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 俺は神である。

 名前はもうない。

 日本に生まれ育ったただの高校生だったはずだが、ある日異世界に召喚されてしまった。

 今日は俺が召喚された日の事を書こうと思う。







「あなた様はこの世界の救い神です」


 突然知らない場所に飛ばされて驚く俺にこう言ってはいつくばったのは、生まれてこのかた見た事もない美少女だった。

 普通なら泣き喚くところうだろうが、生憎俺は普通ではなかった。

 両親を亡くし、意地の悪い親戚の家で冷たい目を浴び、腫れ物扱いされながら友達のいない学校へ通っていた。

 丸一日一言も言葉を発しない、というのも珍しくはなかった。

 だから拉致まがいの事をされて驚いても、元の世界に返せとは思わなかった。

 きっと三日もすれば皆俺の事を忘れるだろうし、親戚だってせいせいしたとしか思わないだろう。

 ただ、この世界で何をさせられるか不安だったので目の前の美少女に聞いてみたら


「滅亡寸前のこの世界を救ってほしい」


 と言われた。

 バイト代をやりくりして買っていた小説によくある、異世界に召喚されて勇者となる、というパターンかと思ったら違っていた。

 俺は神で世界の破滅を救い、繁栄をもたらす力があるというのだ。

 「もしかして神なら戦わなくてもいいのか?」というのが正直な気持ちだった。

 運動神経が人並み以下で痛いのが苦手な俺としてはその方がありがたい。

 召喚された場には他にも何人もの美少女がいて、全員俺に期待をたっぷりこめた目で見ていたのだ。

 誰かに期待されるなんて、一体いつ以来だろうか。

 少なくとも両親が亡くなってからはない。

 アデーレと名乗った美少女に色々と質問し、答えてもらった。

 俺は数千年に一度、現れる救い神である。

 アデーレを初め、全ての美少女達はそれに仕え奉仕する巫女だと。

 救世教、という宗教を信仰していて、アデーレはその教皇でもあるらしい。

 巫女は神道で、教皇は外国の宗教のトップだった気がするんだけど、異世界だからそのへんはごっちゃでもおかしくないのかな。

 とりあえず俺は美少女にちやほやされたくて、力を使ってみる事にした。

 アデーレに言われるまま、外に出て空を見上げるとバカでかい黒い星が浮かんでいた。

 凶星と呼ばれているもので、あれが地面に激突したら少なくともこの大陸は終わるという。

 救世神ならば一撃で消せると言われたので、右手をかざして消えろと念じた。

 すると、掌からぶっとい光線が出で目がくらんだ。

 視力が回復すると、空に浮かんでいた黒い星は綺麗さっぱり消えていた。


「さすがです神様」


「素敵です神様」


 美少女達が黄色い歓声をあげ、ちやほやしてくれる。

 とてもいい気分である。

 いいように利用されているだけだと思わなくはないけど、世界を救う力がある存在をないがしろにするだろうか。

 考えてもドツボにはまりそうだったので、俺は考えるのを止めて黙って美少女達にちやほやされる事にした。

 救い神と言っても、危機が迫ったら解決すればよく、普段はのんびりゴロゴロしていてもいいらしい。

 それ何て天国、と思っても責められる筋合いはないと思う。


「神様、ささやかでございますが、お食事を」


 アデーレに言われたので食事を摂る事にした。

 ところで俺の名前は呼ばれないのだろうか。

 訊いてみると「神様の尊名をうかがう事など恐れ多くてできません」と返ってきた。

 そんなものなのだろうかと俺は疑問を持つのを止めた。

 さりげなく過去を抹殺された気がしなくもないけど、両親を除けば別に惜しくない過去だしな。

 用意された食事はとても豪勢だった。

 一日三食便所でかじってたおにぎりとは比べ物にならない。

 まともな物と比べられなくて申し訳ないくらい豪勢だ。

 表現力が貧弱で申し訳ないが、フルコース料理みたいな見た目と味で、量は数人前あった。

 明らかに多すぎで、アデーレに訊いてみたら「神様への捧げ物ですから」と言われた。

 大量の料理を作って並べる事こそ勢威の表れであり、救い神である俺の食事はこの世の誰よりも豪勢でなければならないとの事だった。


「無駄だから止めろよ、そんなもん」


 俺は美少女にちやほやされればそれでよかった。

 俺がムスっとして言うと、アデーレが慌てて部屋の外に飛び出して行って、

しばらくして帰ってきて神託として廃止を布告したと告げた。

 俺は自分の発言が全て神託扱いになる事を悟った。

 理不尽な気がするけど、もう既に理不尽三昧だよな。

 とりあえず美少女にちやほやされて癒されよう。

 一人の美少女に食べさせてもらうと、他の美少女も真似する。

 たちまち誰が俺に食べさせるかという競争が起こった。

 あくまでも俺の力のおかげなんだろうけど、美少女達が俺をめぐって争うというのは見ていて気持ちいいな。

 ところでアデーレが参戦しているのは何故だろうか。


「教皇の仕事は?」


 俺が訊くと「神様にお仕えする以上の仕事はございません」と言われた。

 それを耳にした何人かが泣き出しそうな顔をしたから、「たまっている仕事を片付けて来い」と命令した。

 アデーレはしょんぼりとして仕事に戻った。

 あんな美少女が俺の命令に従順なんて凄く気持ちがいいな。

 生きててよかった、と少し思った。

 食事が終わると俺は寝室へと案内された。

 軽く十六畳はありそうな広い部屋でベッドも四、五人くらい同時に寝れそうな大きさだった。


「お疲れでございましょう。湯浴みの後、おくつろぎ下さいませ」


 そう言って頭を下げたのはアイリ。

 桃色の髪と水色の瞳が印象的な美少女である。

 何かにつけて美少女美少女と言っているが、俺の表現力ではこれが限界だ。

 俺だって日本人の端くれだから風呂は嫌いじゃない。

 親戚の家ではもったいないという理由で冷めた風呂に入ってたし、二、三分であがってた。

 でもここで俺は神なのだから、温かい湯に使ってもいいだろうし、五分くらいは入っていても構わないだろう。

 風呂はプールのような広さだった。

 昔、両親に連れて行ってもらったホテルの風呂より更に広い気がする。

 かけ湯をすませ、体を洗おうとするとガラス戸が開いてアイリともう一人の美少女が入ってきた。


「神様、お体を洗わせていただく名誉を我らに賜りたく存じます」


 アイリ達はそう言って深々と頭を下げる。

 そう言えば身分の高い人は、風呂も一人で入ったりしなかったという話を小説で見た事があったな、と薄い布で身を覆っただけの美少女達の肢体を眺めながら思った。

 アイリはスレンダーだけど、もう一人はなかなか豊かな膨らみを持っていて、走るとゆさゆさと揺れそうだ。

 ゆさゆさ美少女は正義だと思ったので許可する。

 健康な若い男が煩悩に負けるのは自然な事だ、と言い訳してみる。

 二人は慣れた手つきで俺の背中や太ももを洗ってくれた。


「慣れてるけど、初めてじゃないのか?」


 俺が話しかけるとアイリじゃない青髪の子がビクッと震えながらも答えてくれた。


「は、はい。普段は教皇猊下の担当をしております」


 俺が現れたので俺が最優先となったらしい。

 普段、教皇はそんな事やらせてるのか。

 いや、アデーレも美少女だから別にアリか。


「アデーレに洗ってもらうってできるのか?」


 ふと思いついた事を口にしてみた。

 教皇なんて高い地位にある美少女に奉仕してもらえるなんて、男ならやってみたい事ではあった。


「神様がお望みならば、当然できます」


 アイリが淡々と答えた。

 絶対権力者、万歳な設定だと思った。

 力を失ったり、災厄がなくなったりしたら用済みで捨てられたり殺されたりしても変じゃない、そう思えるくらい素晴らしい。

 ……そうならないように注意したいな、どうすればいいのか分からんけど。

 神様な俺がそう願ってる限り、そんな事は起こらない、なんてご都合主義だったら嬉しい。


「じゃ、明日あたり頼めるか」


「はい」


 アイリは頷いたがもう一人は何故かビクッとなった。

 何度も深呼吸した後、恐る恐るといった感じで俺に話しかけてくる。


「あ、あの……私、ダメでしょうか? 除名ですか?」


 突然話が飛んで意味不明だったが、アイリによると俺は気に入らない巫女を外していいらしい。

 そして俺に嫌われた巫女は除名される。

 これは巫女として最悪の不名誉だという。

 俺にそんな気は全くなかったのでフォローする事にした。


「いや、単にアデーレにもやらせたかっただけだ。ローテーション制でいこうと思う」


 自分好みの美少女達を誰も手放さなくていいのなら、独り占めするのが男だと思う。

 青髪のゆさゆさちゃんは是非手元に置いておきたい。


「ローテーション……? 恐れながら神の玉言、巫女にすぎぬ矮小な我らには解する事ができませぬ。僭越ですが、矮小で無知な我らにご高配を賜れれば幸いでございます」


 アイリのややこしい言い回しを意訳すると、分かる言葉で頼む、という事だろう。

 今まで努力しなくても言葉が通じていたから、油断してたなぁ。


「皆で交代で、という事だよ。皆が俺に仕える存在なら、全員にやってもらいたい」


 どちらかと言うと欲張りな発言だと思うけど、アイリ達は何故だか感極まった、といった顔を向けてきた。


「至らねば消えるだけの我ら如きに、これほどのお情けを賜るとは……」


 何やら壮絶な誤解があったようだ。

 どうやら神は気に入らない巫女のクビを片っ端から飛ばしても問題ないらしい。

 まあ救い神だし、それを信仰し仕えてる連中相手だもんな。

 でも自分好みの美少女を捨てるなんて勿体ない。


「死ぬまでずっとお仕えします」


 そう言ってくれたのはありがたいけど、俺の神としての寿命ってどれくらいなんだろう。

 まさか一日とか言わないよね。

 風呂から上がってベッドに入ったら、アイリともう一人、サラも入ってきた。


「添い寝させていただきます」


 白くて薄い衣一枚だけの美少女二人に言われて俺は断れなかった。

 鼻の下が伸びていたとしても、それは俺が男だからだ。

 女の子達の体は柔らかく、いい匂いがした。 

 物心がついてから女の子と手を握った覚えさえない俺に、こんな状況は拷問だった。

 心臓が飛び跳ねているのが分かったし、体も熱くなって寝付くのに凄く苦労した。

 寝る前に一つ、ゆさゆさじゃなくてもプニプニだって正義だと思った。


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