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世界から災いを消し去った俺は、早くもやる事がなくなってしまった。
「どうせまたすぐ、新しい災厄が起こるでしょう」
アデーレはそう言ったが、それまでは暇である。
仕方がないので神官見習いの女の子達と遊ぶ事にした。
彼女達は世界各地から集められた、選りすぐりの美少女である。
神である俺と触れ合うのも、立派な修行という事なので誰も嫌がったりはしなかった。
それどころか、アデーレなどは「仕事さえなければ」と恨めしそうな顔をしていたほどである。
彼女らが慕っているのは「神」であって、俺ではない気がするのだが、気にしたら負けだ。
「神様、どうぞ」
見習いの少女達は順番に膝枕をしてくれるし、水を口移しで飲ませてくれるし、今みたいに食べ物を「あーん」で食べさせてくれる。
「次は私ね」
「その次は私よ」
少女達は競い合うように俺に尽くそうとしていて、時には喧嘩になりそうなくらいだ。
「時間の流れを調整するから、喧嘩は禁止な」
俺がそういうと仲良く「はーい」と返事をする。
神の力って本当に便利だと思う。
どうして俺が神の力なんか持てたんだろうか。
気にしたら負けとは思っているけど、気にならないはずがない。
早い話、この力を失うのが怖いのだ。
底辺のゴミクズだったあの頃に戻りたくないのである。
だから皆の期待に応えようと頑張ろうと思う。
皆に愛される神でいれば、きっと大丈夫。
そう信じるしかないのだ。
「よし、水浴びをしよう」
俺が提案すると、少女達はお互いの顔を見合わせて、それから恥ずかしそうに頷いた。
俺達は川へ移動する。
周囲に人がいない事は神の力で確認済みだ。
美少女達の裸体を堪能するなど、俺だけでいい。
俺以外の男が目の保養をするのは許さん。
俺はこの周辺に誰も近づけなくする結界をこっそりと展開する。
少女達はその間、神官服を脱ぎ捨てて肌をあらわにした。
「は、恥ずかしいです神様」
「あまりじろじろとご覧になるのは……」
顔を真っ赤にして胸を両手で隠す少女達に俺は言う。
「ご馳走様」
おっと、鼻血が出そうになったので気合で止めねば。
少女達は世界中から集まっただけに、髪、目、肌の色はばらばらだし、言語もそうだ。
言語に関しては共通語があるので、意思疎通はそれほど大変ではないようではあるが。
ついでに言うとおっぱいの大きさもばらばらである。
そして体のラインや尻の大きさも。
最初は恥ずかしがっていた少女達も少しずつ慣れてきたのか、次第に体を隠さなくなってきた。
互いに水を掛け合ったりして遊び始める。
うら若き少女達が、川で戯れる様はとても絵になると思う。
些細な事でゆっさゆっさ揺れる子もいれば、激しい動きをしても何ともない寂しい子もいる。
俺は神なので平等に愛そう。
少女達を一人一人背後から抱きしめる。
「きゃっ」
少女は悲鳴と言うには嬉しそうな声を出す。
一通り楽しんだ後、羨ましそうな顔をしていた別の少女をハグする。
「あん」
やはり嬉しそうな声だ。
少女達は肌さわりさえも、一人一人違う。
女体って不思議だな。
生命の神秘ってやつだろうか。
俺は神になったものの、そのあたりの知識はない。
神として見習いだからだろうか。
それとも力と知識は別物なのだろうか。
「やん」
女の子達の柔らかな体が、俺の煩悩を刺激する。
考え事どころではなくしてしまう。
そして甘い声が心を蕩かせる。
俺をケダモノに変えようと誘ってくる。
女は魔物と言われるのも無理ないと思った。
……別に自己正当化しているわけではない。
そもそも合意の上だし。
「あぁん」
順番に触れ合っていく。
神たる者、特別扱いをしてはいけないのである。
まして仲間外れなど論外だ。
役得ではあるけども。
「神様、優しい」
などと言って喜んでもらえるのだけども。
それでも人数が多いから大変だ。
まだ触れ合っていない子がいないか、マメに確認しないと。
神の力を使えばいちころだけどね。
無駄使いとか言ってはいけない。
美少女信者を満足させるのは、神にとって大切な仕事だから。
決して俺の欲望を満足させているわけではない。
決して俺の欲望を満足させているわけではない。
大事な事だから二回言わせてもらおう。
信者と戯れているだけでいいのかって思うのは、実は俺も同じだ。
だが、肌と肌、心と心を通わせれば、信者の信仰力は上がるし、俺の力も増大するらしい。
アデーレが言うんだからそうだろう。
神の力の判定によると嘘はついていなかったし。
ただ、そんなに簡単に向上するなら、誰も苦労しないよねって話でもある。
神がそんなホイホイ強くなっていいのかって思うしな。
だからきっとこれでいいのだ。
たぶんこれでいいのだ。
自分に言い聞かせたわけではないよ。
大事な事だから、というやつです。
何度も言うとくどいだけだから、二回目は省略で。
「神様、そろそろお戻りになられないと」
信者の一人がそう言う。
正確に言うと俺は戻らなくても平気だが、他の女の子達が怒られる。
俺が庇えばその場をしのげても、立場が悪くなるのは避けられないだろう。
俺のせいで女の子達が可哀相な目に遭うのは本意ではない。
「じゃあ帰ろうか」
神の力で自分の部屋へ転移した。
するとすぐさまアイリが出迎えてくれた。
「お帰りなさいませ」
彼女が挨拶したのは俺だけであり、見習いの子達は俺の付属品扱いである。
アイリは俺の世話を任せられるだけあり、なかなか地位は高いようだ。
見習い達は俺とアイリに一礼して出て行く。
「いかがでございましたか? あの者達は神様に粗相をしませんでしたか?」
「ああ。楽しく遊んでいたよ」
俺が答えるとアイリは、ほっとしたような寂しがっているような複雑な表情をする。
「それは何よりでございました」
見習い達がちゃんとしていて事と、俺が見習い達と遊んでいた事への感情が入り混じっているのだろうか。
一生お仕えするとか言われたもんなぁ。
俺だってアイリみたいな美少女になら、一生仕えてもらいたいよ。
あ、一生美少女っていうのはさすがに無理かな?
でも、神の力を使えば意外といけたりしてな……。
神が摂理に反するなって怒られたりしないだろうか。
今度アデーレにでも聞いてみるかな。
もし問題ないなら、俺に仕えてくれる女の子達は皆、不老不死にしてしまえばいいんじゃないだろうか。
ビバ、神様みたいな。
「今夜は全員でおいで」
俺はそう言う。
美少女達を公平に愛さねばならない。
それが神の義務である。
アイリは目を丸くしていたけど、頬を染めて頷いてくれた。
夕食が終わると本当に全員が来てくれた。
アデーレもいるし、アイリもサラもいる。
「本当によろしいのですか?」
恐る恐る尋ねてくるアデーレに大きく頷いて見せた。
俺は神の義務を果たしているだけだしな。
神って大変だけど、やりがいのある仕事だと思う。
俺の神様ライフはこれからさ。