獣人の国。 ②
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獣人の国の話は、あと2~3話で終わる予定です。
今日時点で冒険ジャンル、週間24位、月間31位でした。
皆様のおかげです、ありがとうございました。
グルドへは、馬車なら二日程度で到着出来る距離だが、道中や、野営ときにも魔物に結構な頻度で襲撃にあっていた所為もあり。目的地の『ケルト村』までは三日を要していた。
サンザストへの道程と比べ、明らかに魔物との遭遇率が高いのは、このあまり整備の行き届いていない街道に、魔物除けの術式が施されていない為のようだ。
この街道で遭遇する魔物は、どれも村周辺にいた敵よりも強かった。ただ、強いと言っても、大怪我をするほど危険でもなかったが……。
魔物との遭遇率が高いため、チカの疲労が心配していたんだけど、サンザストで、ショートソードの代わりに銀貨370枚で購入したサーベルと、花子のスキル『魔獣強化』のおかげで、俺の攻撃力は1万に到達していたので、ダメージリソースとしてある程度活躍が出来たことと、意外な白の活躍で比較的楽にここまでこれたのだ。
野営のときに、休ませていた白が魔物に襲われたのだが、俺たちが手を出すまでもなく、角の一撃で魔物を粉砕していた。
多分……、いや、確実に白の攻撃力はブーストした俺よりも高い。
白よりも弱いのは、流石にちょっとショックだった。
自分以外のステータスが確認出来ないってのは、思った以上に不便だ。
思ってもいないような相手が、物凄く強いなんってこともあるってことだからな、これまで以上に注意して相手を観察することにしようと、心に決めた。
村に到着した俺たちは、第一村人を発見して声をかけ、村長の家の場所を教えて貰っていた。
偽装ケモ耳のお陰か、その獣人の女性の受け答えは至って普通の対応だった。
「獣人って、凄いな……。」
獣人の国なのだから当然なのだが沢山の獣人を見かけ、観察することで、獣人の特徴が見えてきた。
一言で獣人と言っても、姿形は様々で、犬耳、猫耳、熊耳など様々な種類が見て取れる。また、顔の造形も獣に近いタイプもいれば、人間に近いタイプもいたりと多種多様だ。
ただ、どの獣人もケモ耳だけは確実存在していたので、それが多種多様な獣人が、獣人たるかを判別する唯一の判断材料というのも、ここに来てようやく納得できた。
そして、もう一つ重大な特徴があった……。
今、前から歩いてくる、あの獣人にも特徴に当てはまっている。俺は、あの獣人のある一部を注視し目を逸らせずにいた。
そう、これまで見た、他の獣人の女性同様、この獣人もおっぱいが大きいのだ!
花子ほどのサイズは、流石に滅多にいないが、例外無く全ての獣人女性は巨乳らしい。
「ご主人様の悪い病気が……。」
「まあ、扇お兄ちゃんの場合は、いつもの事だね……。」
横の二人は、流石に呆れた様子で、そう話していた。
(でも、男の人って、みんな大きいほうが好きなのかな……。)
チカは、そんなことを考えながら、自分の胸に目をやり、溜息を付いた。
ここは宛ら天国だな……。もう旅はやめて此処に住むのもありかもしれないな。
巨乳のケモ耳美少女達に囲まれてこの異世界でずっと暮らすのも悪くないかも――。
「――そこのお前、ちょっと面貸せや。」
声を掛けられるまで気が付かなかったが、俺が妄想で夢中になっている間に、いつの間にか若い獣人の男達に取り囲まれていた。
な、なんだ、コイツら?!
「そんな変装で誤魔化せると思ったのか? そこの変な耳付けてる人間の男!」
そう、ハイエナ風の獣人が声を荒げ、俺に向かって吠えている。
アックスさん、やっぱりカバ耳はケモ耳じゃないですよ……。
「貴方たちは何? ご主人様に何の用?」
「い、いや……。ど、同族には用は無いんだ、とにかくその人間を渡してくれれば、それでいい……、です。」
な、なんか花子の雰囲気が、いつもと全然違うんだけど?!
表情は笑顔なんだけど、物凄く高圧的というか、有無を言わさない感じというか……。
相手の獣人の男も、花子に気負けし、何だか、しどろもどろになっているし。
「に、人間なんかの奴隷に成り下がりやがって、獣人としての誇りは無いのかよ!」
気負けしていた獣人に変わって、キツネ風の別の獣人がそう叫ぶ。
こいつも花子に、ちょっとビビッてるんじゃ……?
「止めろ。あいつは奴隷の烙印を受けているんだ、きっとその所為だろう。見ろ、大人しい体質の兎族の子供まで奴隷にしてやがる……。外道が!」
「そ、そうか……。流石はルズ兄貴だぜ!!」
この集団のリーダーと思わしき熊の姿をしている、ルズと呼ばれた獣人が、そういうと。気負けしていた獣人も本来の調子を取り戻したようだった。
「い、いや、誤解しているぞ。花子もチカも奴隷なんかじゃない。」
「そうだよ。扇お兄ちゃんは変態だけど、人を奴隷にするような人では無いよ!!」
フォローは有り難いんんだけど……。変態は余計だ!!
「こんな子供にまで……。やはり人間は屑ばかりだな。」
チカの一言で、トンデモナイ誤解が生まれてしまった。
この状態で弁解続けても効果は無さそうだ。
こうなれば仕方ない、チカと花子に危害が及ぶ前に、何とか俺だけで解決するしかないか……。
俺たちは、4人の獣人に四方を囲まれていて身動きが取れない。
もし戦うにしても、今の俺たちの実力だと、下っ端獣人の一人を相手出来るかどうかだろうな。
幸いなことに、チカと花子は獣人だと思われているようなので、手を出さなければ直ぐに危険が及ぶということは無いだろう……。
「チカ、花子、お前たちは仲間だと思われているみたいだからな。今は大人しくしておくんだ、俺が何とか話し合いで解決してみる。」
そう二人に小声で告げ、俺は馬車から降りてルズの前に立つ。
で、でかいな……。
身長は2m近く、どっしりとした体系で全身茶色の体毛で覆われている。この獣人の顔は獣に近く、実際の熊の体型を人間に少し近づけると、この獣人の様になるのだろうと思った。
「後ろの二人には危害は加えないで欲しい。出来れば、どうにか話し合いで解決したいんだが……。」
巨体を目の前にして、弱気になりそうな気持ちを抑え、ルズとの交渉を試みる。
「クズの癖に、いい度胸だな。元より同族に危害を加えるつもりは毛頭ない、手を出してくれば話は別だがな……。貴様は、この場で殺してしまってもいいが、安易に殺してしまえば奴隷の烙印の呪いによって、馬車の二人も最悪は死んでしまう可能性もある……。」
「そうだな。お前ら、こいつをアジトに連れて行け。後ろの二人はそれまで別の場所で保護する。」
くっ! やはり話し合いでの解決は出来なかったか……。でも最悪、二人の安全は確保されている。
奴隷の刻印云々で勘違いしてくれたおかげで、直ぐに殺されることは無いだろうから、その間に如何にか隙を見て逃げるしかないか。
「お前は、こっちにきやがれ!」
俺に凄みを利かせてくる、キツネ風の獣人に掴まれ俺は馬車から離されていく。
その時。
「我が僕に命じる。 魔獣召喚!」
そう花子が叫ぶと同時に俺は光に包まれ、花子の横へと転送されていた。
「「――な!?」」
「ご主人様は、絶対に、誰にも渡さない!」
獣人たちは一様に、目の前で起きた出来事に呆然とし――。
次回は16日投稿です。
そろそろ本気でストックを作らないとマズイ予感。




