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天使の歌声。

 いつも読んで頂いてありがとうございます。

なるべく読みやすい文章を心がけますのでよろしくお願いします。

「よし、チカ!昨日の打ち合わせ通りに頼む!」


 俺は、後方にいるチカに指示を飛ばす。


「うん、僕に任せてよ。」


 昨日の朝村を出て、今は、隣町の『サンザスト』が遠くに、小さく見える所まで来ていた。

 日が傾いてきているので、町に到着する頃には夜になっているだろう


 村を出てからの戦闘は、これで5度目だ。

 村周辺の森で魔物と戦った頻度に比べると、大分魔物が少ないことがわかる。


「防具屋のオバちゃんの言ってた通りだな。」


 なんでも、町と町を繋ぐ道には、特殊な魔術の術式が施されていて

魔物があまり近寄らないようになっているらしい。

 特に、首都に直接続いている町からの道に施されている術式は、非常に強力らしく魔物が現れることは滅多にないそうだ。

 そのおかげで俺たちは、野宿の最中も敵に襲われることもなく、すんなりとここまで辿り付けたのだ。


 チカは、昨日の打ち合わせ通り飛行型の魔物を、風の魔法で地面に落としていた。


 すかさず俺が、魔物に近寄り、羽を執拗に攻め再び飛び上れないように攻撃を加える。


 そして――。チカが、雷の魔法で止めを刺した。


「よし!ばっちり打ち合わせ通りいけたな。」


「もちろんだよ!」


 無い胸を張って、チカは答える。


 昨日の打ち合わせで、飛行型の魔物が出た場合は

威力は低いが射程の長い風魔法を使って地面に落として、俺が魔物の足止め。そのあと威力は、高いが射程の短い雷の魔法で攻撃するという話をしていたのだ。


「ご主人様も、チカちゃんも凄いです。私も、強くなりたいな……。」


 花子はというと……、相変わらずの応援係りをさせている。


 町で武器と防具を揃えれば、この周辺の敵ならば問題なさそうだな。

 魔物からドロップした羽を拾いながら、そう考えていた。

 村からここまでに出会った魔物は、村周辺の敵と大差が無いというか……、寧ろ少し弱いくらいだった。


「日が暮れる前に町に急ごうか、取りあえず宿を取って、飯にしよう!」


「やったー。私、お腹ペコペコだよー。」


 保存食を俺やチカの倍は食べたくせに、まだお腹が空いているのか……。

 一昨日の夜は食欲が無くて心配したんだが……、全くの杞憂だったな。


 そうして俺たちは、サンザストの町へ急ぎ足で向かった。



 サンザストへ到着したときには、もう日が完全に沈んでしまっていた。

 もう少し早い時間に到着していれば、天使の歌声に行きたかったんだが

今からでは場所もわからないし、この時間だと閉まっている可能性もあるよな。


 やはり、まずは、宿の確保からか。


 町の人に宿の場所を尋ねると、この町には、宿が五つほどあるらしいということがわかった。

 そこそこの規模の町なので、宿も多いようだ。

 いくつか宿の場所を教えて貰ったが、その中でも比較的安価と聞いた宿へと俺達は来ていた。


「三泊程、宿泊したいのですが、一泊おいくらでしょうか?」


「はい、一泊一部屋で、お代は銀貨1枚となっております。食事のご用意は御座いませんが、宿周辺には食事処が幾つか御座いますので、そちらをご利用ください。」


「じゃあ一部屋……。い、いや二部屋お願いします。」


 つい願望が言葉に出てしまったが、チカの視線を感じ慌てて言い直した。



 宿を確保出来たので、俺たちは『モントモント』と、いう宿の向かいの店へ食事に来ていた。

 出てくる料理は、魚介を使ったシンプルな味付けの料理で、どこかイタリア料理に近い感じの印象を受けた。


「結構いけるな、これ。」


「僕は、こっちのパスタに似た料理が好きです。」


「ご主人様、美味しいですね!!あ、おかわり下さい。」


 花子は、早速おかわりを要求している。

 この分だと、銀貨2枚程度の支払いは覚悟せねば……。


 犬のときからそうだったが、人間の姿になっても、腹ペコキャラは変わらないらしい。

 チカが人並程度の食事量で、本当によかった……。


 村の名物料理も美味しかったが、ここの料理もかなり美味しい。

 異世界での食事に、多少の不安を持っていたが、この分であれば問題は無さそうだ。


 料理が美味しいだけあって、客の入りは多く、隣のテーブルは話し声が聞こえるほど近い。

 気になる話をしていたので、隣テーブルにいる二人組の男の会話を、それとなく聞いていた。


「凄かったな、天使の歌声……。やはり噂通りだったな。」


「あぁ……。俺も最初は信じられなかったよ……。天使の歌声なんて誇張されてるって思ったけどさ、実際聞いて納得したぜ。」


「ギルドの受付嬢が、あんなに可愛い声をしているなんてな、流石はギルドの名前になるだけのことはある。」


(ほう……。天使の歌声ってのは、受付嬢の美声が由来なのか。)


 どれほどの美声なんだろうな、今から聞くのが楽しみだ。

 明日はまず、天使の歌声に向かって、そのあとに武器屋と防具屋……、鍛冶屋にもいかないとな。

 そうやって、食事をしながら、明日の予定を朧気に考えていた。


 結局、その後も花子のおかわりは止まらず、支払いは銀貨2枚と銅貨55枚となっていた。

 花子、食べ過ぎだよ……。


 食事を終え宿に戻ったあとは、特に何事もなく、旅の疲れもあり三人共直ぐに寝てしまった。



 翌朝。


 俺達は町の人に天使の歌声の場所を聞き、その建物の前まで来ていた。


「天使の歌声は初めてなのか? だったら、美声にびっくりするだろうなぁ……。」


 天使の歌声の場所を教えてた町の人が、昨日の二人組の男と同じような内容を言っていた。


「なんでも天使の歌声の受付嬢は、凄い美声だそうだぞ、どんな人なんだろうな……。グフフ。」

 美声の持ち主と聞いて俺の妄想が止まらないでいる。


 そう、俺は声フェチでもあるのだ。


「あ、ご主人様が、何か変なことを考えてる!」


「最低です。」


 そんなやり取りを済ませ、俺は建物のドアを開けた。


「ようこそ。ギルド天使の歌声へ、受付はこちらになりますので、どうぞ、お近くにお越しください♪」


 俺は、あまりの衝撃に、その場から動けずにいた。

 チカも同じように衝撃を受け動けないようだ……。


 とんでもない美声だった。

 透き通っていて、それでいて愛らしく、神々しくもあり、ハッキリと言葉が伝わってくる。

 とても綺麗な女性の声だった。


 だが……。何かが違っていた……、重要な何かが……。


「ご主人様? 今、あのオジサンが喋ったのかな?」


 そう、俺達の目の前にいるメイド服を着た筋肉質のおっさんが、この美声の持ち主だったのだ……。

次回は7月2日までに投稿です。

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