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獣人の国。 ①

9日の更新が10日になってしまいました。お待たせして申し訳ありません。

いつも読んで頂けている方、初めての方、読んで頂いてありがとうございます。

「ねぇ。扇お兄ちゃん。この馬に何か名前を付けようよ。」


「そうだな。せっかく仲間の一員になったんだから名前くらいは付けてやるか。」


 馬を手に入れた俺たちは、その足で天使の歌声に向かって歩いていた。

 俺は、チカが手綱を引いている馬を見ながら、何か良い名前は無いかと考えてみる。


(青い瞳、真っ白な体……、そうだ!)


「ブルーアイズホワイトホースなんてのは、どうかな?」


「なにそれ? 変なの。扇お兄ちゃんって、あんまりセンスないんだね~。」


「そ、そうか?」

(某最強モンスターに(あやか)った、この中二心を擽るこのネーミングセンスがわからないとは……。やはりお子ちゃまか。)


「花子は、何か名前思いついたのか?」


 さっきから、ぼーっとした表情で、馬を見つめていた花子に聞いてみる。


「うーん。……サクラ?」


 そう答えると同時に、花子のお腹から、これでもかという位に空腹を主張する音が聞こえてきた。

 花子に見つめられている、馬のほうを見ると、怯えた目をしながら小刻みにプルプルと震えている。


「それは、馬に付けるのは色々拙い名前だから却下!」


「えー。美味――いい名前だと思ったのにな。」


 花子が、美味しそうな名前と言ったような気がしたが、気のせいだよな……。


 天使の歌声に到着するまで、議論をしていたのだが。結局、名前はチカの案が採用され、単純に『(しろ)』という名前で落ち着いた。



「あら。もう馬を手に入れて来たんですね。しかも、一角獣(ユニコーン)なんて珍しい種族を良く見つけて来ましたね。」


 朝に一度ここを訪れて、今は、丁度お昼を過ぎた所なので、馬を調達するのに数時間しかかかっていなかった。


「依頼をお願いするには、馬車が必要なんですが――。」


(し、しまった。馬だけいても意味ないじゃん。)


「――今回は急ぎの案件でもありますので、特別にギルド所有の馬車をお貸しします。 本来であれば2頭で引くサイズの馬車ななのですが、一角獣(ユニコーン)であれば問題ないでしょう。」


「あ、ありがとうございます!」

(アックスさん、本気(まじ)で見た目以外は天使だ!!)


「この依頼の報酬は銀貨100枚なので、頑張って下さいね。」



「僕。やっぱりまだ、ちょっと早いと思うんだけど……。」


 チカは恥ずかしそうに顔を伏せ、指と指を絡め落ち着かない様子で忙しなく動かしている。

 恥ずかしさからか、顔は少し赤く染まっているように見える。


「そんことないさ。こいうのは慣れが大事なんだ。だから、今から準備しておくことに意味があるんだ。」


 俺たちは、今、アックスさんに借りた馬車に乗り込み、依頼の目的地へと向かっていた。

 花子は、町を出る前に取った昼食の所為か、「ご主人様。少し眠くなっちゃいました。」と言って、馬車の奥で丸くなって昼寝をしている。

 (よだれ)が垂れているような気がするが、夢の中でも何か食べているんだろうか……?


「でも、やっぱり。僕、こういうのに慣れてないから……。」

「俺だって、こんなことするのは、初めてだ。だけど俺たち二人には、この先必要なことだろ?」


 そう言って俺は、チカをまじまじと見詰めた。

 普段から可愛いとは思っていたが、今のチカは普段の何倍も可愛く見えた。


「扇お兄ちゃん……。僕、そんなに見られたら恥ずかしいよ……。」


 そういってチカは、恥ずかしい部分を両手で必死で隠そうとするが、その成果は、あまり出ていないようだった。

 チカのそんな姿に、もはや俺にとっては、金欠とか、異世界が滅ぶだとか、元の世界に帰れないとか、そんな問題達が些細なことのように感じていた。


「俺だって同じ恰好なんだぜ? 恥ずかしいのは一緒なんだから大丈夫さ。」


 俺はそう言いながら、チカが必死で隠している部分がどうしても気になっていた。


「チカ。ちょっとだけ、触ってみてもいいか?」


「う、うん。少しだけなら……、いいよ? 僕も、それ。触ってもいいかな?」

「ああ。いいぜ。」


 俺はチカが必死で隠そうとしていた部分に、手を伸ばしそっと触れてみた。

 チカも同じように、こちらに手を伸ばし手を触れてくる。


「チカは、柔らかいんだな。」

「扇お兄ちゃんのは、固いね。」

 

 触れたときに感じた感触を、お互いに口に出していた。

 

「僕。扇お兄ちゃんのそれ、結構可愛いと思うよ。」


「そ、そうかな? 俺は、チカのほうが可愛いと思うけど……。だってこれ、カバ耳だぞ?」


 そう実は、チカと俺は、お互いにケモ耳(?)を付けた、姿をしているのだ。


 チカはウサ耳で、俺はカバ耳の、偽装用ケモ耳をそれぞれ付けている。

 カバ耳を果たしてケモ耳と呼んで良いのか疑問は残るが……、とりあえずケモ耳という括りにしておこう。


 俺とチカが、何故ケモ耳を付けているかというと――。


 アックスさんから受けた依頼の内容は、獣人の国『グルド』に医療物資を届け、その帰りに、病気の獣人親子を町まで護送することだった。


 グルドでは人間差別政策がとられているのだが、人間だからといって、襲ってくる獣人は滅多いないそうだ。ただ、一部には憎しみを抑えきれず、危害を加えようとする獣人も、少数ながら存在するらしく。 そういった危険を回避するためにと、渡されたのがこのケモ耳だった。

 アックスさん曰く、獣人は、基本的にケモ耳が付いているかどうかで、獣人と人間を区別しているらしく、これを付けていれば大丈夫だそうだ。


 本当なら、グルドに到着する前にでもケモ耳を装着すればそれで十分だったのだが。何かと理由を付け、町を出る直前から、チカにウサ耳を装着させている。

 恥ずかしさからか、ウサ耳を付けることに抵抗があるようで、先ほどの会話のようなやり取りがあったが、なんとかウサ耳の維持に成功していた。


 チカの姿を改めてまじまじと見詰めて思う。

 (僕っ娘で魔女っ娘のロリっ娘に、さらにケモ耳属性まで加わって、最早チート級の可愛さだな。)


 俺は、ケモ耳の中でも、特にウサ耳が大好きなのだ。

次回は13日までに投稿致します。

この獣人の国の話が終われば、丁度前半折り返しくらいです。

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