受け入れがたい現実。
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あなたのために書いていると言っても過言ではありません!
え……?
花子さんが告げた言葉を反芻する。
「あ、あった使役しているビーストの名前は――。」
「私のご主人様の、扇祐樹さんだ!!」
自分が、魔獣使い(ビーストテイマー)に使役されている魔獣であるという事実に、頭が着いていけない。
その事実を受け入れることを、頭が拒否している。
あれ……。もしかして、俺ってモブ以下!?
いや、そんなわけないよな。だって、世界を救うために異世界から召喚されたのに、魔獣ってそんなのおかしくない?
これは、夢だ。そうに違いない、ならば早く目を覚まそう。
そして、ギュッと目を閉じる。
…
ユサユサと、犬の花子が身体を揺すってくる。
ああ、なんだ、やっぱり夢だったんだ……。良かった……。
「ご主人様。しっかりして!」
花子は優しいなぁ。俺のことを、心配してくれるなんて。
――ん? 何で……、花子が喋ってるんだ?
違和感に目を開けると。花子さんが俺の身体を揺さぶりながら、必死に声をかけてくる。
「ご主人様。しっかりして下さい。」
二十代に見える可愛い女性が、どうみても学生の俺に、ご主人様と縋る姿はどう周りに写るのだろうか……。
――考えたくない。
「ご主人様。せっかくご主人様と一緒になれたのに、なんでずっとそっけない態度なんですか!!」
「ご主人様が穴に落ちていって、ご主人様を追いかけて飛び込で、気が付いたこんな風になっていて――。」
「少し戸惑ったけど……。ご主人様もいるし、夢が叶ったって思ったんです。」
呆気に取られていたが、段々と花子さんの――いや、花子の言っていることが理解出来て来た……。
恐らくは、こうだろう。
本来であれば、1人で召喚されるはずのところに、花子が飛び込んだせいで、俺と花子の要素が、混じって色々おかしくなった。そうとしか考えられん。
本来なら俺が勇者で、花子が魔獣だったんだんだろうな。なんで、主従関係まで逆転しちゃうんだか……。
原因がわかっても、既に目の前にある結果は変わらない。
そのことに思い当たり。俺は、また落ち込んだ…。
「すごく違和感があるけど、花子が、俺の花子だってことはわかった。」
「でも、なんで俺より年上な感じなんだ? まだお前は、4歳くらいだろ?しかも、その胸……。」
視線を花子の胸に移すと、そこにはGを超えるであろう、戦略兵器と言っても過言ではない、『それ』が鎮座していた。
「年のことはわからないけど……。胸はね、ご主人様が散歩中に胸の大きい人に目が釘付けで、構ってくれないことななん度もあったから、胸が大きくなりたいなって願ったの!」
「そ、そんなこと、あったかな? ははは。」
「あったよ! さみしかったんだから!」
そんなやり取りに、メガネが口を挟んで来た。
「お、扇さん。失礼ですが、お二人は、どんなご関係でしょうか?」
その場の全員が、よくぞ聞いてくれたという顔をしている。
「あー。こいつは俺の犬だよ。」
その瞬間、四方からもの凄い冷たい視線を感じた。
し、しまった。今の言い方だと完全に……。関係を、人間性を誤解されている……!
「違っ――。」
俺が喋る前に、花子がトドメの一言を放つ。
「そうです! 私は、ご主人様に毎日可愛がって頂いていますよ!」
「そ、そうですか。二人のご関係については、今後触れないようにします。」
イケメンは軽蔑の目で見ているし、白石に至っては汚物を見るような目でこちらを見ている。
あ! 幼女まで可哀想なものを見る目で、こっちを見てる。
今更、どうみても犬に見えるはずのない花子を「元はうちの飼い犬です。」、なんて言おうものなら、きっと頭までおかしいと思われるよな……。
終わった……。
「それでは、そろそろ話しを進めたいのじゃが。宜しいかな?」
「話しは前後してしまいますが、才能について先ずはお話し致しましょう。」
話を要約すると、こうだ。
産まれた時点で、いくつかの潜在才能が決まっている。
才能は、成長の過程で、今までの経験や指向性から、潜在才能の中から自動的に獲得される。
普通の人間は、通常4~7の潜在才能しかないが、勇者の場合はかなりの潜在才能を持っているらしい。
「唯一の例外を除き、他人からは、ステータスや潜在才能を視る方法は存在せんのでな……。この魂の写し鏡を、自身の手に携え覗き込んで御覧なさい。ご自身の潜在才能が見えるはずじゃ。」
「では。まずは、僕から試してみます。」
イケメンはそういうと、鏡を覗き見みる。
「あ! 見えてきました。剣士、魔法剣士、武闘家、吟遊詩人、鍛治師など40ほどの名前が見えますね。」
「何も見えないよ?」
横から覗き込んでいる白石が、首を傾げている。
「先ほど申し上げたように、ステータスや隠された才能は、他人から視ることが出来ません。しかし、流石勇者殿。この世界で天才と言われるものでも、20に満たないものなのですが……。」
メガネ、白石も、イケメンほどではないにしろ、30程度の適正がうつしだされたようだ。
次に、花子が試すと……。
「一つだけ見えるよ。神殺しっ書いてある!」
花子少なっ! てか『神殺し』っ物騒過ぎるだろ。
「な、長年生きてきましたが……。そんな才能は聞いたことがないですなな。まあ、異世界の勇者様ですから、こういうことがあっても不思議では無いですが……。」
次は、俺だ……、頼む一発逆転来てくれ!!
鏡を握りしめるが、一向に写る気配がない。
「あの……。何も写らないんですけど?」
「あ、扇様は魔獣なので、適正が無いのかもしれませんな。」
嘘だろ……。勇者ですら無いばかりか、才能もなしとか……。
ありえねぇー!! これじゃあ、最弱街道真っしぐらじゃん。
最期の幼女はというと……。
「えーと。僕には50種類はくらいの適性があるみたいです。」
「こ、こちらは、さらに凄い適正数ですな……。」
幼いのに、この状況で一番落ち着いているようだし、適正も一番多い……、しかも僕っ娘だ……。
僕っ娘幼女に、小声で話しかけてみた。
「チカちゃん、よくこんな状況で落ち着いられるね? 怖くないの?」
「あ、はい。僕、最初は少し怖かったんです。でも、話しを聞いてるうちに、前に聞かせて貰った話しにそっくりだなって思ったら、あんまり怖くなくなったんですよ。」
「そっか、まだ小さいのに偉いね。」
「む! 子供扱いは、やめて下さい。よく身長のせいで、小学生とかに見られますけど、僕は、もう14歳なんだよ!」
「そ、そうなのか……。ごめんっ!」
見た目は小学生なんだけど、一応これでも中学生のようだ。
幼女の胸元を見て思う。
身長だけの問題じゃないんだけどな……。
「わかればいいんです。」
この子も、某小説投稿サイトの読者だったのかな? それで理解が早かったわけか……。
「話が前後しまったが、この世界の現状について、少しお話させて頂きましょう。」
話を要約すると、概ね、このような内容だった。
この世界には3つの国があり、それぞれ人間の国『フリース』、獣人の国『グルド』、魔族の国『ドルネイ』となっている。
勢力は大きい順に、フリース、続いてグルド、続いてドルネイとなっており
種族としての個々の能力は、勢力とは逆順に高くなっている。
ドルネイは、三百年前に魔王が滅んだことで、魔族は大半の勢力を失い小国となっている。
フリース、グルドの両国は、融和政策を取っていた時代もあったが、今は、お互いに種族主義政策を取っている。
「今度の方針なのですが、世界を滅亡に導く存在がわからない以上。効率も考え、二手に別れ、それを突き止めて頂きたい。」
「一組は、この世界のどの勢力にも属さない封印されし土地『ホールレイル』での調査を。もう一組には、囚われている観測の賢者『ウルルス』様を探して頂きたいと思っておる。」
「わしは、ホールレイルに何か重大な鍵があると睨んでおるのだが、強力な魔物が棲みついているので、未開の地となっており、一筋縄ではいかんと予想出来る。そのため、より優れた戦力で臨みたいと考えている。」
「一方のウルルス様は、世界の異変察知に長ており、勇者救済預言の信者という理由で、現在はこの国、フリースに囚われており、居場所は国王のみが知るそうじゃ。」
ん? ちょっと待てよ。
「その勇者救済預言の信者っていうのは、いったいどういうことだ?」
「実はですね……。」
サントンから伝えられた事実は、衝撃だった。
勇者救済預言とは、俺たちが召喚されるきっかけとなった預言なのだが
現国王は、それを破滅主義者が風潮し国を混乱に陥れようとしている、という見解を打ち出し、預言を信じる者は、拘束され監禁されているのだと言う。
要するにだ……、お約束の国からの支援だとか、勇者の肩書とかは使えないってことじゃんか。
これって、結構ハードモードだろ……。
「すまぬな、本当ならば十分な支援をしたいところなのだが……。わしらが用意出来たのは幾ばくか路銀と、旅の必需品だけじゃ。」
先ほどから話の合い間に、自身のステータスを確認していた俺は、改めて自分のステータスを見直す。
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レベル:3
体力:2900
攻撃力:2500
防御力:2800
魔力:1
魔力抵抗力:300000
能力:なし
技能:穴掘り
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魔力は絶望的だが、魔力抵抗力という項目だけが突出して高い。
どうせなら、攻撃力が高いとか、防御力が高いとか、わかりやすい強さが良かったな……。
技能の『穴掘り』って、戦闘の役に立つのか?
「ルーメミラさん、獣人とか魔族って、どれくらいのステータスなんですか?」
俺は自分の強さを知るために、比較対象の情報を求めた。
「わかりました。お答えしましょう。」
いろいろと、教えてくれた内容を纏めると、こうだ。
一般的な兵士の能力は、1つの能力値が2千~5千程度で
歴戦の戦士や冒険者、超越者などは5万を遥かに超えることもあるそうだ。
獣人は、人間の数倍の能力値を持っている場合があるそうで、獣人の王などは、50万ものステータスを持つとも言われているらしい。
魔族は、獣人のさらに数倍の力を持つ者もいるようだが、詳細はわからないようだ。
「皆さん。ステータスを申告し合い、ホールレイル探索メンバーと、ウルルス様救助メンバーに別れ、パーティーを組みましょう。」
メガネの提案に、各々がステータスを申告した。
黒髪女子高生は、レベル3で、各ステータスの平均は7千5百程度。体力と魔力抵抗が若干高めで、能力として土属性魔法。技能として楽器の補正能力と、能力の効果に関連する技能があるそうだ。
メガネは、レベル4で、各ステータスは物理系統が平均1万程度、魔法系統が平均2万と、魔力寄りのステータスで、能力として、風、火属性魔法、技能として魔法系の補正が幾つか。
イケメンは、レベル5で、各ステータスは平均すると1万5千程度のバランスの良いステータスだ。能力として、聖属性魔法、回復魔法が。技能として物理攻撃、防御の補正されるものが幾つかと、状態異常耐性。
チカちゃんは、レベル1で、物理系統が平均1千程度だったが、魔力系統は、なんと平均5万近いらしい。
能力は、火、水、回復。技能として、魔法に関する補正能力と状態異常耐
性。
そして最後に、少し首を傾げながら申告した、花子のステータスには一同に驚愕を与えた。
花子は、レベル10で、この中では一番レベルが高かったのだが……。
なんと……。各ステータスが220だった。
能力は、魔獣治療、魔獣召喚、魔獣信頼という、魔獣使い(ビーストテイマー)に関連していそうな能力と、技能に体力を補正するものがあるようだが。
その補正も体力が+500されるだけのものだそうだ。
イケメンはバランス良く能力が高い、まさに勇者タイプ。チカちゃんは、魔力が半端ないけど紙装甲。メガネは、魔力寄りのバランス型。白石はこのメンバーの中では平均的に能力が低くこれといった特徴は無いようだ。
花子のステータスが低過ぎるのは、元々が犬なのが影響してるのか……?
ルーメミラによれば、イケメン、メガネ、黒髪女子高生は、低いレベルで既に一般兵のステータスを軽く超えていて、相当に凄いことだと言っていた。
俺も、レベルから考えれば決して低くは無いようなのだが、三人と比べるとやはり見劣りするが、魔力抵抗力だけは既に人類最高峰に達しているそうだ。
チカちゃんの魔力関連ステータスは、現状で、魔術師団隊長クラスとのことだった。
花子については、ノーコメントだった。
「ステータスから、メンバーを振り分けて見ましたが――。」
メガネの提示したパーティーは、次の通りだ。
五十嵐、白石、桐生がホールレイル探索パーティー。
俺、花子、宇佐美がウルルス救助パーティー。
「ただ、宇佐美さん……。扇君と一緒で、その、大丈夫ですか?」
そう言って、メガネが幼女に申し訳無さそうに確認を取っていた。
「うん、平気。扇お兄ちゃんだけじゃ、花子お姉ちゃんを守れないと思うから、扇お兄ちゃんより強い、大人の私が面倒を見てあげるね!」
子共扱いしたことを根に持ってるな、これ……。
まあでも、メガネの提示した組み合わせは、妥当な線だな。
俺、花子は、ほぼ戦力外だし、紙装甲のチカちゃんを、強力な魔物がいるところに連れて行くのはリスクが高い。
「これから、ご主人様と冒険が出来るんですね! 私、とっても嬉しいです♪」
全てのステータスが、たった220の花子は、何も考えていないのか、無邪気にはしゃいでいる。
それにしても。
やはり俺が主人公枠というのは、無理があったよな……。
「目的もパーティーも決まった。それじゃあ、みんな、世界のために頑張ろうぜ!!」
「「おっー!!」」
……イケメン流石っす。
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