組んで考え込んでいる。


 何度か倒した見た目の凄い魔物は、突然変異のスライムらしく

普通は喋ったり、鳴き声を上げたりすることは無いそうだ。


「でも、あのスライム……。喋ってたよね?」


 チカちゃんが、同意を求めて来た。


「ああ、確かに喋ってた……。でも、他のスライム同様弱かったぞ?」


「うん、結構弱かったよ!」


 倒した張本人も、そう言っている。


「うーん、言葉を理解できるような魔物ってのは、ものによっては国家騎士団が、十人近く集まってやっとのこと討伐出来るようなもんでな。言葉を喋るってことが、危険な魔物を判断する一つの材料にもなったりするもんなんだがなぁ。」


「そういえばあの魔物、自分が魔族だとか言ってたけど……。短刀を装備しただけの、攻撃力が220しかない花子に一撃で倒されてたぞ。この短刀が、何か特別なのか?」


「いや、その短刀は普通の短刀だ。俺が言うんだから間違いない。」


「そうだな……。そこらに魔族がいるはずが無いし、もし、本当に魔族だったらステータスは軒並み10万を軽く超えているはずだからな……。元が突然変異の奴だ、喋る奴がいてもおかしくないか。ガッハッハ。」


 今日の出来事をひとしきり話した後、オヤジに情報の礼を言い

 俺たちは、武器屋を出て防具屋へ向かった。


 勝手に納得して笑ってはいたが、あのオヤジ……。そんな大事な情報があるなら、キチンと最初に伝えておけよな。もし、あの喋る奴が本当に危険な奴だったら、俺達あそこで死んでたぞ……。


 道具屋のオバちゃんに、手に入れたドロップの確認をして貰いながら、心の中で毒づく。


「おや? これは、どうしたんだい?」


 おばちゃんが、最初に手に入れた漆黒の爪を手に取り訪ねてきた。


「あぁ。それは、ここら辺の名物スライスからドロップした物だ。」


「へぇ、色々落とすとは聞いてはいたけど、そんなこともあるんだね。」


 オバちゃんが言うには、この素材は、優れた武器を作るのに適しているそうなんだが、如何せん、知名度の低さと、加工出来る職人が限られるため素材の良さの割には値があまり付かない物らしい。


「あんた達、隣町に用があるんだったね。だったら、紹介状を書いてあげるから鍛冶屋の『グンタス』ってのを訪ねて、この素材を加工して貰うといいよ。」


「ほら、そこに飾っている盾があるだろ。それは、グンタス製さ。」


 最初に来た時に、金貨5枚と言われたあの盾を、指差して教えてくれた。

 本当は、金貨にしたら20枚以上の価値はあるそうなんだが、値段はオバちゃんが売ってもいいと思った相手には、安く値段を言っているそうだ。


 そうこうしているうちに書き上げた、一枚の紹介状と、素材の引取り代金の銀貨432枚を、オマケしといたからねと手渡してくれた。


 武器屋のオヤジが、そこそこの額と言っていたので、金貨数枚くらい行くんじゃないかと思ったのだが……。世の中、そんな簡単にはいかないよな……。


 それでもオバちゃん曰く、名物スライスからのドロップは、どれも其れなりに価値のあるものだったようで


「あんたら、かなり運がいいよ。」


 と、感心していた。


「花子ちゃん、って言ったっけ? これから大変だろうけど、頑張りなよ! オバちゃん、応援してるからね!」


「はい、頑張ります!」


 何やら優しい目で、花子をそう応援していた。


 花子はステータスが低いからな……。オバちゃんもそれで気にかけてくれてるのかな?


「女の子を泣かせるような真似をしたら、承知しないからね!」


 店を出るとき、最期にオバちゃんにそう釘を刺された。



 宿に到着するなり、花子がお腹が減って限界と騒ぐので、まずは夕食を食べることにした。


 今は、料理が用意されるのを待っているところだなのだが……。


 俺はというと、この先のことで頭がいっぱいだった。


 この先に待っているであろう大変な事実の前に、俺の思考は留まることを知らなかった。


  そう、俺は……。チカちゃんと同じ部屋で過ごす一夜のことで頭がいっぱいなのだ!


 元の世界にいたときにもの、異性と少ないながらも交流はあったのだが……。

 常にいい人止まりで、気がつけば彼女居ない歴=年齢のまま、高校時代という青春が幕を閉じようしていた。


 そんな彼に訪れた、一夜を女の子と過ごせると言う好機に、妄想が止まらなかったのだ。


 同じ部屋で過ごすってことは……。当然着替えとか……。それで見えてはいけない何かが見えてしまったり!?


 当然、添い寝だよな……。


 ゴクリと、生唾を飲み込む。


 寝てる間に、知らぬ間に抱き合っていたり、胸を触ってしまうなんて、ハプニングもあったり……。ウヘヘ。


「あ。ご主人様が、いやらしい事を考えてる顔してる!」


 ま、また花子の奴余計なことを!


 チカちゃんが、座った目でこちらを見ている。


「い、嫌だなー……、花子。俺がそんなこと考えてるわけないじゃないか、はっはっはっ。」


 なるべく、平静を装いながら答える。

 するとわかってくれたのか、チカちゃんはニッコリ微笑んだ。


「そうだよね。扇お兄ちゃんが、そんなこと考えるわけないよね。」


「も、もちろん。その通りだ!」


「じゃあ、当然、お兄ちゃんは、花子お姉ちゃんと僕とは、別の部屋に寝るんだよね?」


「は、はい……。もちろんです……。」


 そうして、童貞の儚い夢と希望は、見事に打ち砕かれたのだった。


「えっー。私は、ご主人様と一緒に寝たーい!」


「いや……。花子は俺と一緒はだめだ!」


 確かに、今の花子は顔も可愛いし……、胸も大きい……。はっきり言えば、好みのタイプなんだけど……。


 それでも、元の世界に戻れば花子は犬なのだ。


 男は頭ではわかっていても、どうにも止まらないときがあるからな…。


 君子、危うきに近寄らず。だ。



 そうこうしている間に、運ばれて来た、この村の名物料理を食べながら

全員で明日からの旅に向けて、現状の確認をおこなう。


「銀貨が1980枚程度、そして持ち物は、サントンさんから貰った保存食が五日分ほどだな」


「これだけあれば、二日程度の距離の隣町にには問題ないだろう。」


 そして……、次に確認した花子のステータスで驚愕の事実が発覚してしまった……。


「え……!? 花子……。それ本当か? それが事実だとしたら……、凄いな……。」


「お、お姉ちゃん……。まさかそんな……、嘘だよね?」


 俺も、チカちゃんも、花子が告げた事実を素直に受け入れられずにいた……。


「本当だよ、ご主人様。本当に、レベルの横に限界レベルって書いてあるもん。」


 そう、花子は今日の戦闘でレベルがカンストしてしまっていたのだ。しかも俺たちが一番驚いたのは、レベルがカンストしたことでは無かった。


 カンストした花子のステータスを聞いて、俺は卒倒しそうになった。


 花子が告げた、驚愕の事実はというと……。


 花子曰く、レベル15で限界レベルに達しているらしい。

 たったレベル15で、カンストというのにも驚いたんだが――。

 それよりも驚いたのが、全ての基本ステータスが、初期値から一律プラス5しかされていなかったということだ。


 つまり、花子のステータスは、全て225ということだ。


 圧倒的なまでの弱さだった。


 いくらなんでも、弱すぎるだろ……。


 レベルが上がったときに追加されたと言っていた、状態異常耐性能力と、追加体力補正能力で体力が5千増加しているのが、せめてもの救いだ。


 花子は、冒険を諦めたほうが正直いいのかも、と思ったが、新しく覚えた技能が中々に優秀なようだった。


魔獣強化(ストレンジビースト)

 使役している魔物の基本攻撃力を2倍に高める。

 リキャストタイム:15分、持続効果:3分


『説得』

 魔物を説得することで使役出来る可能性がある。

 ただし、必ず成功するわけでは無い。


 序盤は、まだなんとか乗り切れそうだが……、先々のことを考えると

花子のステータスの低さは、相当に厳しいな。


 暫く様子をみて、今後の方針を考えるほかないか……。


「花子は、今日練習した通りに一緒に戦うときは、サポートに徹するんだぞ。」


「えー。レベルが上がったら一緒に戦っていいって、ご主人様言ってたのに!」


 そう言って、花子が膨れる。


「あのな花子……。ステータスってのは数字が大きいほど強いってことなんだぞ、自分のステータスを見たら、自分が弱いってわかるだろ?」


「花子が弱い分は俺が頑張るし、守ってやるから心配するな。」


「はーい……、ご主人様の言う通りにするね……。」


 花子は、どこか物寂しげに、そう答えた。

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