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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

遊戯

作者: 朱咲カホル

『私はお前だ』

『学んだ……は人から聞いた話、書物で得た知識』

『実践のつらさまでは判らない』


 声が聴こえる。

 頭の奥から響くように身体全体に広がっていく。


『グレーツ!』

『信じていたのに……あんたを信じていたのに……』


 ナゼ?


『何故こんな事をしたぁ!?』


 悲しみに満ちた青年の叫び。心が張り裂けそうになり、痛い。知らずのうちに涙が零れる。


――涙?


 そう、これは涙だ。

 では、私は?

 誰だ? 私はいったい誰なんだ?

 判らない。判らない……。



『俺、グレーツみたいになりたいんだ。きっとなってみせるよ、グレーツのような最強の剣士に』

 夢を熱く語る少年の声。まだ見ぬ英雄に憧れを抱く者。

『うん、頑張ってね。で、私がピンチの時は助けに来てね』

 無邪気な少女の言葉に少年は頷いた。

『あったり前さ。絶対ユーナを救う為に駆けつけてやる』

 頼もしそうに胸を叩く音。

『うん。頑張ってね』

 少女の声がどこまでも響いた。



『――本日より、汝を我が国の剣士として認める。我が国、国の宝である国民を救う為、汝はその剣の力を最大に揮うがよい』

 仰々しい声に頷く少年。

 彼は念願の剣士になれたのだ。憧れのグレーツと同じ剣士に。

 手には先程手渡された剣士の証である『デティーナの剣』が重く圧し掛かっていた。

 冷たい剣の感触。ひんやりとして、初めて手にする剣なのに、どうしてかしっくりと馴染む。

『俺の剣――。俺だけの、俺の為だけに生まれた〈デティーナの剣〉』

 チャキリと剣が鳴る。鞘から刀身を抜く。

 神聖な炎に照らされ、純銀の刀身が紅く染まり、不吉な血を思わせたのだった。



『俺の、剣――』

 頭に響く声は熱のこもったものだった。しかし、自分は彼の声がすぐに絶望に染まるのを知っている。

――知っている?

 そう、知っている。では、私は誰だ?

 判らない。判らない……。



『人は愚かだ。人は滅びる為に生きているにすぎないのだ……』

 静かな、抑揚のない声音が荒ぶる戦場に響いた。

『人は滅びる為に生かされているにすぎないのだ』

『そんな事はない! グレーツ、人は滅びを避ける為に生きてるんだ。その時が美しいと感じる為に生きているんだ!』

 それを否定する、まだ年若い剣士の声。力強く首を振って、最強の剣士と呼ばれる男、グレーツを仰ぎ見る。

『そんな事、ないんだ……』

 項垂れる若い剣士を冷ややかに見下ろし、グレーツは突き放すように鼻で笑ったのだった。



『そんな事はないんだ、グレーツ。そんなに悲観する事はないんだ』

 実践を知らない剣士の声が頭に響く。

 悲しい声音。つらい現実を目の当たりにした少年の苦しみが身体全体に広がっていく。

 少年のつらい心がひしひしと伝わってくる。あのセリフは少年自身が信じたがっているかのようにも聞こえた。

――そんな事はない、か。

 本当にそうなのだろうか。本当にそうなのだろうか……。



『う、うわぁぁぁ――――!!』

 叫び声。

 襲いかかってくる敵国の人間を『デティーナの剣』で薙ぎ払う。ドロっとした赤く、生暖かい血が顔に、身体を包む鎧に降りかかる。

『あ、あああぁぁぁぁぁ――――!!』

 ますます混乱する剣士。無茶苦茶に剣を振り回す。

『落ち着け! 落ち着くんだ! ――っく、駄目だ、グラウスの部隊も全滅した。撤退だ! 全員、一時撤退する!』

 混乱している剣士を宥め、それでも別部隊の全滅を知らされると、生き残った者達に撤退の命令を下す。辛うじて生き残った剣士達は一斉に後退を始める。

『う、あ、あああああぁぁぁぁ…………』

 頭が混乱している経験の浅い剣士を総隊長は片腕で抱え上げ、馬に鞭を打って己も後退する。

 残った剣士は数少ない。二十万の軍隊が一気に五十も満たない数にまで減っていた。完璧な敗北だった。

 国の最強部隊。その称号が今、脆くも崩れ去ったのだった。

『くっ――――』

 総隊長は苦々しく声を洩らした。

 いつの間にか、抱えていた剣士の泣き声が途切れていた。緊張の糸が切れたのだろう、意識を遠くへ飛ばしていた。血で朱に染まった剣士の証である『デティーナの剣』をしっかりと手に握り締めたまま。



 これが戦場。

 血が地を濡らし、赤く染め、屍が足の踏み場もないほど無造作に放り投げられている。

 埋葬される事はなく、家族のもとに帰る事も出来ず、戦場で命を落とした者達は、いつまでも古戦場で冷たい身体を投げ出しているのだった。

 鼻をつく死臭。顔を背けたくなるような惨たらしい光景。目に焼き付き、いつまでも離れない。

 自分は知っている、この悲惨な戦場跡を。この戦いの苦しさ、悔しさ、辛さ、吐き気、ドロドロ感。自分は知っている。

 だが、自分は知らない。自分が誰なのか、自分は知らない。

――私は誰だ?

 呟きは、問いかけは戻ってくる事はない。



『駄目なんだ。俺、もう駄目だ』

 力のない声を励ます声。

『落ち込まないで、自信を無くさないで。あなただけが悪いわけじゃないでしょう? 仕方なかったのよ、あの時は仕方なかったのよ!』

『仕方なかったで済まされない! あいつは、ジョーナとはあの時の前夜にカードゲームをして楽しんでいたんだっ。ザウは生まれたばかりの子供に会いたがっていたんだ! 仕方ないで済まされるわけないだろう!』

 頭を抱え低く唸る、あの惨劇の戦場から帰還した若き剣士の声は弱く、すべての力を否定していた。

 剣士は自分を責めていた。

 自分がもっとしっかりとしていれば、初めて人を殺した感触に我を忘れたりしなければ、そうならなければ彼らは死なずに済んだのかもしれない。

 多くの仲間が死んでいった。その仲間全員が助かったかもしれないのだ。

『仕方なかったで済まされるわけないんだ! 俺は罰せられなければならないんだ……』

『ねぇ、お願いよ。自分をそんなに責めないで。生き残ったのよ、あの戦場から帰ってきたのよ。ねぇ、どうしてそれを喜べないの? どうしてあの時の失態を前向きに考えようとしないの!? 今度は我を忘れない様にすればいいじゃない! 経験でしょ、そういうのって。どうしてそんなふうに考えられないのよ!』

 怒鳴るユーナの声。

 剣士は頭を振る。

『けど、あいつらは帰ってこないんだ……』

 悲しい声は陰陰としていた。

 かける言葉が見つからず、ユーナはただ自信を無くしてしまった剣士を見つめるしかなかった。

 すると、二人だけしかいない小部屋に足音がした。振り返ってみると、背後に最強の剣士であるグレーツがいた。冷ややかな視線で剣士を見ている。

『あ……』

 彼に押し退けられ、ユーナは剣士の横に立つ形になった。

 緊迫した空気が流れる。

『グレーツ……』

 初めに声を出したのは若き剣士だった。

『俺、もう駄目だ。俺、剣士には向いていないんだ。俺、剣士を辞めるよ……』

『!?』

 ユーナが何か言いたそうに手を剣士の肩に触れたが、どう言えばいいのか判らず黙り込んでしまう。

 グレーツは何も言わない。ただ剣士を感情のない目で眺めている。

『その方がいいんだ。俺は剣士にならなかった方がよかったんだ。そうすれば、あいつらも死なずに済んだんだ』

『では、お前が死ねば奴等は生き返るのか?』

 グレーツの抑揚のない言葉に頭を上げる剣士。ユーナはあまりの言葉に顔色を無くしてしまっていた。

『そうなのか? そうならば、今ここで私がお前を斬ろう。それでいいのか?』

 確認するグレーツ。手には彼の『デティーナの剣』がしっかりと握られていた。

 青くなる剣士。ガタガタと拳が震えている。

――死ねば奴等は生き返るのか?

 彼の言葉がぐるぐると頭の中を回る。

『――生き返るわけ、ないじゃないか。だって、あいつらはもう死んでしまったんだ。一度死んでしまった者が生き返るわけないじゃないか。今回の事を前向きに考えても、俺が生き残っていてもあいつらは帰ってこない。けど、俺が死んでもあいつらは帰ってこない。――どうすればいいんだ……。俺はいったいどうすれば……』

 戦場から帰ってから少しの間は、自分が死んでしまっていてもいいと思っていた。だが、実際に「殺してやろう」と言われると、恐怖が身体中を駆け巡った。死ぬのは嫌だと思った。そんな自分が嫌になってくる。

 矛盾する心を抱えて、剣士はもう一度呟き、零れ落ちそうになる涙を堪える。

『どうすればいいんだよ!!』

『では、その分の命を奪えばいい。そうすればたかが二人の友人の命など、どうでもいいようになる』

 剣士が叫び、絶対零度のグレーツの言葉が剣士の苦悩する精神に突き刺さり、彼は激しく頭を振った。

『駄目だ! そんなんじゃ駄目なんだ! 命を奪うんじゃなくて、そんなのじゃなくて――』

『では何だと言うのだ?お前達の言う事はよく判らない。人は滅びる為に生きているのだ。私達が命を奪ってもどうにでもなるものではないだろう』

 本当に判らないというような表情でグレーツが剣士に尋ねた。

 ユーナは最強の剣士と謳われる目の前の人物が、周囲の言うような人物ではないと判り、真っ青になっていた。

 剣士は首を左右に振る。

『違うんだ……違うんだ……違うんだ……』

 ただそれだけを呟いているのみだった。



 剣士の苦悩する声が心を絞めつける。

 ああ、そうだ。あの時の自分は混乱していたのだ、と思い出す。

 この混乱はあの剣士のものと同じ。では、私はあの若き剣士なのだろうか?

 そうなのだろうか。そう、なのだろうか……。



『ハッ!!』

 短い気合いと共に剣を振り下ろす。ズンッと鈍い音が手にまで伝わり、脳をぐらぐらと揺する。

 吐き気がする。ぐるぐる回って、敵も味方もない。心がもやもやしていて気持ち悪い。

 手が痺れる。身体が勝手に動き、手にしている『デティーナの剣』で襲い掛かってくる敵国の兵士を切り倒す。

 もう、顔も髪も鎧も剣も、すべて倒した者の血で塗れていた。ただ反射的に剣士は相手を倒していく。

『――っ』

 時には苦しそうに顔に手をやる。ベットリとついた血を見ては叫び出そうとするが、それを喉元で無理に押し止める。

 あの初めての戦場から五年も経っていた。

 剣士は最強の剣士グレーツと並ぶ凄腕の剣士に成長していた。

 怖かった、どんなに戦場を駆けても、剣を振り続けても、戦で震える心は押さえられなかった。

 怖かった、どんなに戦を重ねても、人の命を『デティーナの剣』で屠っても、その度に心は恐怖し、足が震え、吐き気がし、剣を持つ手は冷え切る。

 怖かった、どんなに月日が過ぎてもそれだけは慣れない。人の命を消してしまう瞬間が――怖かった。

 心が悲鳴をあげる。

 心が叫びをあげる。

 止められない。止める術を知らない。

 心はそのまま。傷ついた心はそのまま。

 いつまでも、いつまでも癒えない。癒えない……。

『戦場は遊戯場に過ぎん。戦は遊戯なのだ。命の奪い合いというゲームなのだ』

 腕を組み、戦いの終わった大地を見下ろしながら、国一の剣士と謳われる男は冷ややかに言い放った。

 時が過ぎてもこの男の発想は変わらなかった。いや、ますます絶望を望むような事を言い出していた。

 男と共に戦場だった大地を見ながら、若き剣士は首を振った。

『戦はいい。人が死ぬ。だからいい。戦という遊戯で人が死に、人は滅びる為に生きているのだと判らせてくれる。そうは思わないか?』

 更に続けるグレーツに剣士は声をあげた。

『違う!戦は終わらせなくてはいけないんだ!いいわけがないだろうっ、人が死んで、悲しみが生まれて、また戦が繰り返される。こんな悪循環がいいわけないだろう!』

 吐き捨てる。

『グレーツ、どうしてそれが判らないんだ!』



 本当だ。どうして判らないのだろうか。どうして判ろうとしないのだろうか。

 剣士の言葉に頷く。

――人は滅びる為に生きているのではない。

 そう、そうだ。人は生きる為に生き、その時が美しいと感じる為に生きているのだ。

 頷く。

 そうだ。私は判る。彼の考えが。

 そうだ。判るはずだ。何故なら、私があの剣士なのだから。――あの剣士なのだから。



『グレーツ!!』

 剣士の叫び声。

『何故、何故ユーナを斬ったあ!?』

 腕にはピクリとも動かない恋人の身体。

 涙を流しながら、剣士は乱心した最強の男を睨みつけた。

『何故こんな事をしたあ!?』

 彼らの周りには無数の死体。魂の抜けた、ただの肉の塊。

 対峙する二人。その手にはそれぞれの『デティーナの剣』が握られている。

 今の二人の実力はほぼ互角。いや、理性を失った分、グレーツの方が有利かもしれない。

 大切にユーナの身体を横たえさせ、剣士は幼い頃から憧れていた最強の剣士に剣先を向け、二人は同時に倒すべき相手に切りかかった。

 金属がぶつかり合う音が二度。火花が散り、剣士は『デティーナの剣』をグレーツの胸に向かって突き出す。グレーツも同じように剣を繰り出した。

 ズンッ――!!

 振動が手に伝わった。

 身体から力が抜け、血に濡れた大理石に倒れる。

 以下は空白。空白だ――。空白しかなかった。



 気がつけば、『彼』は闇の中にいた。漠然と、自分は死んだのだと思った。

 ここは何もない。何もない空間。『彼』はただ一人、この何もない空間を漂っていた。

 人はいったい死ぬと何処へ逝くのだろう。

 肉体を捨て、魂となった人は何処へ逝くのだろう。何処へ逝くのだろう……?

 私は、いつもそれを考えていた……。

 人は何処より生まれ、何処へ逝くのだろう。そして、そこで何を見つけるのだろう。何もないのだろうか?

――そう、まるでこの空間のような所なのだろうか。

 いったい、人は死ぬと何処へ逝くのだろう。

 それを見つける事が出来るのか。

 それを見つけたいから私は剣を振り続け、他人の命を消し続け、そして今、ここにいる。何もないこの空間に。

 ここは何処なのだろう。

 判らない。――ここに来てからは判らない事ばかりだ。

 だが、一つ、思い出した事がある。

――私は……剣士だった。剣士に憧れ、強さに憧れて剣士になり、実践のつらさ、苦しみ、悲しみ、痛みを知り、自分の無力さに絶望し、ただ無我夢中で剣を振り続けた。……そう、私は(俺は)剣士だったのだ(剣士なんだ)。強く(脆く)、価値のある(価値のない)、剣士(殺戮者)。

 何を……?

 違う、私は剣士なのだ。最強の剣士なのだ。

(違う。俺は殺戮者だ。最低の殺戮者だ)

 ちがうっ、ちがうちがうちがうちがう、違う!

 私は(俺は)、剣士なのだ(殺戮者だ)。

 違う!!



 はっとして彼は呆然と目の前に広がっている光景を見ていた。

「あ……」

 掠れた声が意識をはっきりとさせた。

 足下には赤い血溜り。足を移動させると小さな波紋が広がる。

 ピチッと水滴の音。

 見下ろすと、腕の線を伝って血が流れ落ちていた。

「あ……」

 もう一度、口を出た声も掠れていた。

『デティーナの剣』は血で染まり、斬り倒してきた人の脂で刃こぼれもひどかった。

 これで……これで仲間を殺した。敵も味方もすべて斬り殺してきた。

 カシャン――――

 手が震えだし、剣を取り落とす。

「あ……」

 両手で顔を覆い、血が占める割合が更に広がる。

 あああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ――――!!

 悲鳴が無人と化した城にどこまでも響き渡った。




 私は     剣士

   (俺は)―― (殺戮者)……


 私は(俺は)

       ……私は誰だ?

              (俺はグレーツ)

 ……私の名はいったい何なのだ?

    (俺の名はグレーツ。国一の剣士と言われた剣士グレーツ……)




 目の前に自分に憧れて剣士となった青年の身体が転がっている。

 そう、自分が殺したのだ。己がこの手でこの剣士を殺めたのだ。

 がくりと膝をつく。

 すべてが壊れた。あらゆるものが崩れた。

「何故……何故このような事に……」

 呆然として呟く。

 私は確かに人は滅びる為に生きているのだと考えていた。滅びる為だけに生かされているのだと。

 だが、自分はこんな終わりを見たかったのではない。こんな終わりを見たかったのではない。

 人が滅びに打ち勝つ時を見たかったのだ。

 何故、こんな事になった。何故、私はこの者達を斬り殺したのだ……。判らない、判らない――。

 判るのは、もう時は戻せないという事だけだった。

――時は戻らない……戻らない――。



 無人と化した城の中で、かつて最強の男として国民に、剣士に慕われ、国王に頼られていた男は、今はただの殺戮者と身を貶めた。

 その後、男は国民の手により捕らえられ、国王ならびに城中の人間を惨殺した極悪人として処刑された。

 それまでの彼はたいした抵抗も見せず、されるがまま処刑台に立った。

 彼の首が切り落とされる瞬間、国民の全員が見た。表情を失った彼の両の目に一筋の涙が流れ落ちるのを。

 そうして、国一の剣士にして、過去最大の殺戮者だった剣士グレーツは、己が守り続けてきた国民の手により命を絶たれたのであった。

 王を失い、守護団を失って、自衛力が落ちたその国は、簡単に敵国に攻め入られ、あっという間に植民地とされた。国民は厳しい労働を虐げられ、豊かだった大地は何故か荒れ果ててしまった。

 時は過ぎ、悪天候が幾つも重なり、川は増水し、畑も何もかもを飲み込んだ。そうして国は――あの大帝国と呼ばれた国家は今や見る影もなく、ただ醜い姿を晒しているだけだった。

 国は滅びた。

 たった一人の剣士の迷いが一つの国を滅ぼした。

 たった一人の力で巨大な国が滅びてしまったのだ。

 彼は最後まで悩んでいた。

――何故人は生まれ、最後には消えてしまうのだろう……と。




 人はいったい何処へ逝くのだろう。何処へ逝くのだろう……。



 判らない……


       ……判らない。




【完】

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