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偽夢語-ニセユメガタリ-  作者: Joi
第一部
31/33

中途閉幕Ⅲ

 十里に御馳走してもらった夜ご飯はなかなかに美味だった。趣味が料理だったところが意外で、陽太とは話が良く合った。


 泊まる場所についての話題をしていたところ、「じゃあここ泊まれば?」と十里に言われ、行く当ての無い上、怪我も完治していない事から陽太達はお言葉に甘えて泊まらせてもらう事にした。


 真琴は帰ると言ってアパートを出ようとしたのだが、


 「君が敵に右目を潰される事になったら、僕はきっと君の柔らかい双丘や陰部を好きなだけ弄るだろうね」


 という強迫(?)により、彼女は麗子と共に別の部屋に泊まる事になった。


 男子陣は部屋の少なさ故に手術用の部屋で寝る事になった。薬品やいかにも病院といった風の道具がびっしり存在する空間で寝るというのは、何故か落ち着かないものだった。


 「やっぱ自分の家が一番だなー」


 そう口にする剛に、陽太も内心同意せざるを得なかった。


 十里はニコニコしながら、


 「じゃあ自分ん家行っても構わないよ?途中殺人鬼に殺されても知らないけど」


 と冗談混じりに言って、二人を本気でビビらせたのだが。


 かくして、パラレルワールド一日目は右往左往しながらも終わりを告げたのだが――


 陽太にはまだ、やる事があった。


 深夜一時頃。


 就寝に入ってから数時間経つ現在。だがしかし、陽太はいまだに眠れずにいた。


 環境も理由に入るのだが、それ以外の理由の方が眠れない原因に近かった。


 そしてその理由を確かめるべく、室内を出ようとしたところで、十里に声を掛けられた。


 「どうしたの?トイレかい?」


 爆睡する剛を気遣い小声で問いかける十里に、陽太も小声で素直に伝える。


 「ちょっと、雨宮と話してきます」


 すると、十里は苦笑しながら言葉を紡ぐ。


 「素直で良いね。でも、中には殺し屋さんがいるから入らない方が良い。メールか何かして気付かせるしか無いね」


 「そうします。ありがとうございます。アパートの前で話してきます」


 「周りには気を使ってね」


 「はい」


 会話を終え、静かにドアを開ける。そこからまた静かにドアを閉め、隣の部屋に目を向けたところで――


 「おおっ!?」


 小声ながら陽太はびっくりして視線の先を見つめる。そこには、ジャージ姿に着替えていた麗子が同じくこちらを凝視していた。


 そこで、二人は同時に笑ってしまった。考えている事は同じなのだろう。


 二人は静かに玄関を出てアパートの前に行って、そこで初めて会話をする。初めに口を開いたのは麗子だった。


 「どうやら、考えてた事は同じみたいね。さすがに同じ時間に出ようと考えたのは気持ち悪いけれど」


 「気持ち悪いとか言うな」


 ジト目で麗子を見ると、彼女はフッと笑ってこう言った。


 「じゃあ、話しましょうか」


 *****


 人工的な静けさと涼しい夏の風が調和し、二人を邪魔せんとばかりに上手いコンディションを作りだしている。まさしく、そこには二人だけの空間があった。


 「まず……どこから話そうかな」


 「四年生の終わり頃の事件の後から話してくれ。詳しく聞いていない」


 陽太は夕食を取る前に麗子と話した会話がずっと気になっていた。


 自分の知らない過去。そこでの麗子との出会い。その時何があったのか。そして、彼女は自分の何を知っているのか。


 自分の記憶が一部消失している事を知っていた。それを彼女は本人に確認するような形で話した。全ては過去の中にある。陽太はそう考えていた。


 一番気になるのは、自分に対する告白だったが。


 ――『私も』って、俺は好きだなんて伝えた事は無いぞ。


 これに関しても、きっと過去に答えが隠されているのだろう。


 ――俺は知らなくてはならない。そして、俺も告白しなければならない。


 そう小さく決心しながら、説明を始めた麗子の言葉に耳を傾ける。


 「そうね……あまり言いたく無いけど。言うしか無いわ」


 そう言って、麗子は陽太から視線を逸らし、口早に話した。


 「戸田君に告白された」


 「……は?」


 自分の耳が聴覚機能の仕事を放棄したとしか思えなかった。陽太はその時その言葉が信じられなかった。それが嘘だと思えてしまう程だった。


 ――いや、雨宮が嘘を吐く筈が無い。ましてや、こんな真剣な時に。こいつはぶりっ子とか自慢屋じゃない。


 そう自分に言い聞かせながら、陽太は麗子に質問する。


 「その、なんだ。お前って昔から何でも出来る奴だったんだよな?」


 「自分で言うのは嫌だけど、それなりに何でもやってたわ」


 「その時の俺って度胸ある奴だったんだな……」


 今の自分には到底不可能な技だった。天才と謳われたクラスメイトを裸にしたという容疑を掛けられ――最終的には解消したが――それなのに、その少女に自分の想いを伝えるなんて、無謀すぎるのでは無いだろうか。


 ――小学生だからなんて話じゃ済まないだろ。絶対フるだろそれ。


「当然フッたわ。『私勉強の方が好きなの』ってね」


 「え!?俺勉強に負けたの?それ辛いぞ……」


 「それから一週間後ぐらいに戸田君は学校を出て行ったわ。おかげで私は憐みやら興味ありげな視線で見られたけれど」


 何故か麗子がこちらを睨んでくる。それ程までにクラスメイトからの見えない意図を感じ取ったのだろう。だからと言って陽太には何も出来ないわけだが。


 とはいえ、先程の告白の意味が分かってきた。『私も』というのは小学生の頃の陽太の告白を受けてのものなのだろう。


 ――だとしたら……。


 陽太の中で葛藤が生まれる。それは簡単に答えてはならないものだ。ちゃんとした答えを出さなければならない。


 ――けれど、今の俺は、雨宮のこと……。


 こんな感情、もう捨てていた。


 陽太にも恋をしていた時期があった。


 だが、それは目の前で朽ち果てた。答えを聞く前に。しかも、第三者の手によって。


 ――あの時、俺が月島を止めていれば……。


 憎悪と軽い殺意が自然と拳を強く握らせていた。あの忌わしい相手の所為でこんな事になっていると考えれば、さらに腹が立つ。


 その時、歪む視界に麗子の顔が映し出された。


 「大丈夫?顔色悪いけど」


 「……悪い、大丈夫」


 そう言って、月島華音の顔を己の頭から葬る。返事の前に全てを聞こうと陽太が話の続きを促せようとした時、麗子の方から話が紡がれた。


 「戸田君が学校をいなくなって、私達が五年生に進級した一週間後、私は交通事故に遭った」


 「え?」


 驚きの連続だった。予想だにしていなかった。これまでそんな話を全く聞いた事が無かったので余計だった。


 「でも、皆そんな話していなかったぞ。誰も、そんな話……」


 「だってこれ、仕組まれているんだもの」


 今度こそ陽太は絶句した。もう言葉すら出ない。


 ――仕組、まれた……?計画的犯行ってことか?


 陽太にはもうわけが分からなかった。話が聞きたくて麗子と二人になったのに、自分の予想範囲を超えた話ばかりが投入され、頭がパンクしそうだった。


 「あの事故についてはまだ話す気はないけど……これが私にとっての始まりね」


 「……」


 この話の核は、すぐそこにある。


 だが、聞いてはならない気がする。それは彼の直感であった。


 これを聞けば、自分はもう、取り返しの付かない立ち位置についてしまう気がした。麗子を含め、二度と日常に帰れない気がした。


 耳を塞ぎたい。アパートに向かってダッシュしたい。


 麗子から、背きたい。


 だが、そんな陽太の想いが届く筈も無く、麗子は淡々と事実を伝える。


 「私は車に撥ねられて大怪我をした。そして、手術の末に肉体を小改造されて、ある任務を言い渡された」




 「私は戸田君という被験者の監視とサポート役。もしもの事があれば、私は貴方という人間を守って死ぬ。それが私の使命」




 「貴方は、自分が思っている以上に『完成品』なのよ」

今日は電撃文庫の某キャラのお誕生日ですね。

おめでとうございます。ハードが無いのでゲームは買えませんが。

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